─誰もがみんな─
世界には、様々な生き物が居る。
当たり前のように息を吸って、吐く。
仕事をしたり、学校へ行ったり、
逆に何もしなかったり。
でも、それだけで生きていられる。
幸せでいられる。
誰もがみんな、“当たり前”を信じて、今日を生きる。
だがそれが、僕には辛かった。
勿論、息を吸って吐くことなら、最初からできていた。
しかし、大人になるに連れ周りの“当たり前”が分からなくなった。
そんな僕は、「邪魔」「消えて」「うざい」と言われていった。
なんで、そんなことを言うんだ。僕は悪くないだろう。
世界が悪いんだろう。世界が可笑しいんだろう。
“勝手に”当たり前を作って、“勝手に”それを押し付けて、
“勝手に”それが出来ないと見捨てて、“勝手に”罵倒の言葉を浴びせる。
そんな世界、可笑しいだろう?苦しいだろう?
生きたくないと、思っても仕方ないだろう?
本当、生きていたくない。
それが叶わないのなら、息をしているだけで、褒めておくれ。
生きてるだけで、うんと沢山、褒めてくれ。
─1000年先も─
綺麗な夕日を見た。
それは鮮やかなオレンジで、
吐息が出る程キラキラと輝いていた。
この世界には、僕のまだ見ぬ景色が広がっている。
全部を見たいなんて願望は言わない。
ただ、その沢山の美しい景色が100年、
否1000年先も続いて行くことを願う。
誰かがそれを見て泣いて、
誰かがそれを見て喜んで、
誰かがそれを見て笑って。
そんな小さなことで、誰かが幸せになれるのなら。
僕はそれ以外、何も望まないよ。
─優しさ─
「僕にはその優しさが辛いんだよ!!」
お前が珍しく大声をあげた。
今までそんなことなかったのにという驚きと、言われた悲しみが襲ってきた。
きっかけは多分俺とお前の違いだろう。
いつもいじめのようなことをされていたお前と、いつも笑う俺。
お前へのいじめを俺は止めていた。お前を助けるために。
でも意味がなかった。あまりのショックに、思ったことが声に出てしまった。
「…ふざけんなよ。今まで助けてやったのは誰だよ!」
「君が勝手にしたんだろう?!そのせいで、僕は…!!」
そう言ってお前は、俺のせいでいじめがひどくなったと話した。
「なんでお前みたいな陰キャが、陽キャの君と絡んでるんだって」
お前は泣きながら、痛くて辛くて苦しかったと話した。
「…俺の優しさ、無駄だったんだな。ごめんな。」
君はそう言って、去っていった。
「…ごめん、ごめんよぉ。」
俺のエゴなのに。君に見下されてるように感じて。
もういっそのこと楽になろうって、関係を終わらせて。
君の優しさに縋ってたのは、僕なのに。
「どうしたら、良かったの…?」
君の去った教室には、僕の声だけが木霊した。
─こんな夢を見た─
最近、友達が変な夢を見るようになったらしい。
内容は女の子が電柱から覗いて、ずっと見てくるらしい。
その女の子は、昔近所に住んでいた年下の子で、
よく遊んでいて妹のような存在だったと友達は話す。
どうやら火事で亡くなってしまったらしい。
もうかれこれ1ヶ月近く続いているのだ、と友達は言った。
そんなある日、いつもと違う夢を見たらしい。
いつもは電柱から覗いている女の子が目の前に来て、
何故か持っていた包丁で刺されてしまったらしい。
そして自分の目の前であることを言った。
何を言ったのか気になったが、忘れてしまったらしい。
数日後、夢を話した友達に殺されかけた。
凶器は夢でみた女の子の持っていた包丁とそっくりで。
近くに通り掛かった人に通報され、友達は捕まった。
夢の中で女の子がした行動全てが、捕まった友達の動きにそっくりだった。
夢の中で女の子が言った言葉の後に、僕は刺された。
「おにーさんね、おともだちにころされるよ。こんなふうにね。」
警察に捕まって、パトカーに乗るとき、友達は言った。
『夢の女が居なければ、お前を殺せたのにな。』
─海の底─
部屋の掃除をしていた時、ふと目についた。
中学校の頃の卒業アルバム。
今は大学生だから、結構昔の物だった。
中学校の思い出といったら、彼氏ができたことかな。
平凡な学生だったのに、行動力は人一倍あって。
入学してずっと好きだった人に告白した。
相手は一つ上の先輩で、校舎で迷った時に助けてもらって惚れたんだっけ。
先輩は少し悩んだ後、優しい笑顔で「いいよ」って答えてくれて。
それからデートとかも行ったけど、ある日パタリと音信不通になった。
やっと登校してきた時には一年近く経っていて。
なんでって問い詰めても何も言わないし。本当にショックだった。
でも急に「会いたい」って言ってきて。
不思議に思いながらも会ったその時、
貴方が打ち明けてくれた。重度の鬱病になってたって。
友達に裏切られて、誰も信用できなくて、誰にも相談できなくて。
まるで海の底にただ一人、沈んでるみたいだったのだと。
心を落ち着かせるのに、一年も掛かったのだと。
でもそれを乗り越えて、今は私の隣で笑ってくれている。
その笑顔を見るだけで、私は幸せだ。
辛い過去を思い出す暇も無いくらい、笑わせてあげたい。
私はそう、心に誓った。