人さがし

Open App
1/18/2024, 10:30:29 PM

─閉ざされた日記─

月が綺麗な夜だった。

貴方は言ったの、私が一番聞きたくない言葉を。

「ごめん、別れよう」って。

理由も言わずに、私の「待って!」の声も聞かずに。

あの夜は、ずっと泣いてたわ。

理由が分からないことが、どれだけ怖いか。

私が悪かったのか、最初から貴方のおもちゃだったのか。

だって私たち、同棲もして、恋人らしいことは大体したじゃない。

それだけ別れを否定したくて、理由をずっと考えてたの。

でもね、数日後にきた貴方の妹さんの連絡で、また泣いたわ。


貴方、癌だったなんて、一言も言わなかったじゃない。

貴方は私を傷つけないために別れたんだろうけど、それが一番辛かった。

貴方の葬式も行ったわ。貴方、とても幸せそうだった。

家に帰ってね、貴方がずっと見せてくれなかった日記を読んだの。

ずっと閉ざされた日記だったけどね、貴方が見せない理由が分かったわ。

だって、いつも好きって言ってくれないくせに、日記には書いてあるのだもの。

「大好き」って。「愛してる」ってさ。

本当、貴方って人は、ずるいわね。

1/15/2024, 10:26:19 PM

─この世界は─

神様は、この世界に居るのだろうか。

もし居るとしたら、とても酷い性格をしてる。

みんなを不平等に生かしているのだから。

生きたくない人を、無理に生かして。

健康でいたい人を、病にして。

笑っていたい人を、酷い方法で笑顔を奪って。

助けて欲しい時程、神様は無視する。

そんな神様、居なくていい。

僕から生きる意味を奪った神様なんて、いらないよ。

1/14/2024, 10:13:42 PM

─どうして─

朝起きて、リビングへ向かった。

タイミングが悪かったのかな。

否、でもいつか面と向かって言われてたんだろう。

リビングからは父と母の声。

喧嘩をしているようで、その内容は私。

喧嘩はよくあることだった。

私のせいで起きる喧嘩も、よくあった。

またか、と思って終わるのを待つ。

でも一向に終わる気配がない。

勇気を振り絞って、ドアノブに手を掛けたその時。

「どうしてあいつを産んだんだ!」

父の怒鳴り声。それに続いて、

「私だって産みたくて産んだんじゃないわよ!」と母の声。

まるで鈍器で頭を殴られたようだった。

その後の会話は上手く理解出来ず、私の頬には涙が伝っていた。

「…嗚呼、そっか。私って要らなかったんだ。」

私の嘆きは、両親の怒鳴り声に搔き消されて、

そこにはただ一人、何も出来ずに立っている私しか居なかった。

1/13/2024, 10:10:42 PM

─夢を見てたい─

…嗚呼、もう朝か。

ただ着替えて、朝ご飯を食べて、

電車に揺られ、デスクに向かい、

終電に乗って、鞄から鍵を取り、

玄関を開いて、風呂で体を洗い、

夜飯を食べず、ただ眠りに着く。

繰り返すだけの日々。失うことだけの日々。

何も変わらない日々。自分を見失った日々。

娯楽のない時間を、

普通になってしまった行動で潰す。

自分の首を締める行動。

分かっても、やめられなくなった。

だから変わらないと、

変えられないんだと分かっている。

僕にはすぐに忘れてしまう夢しか救いがない。

もう、ずっと夢を見てたいなぁ。

幸せだけじゃなくても。不幸でもいいから。

だから、もう朝を迎えさせないで。

僕から、自由を奪わないで。

1/10/2024, 10:26:00 PM

─20歳─

ねぇ、君は今も見てるかい?

僕ももう20歳になったよ。

成人式では小学校とか中学校の皆と会ってさ、

あの頃の思い出とか、今何してるのかとか、

他愛の無い話して盛り上がったんだ。

皆も君に会いたがってたよ。

君は今何してんだろうなってさ。

本当に、優しい人に恵まれてたね。


…嗚呼、君も生きてたら、

僕と同じで20歳だったのにね。

確か、小説家になりたいって言ってたっけ?

あの頃は自分の未来が見えないって悩んでたよね。

僕はさ、君が書いた小説、読みたかったな。

君は想像力豊かで、楽しそうで。

なのに、なんであんな事故が起きるんだろうね。

本当に、神様って不平等だな。君じゃなくて、僕だったら。

夢も中身も何もない、僕だったらよかったのにね。

もしそうなったら、君は悲しんでくれたのかな。

Next