私の人生の分岐点となった君は
忘れられない大切な人だった。
離れた今となっては、永遠に私の心で生き続ける。
君が最後についた嘘は私を守るための裏切りだった。
白地にイチゴ柄の包装で包まれたいちごミルクの飴。
小さい頃はあの飴が大好きだった。
いちごが好きなのは今も変わらないけど、
最近はあまり飴を食べない。
先日、職場の事務員さんが「お疲れ様」と言って
あの大好きだったいちごミルクの飴をくれた。
嬉しい以上に幼い頃の思い出がよみがえって
一人懐かしく思った。
あの頃、親しかった友達に会いたくなった。
だけど、今の連絡先が分からないことに
また心がキュッと締め付けられた
大きな成功を収めたあの実業家にも
恋というもう一つの物語では大きな失敗を
したこともあるだろう
きっとそれがまた別の誰かの心を動かして
きっとそれがまた別の事業の幹として生きる
押入れの中に隠れて夜が明けるのを待っていた。
時間帯の夜ではなく
地獄という夜が明けるのを待っていた。
誰かが「もういいよ」と言ってくれるのを
暗がりの中でずっと待つしかなかった。
押入れの外では父親が兄に暴力を振っている。
「助けたい」
そう思っても動けなかった。
怖くて、悲しくて、怯える毎日。
ある日。それは起きた。
父親が突然苦しそうな声を出してもがき
僕のいる押入れの扉にもたれながら
ドスンと大きな音を立てて倒れた。
兄は倒れた父親を引きずって押入れの扉を開けた。
「もういいよ」
その時の兄の顔はあの頃の兄ではなかった。
もう、無数のあざと血が流れていた。
僕は幼な心に分かった。
兄は父親を刺したのだ。
父親の胸にナイフが刺さっていた。
兄は言った。
「ごめんな、アキラ。
これからは二人で新しい暗がりの中で
生きていかなきゃいけないんだ。
大丈夫。兄ちゃんがいるから。兄ちゃんが守るから」
新しい暗がりの中は
少しだけお日様の光を差し込んでいるように思えた。
彼女が淹れる紅茶の香りが好きだった
ラズベリーのような甘酸っぱい香り。
「それを柔軟剤にできたら」
そうすれば彼女とともに生きていける気がするから。
チェーン店のドラッグストアでは見つけられなかった
けど、異国の地の郊外の雑貨屋で見つかった。
「フランボワーズの声色」
花言葉の通り、『優しい』彼女の声が聞こえてきた。
「これからずっと思い出を大切にするよ」
心からそう願った。