【最悪】


　死神は言う。
「大丈夫、ちょっと怪我するだけです。
　まあ……最悪、死にますけど」
　屋上から見た夜景は、満天の星空が大地に落ちたように見えた。一つ一つの窓が、一つ一つの灯りで煌めく。
　自分は、その一つになれないのだと悟った。死神の持つ大鎌の刃が、白く煌めいた。

【誰にも言えない秘密】


月夜の晩
青いガラス瓶に詰め
大いなる秘密を海に放った

波に揺られ
波に洗われ

秘密が秘密で無くなるまで
海を漂う

【狭い部屋】


一人で満杯になるほどの
狭い部屋の中で
キミは十月十日過ごした

そこを出る時から
キミの物語が始まる

【失恋】


失った事すら分からないように
あなたは鮮やかに消えた
恋なんてするもんじゃない

【正直】


君のその正直さは
美徳であり、厄介だ