こっちは出社しないと出来ない仕事で忙しいっていうのに、仕事は出来ないくせに資料のてにをはだけには厳しいバカ上司が声をかけてくる。
「山田くーん、忙しいところ悪いんだけど頼んでた資料どうなってる?」
「あれは納期が先ですよね、納期までに出します」
「そうなんだけど、早めにチェックしたいんだよね」
ウルセーバーカ、チェックっつったっててにをはだけだろうがボケ!
「分かりました、なるべく早く仕上げます」
意味のない言葉でバカを黙らせ急ぎの仕事に戻る。
その後もなんだかんだと声をかけてきて、あいつの口から俺の名前が発声されるのがホトホト嫌になった。
席を立ってトイレの個室に入り鍵をかけて便座に座った。
5分くらい休憩しようと目を閉じたら外から「山田くーん、トイレにいるー?」と聞こえてきた。まさか、トイレまで追ってくるか普通!?返事をするのも嫌なので黙っている。
暫く物音をさせないように静かにしていると声が聞こえなくなった。ホッと息をついたら
「山田くーん、サボってちゃダメじゃーん」
上司が個室のドアの上から俺のことを見つめていた。
驚きと怒りと気持ちの悪さで大声を出したいのに喉が開かず掠れ声しか出ない。そのうち目の前がチカチカしてきて視界がブラックアウトした。
マイハート?私の気持ちってこと?
うーん、今はとにかく疲れて眠い。年度末だから忙しくて大変。ふくらはぎが太もものように太くなってる。
歳をとると持ってる手札だけで勝負せざるを得ないのさ、ないものねだりは若者の特権!
好きじゃないのに飲んじゃうお酒、好きじゃないのに食べちゃうつまみ、嘘、全部大好き、飲んじゃえ飲んじゃえ。
親兄弟は問答無用で特別な存在。そのくらいかなー。友達が出来ても卒業とか異動で距離が離れると疎遠になっちゃう。近しい存在でいるには努力が必要だよ。