声が枯れるまで今日は歌う
明日、また学校があるがどうせしゃべる相手も機会も無い
前から行ってみたかったんだカラオケ、
普通高校生は友達と行くらしいが一人だ
誰も僕の歌を聞くことはない、聞いてるのは僕だけ
どれだけ好きな曲を下手くそに歌っても誰かが後ろ指を指すようなことはしない
僕だけだ、聴くのも歌うのも
いつもと何ら変わらない
でも、
始めてだなこんなにワクワクするのは
いつも授業中、先生の話を遮断するためワイヤレスイヤホンを付け適当な曲を流している
周りも先生も気付いているだろうがなにも言わない
ほんとに気付いてないかも
そんな事を考えながら曲を聴く、そうするとたまにいい曲が流れてくる
前奏を聞いた瞬間、足から頭にかけて飛行機が飛び立つような勢いで風が走り歌が始まると歌詞がスッと頭に入って視界パッと広がって色が付く、意味は良くわからないが…なんか、わかる
そんな感動を覚えた曲
備え付けのパッドにその曲のタイトルを入力し検索をする
あった
歌詞を見る、改めてみると現状を打破しようみたいな安っぽい謳い文句が書かれているしかし、どこか詩的でふと空を、海を、自然を見たくなるような
子供の頃感じた希望、それを思い出す
この歌を歌っているのはあるアーティストだが、彼らが歌っているものは
僕だ、
僕なんだ
気がつけばつまらない退屈な高校生生活を送っていた僕の
アーティストと面識は無い、僕のこの考えは根拠の無い、全く関係も因果もない
でも、
彼らの曲を、偶然聴いた
これは運命だ
歌詞の最後に、この歌詞に出てくる人物は文字通り"自由"を叫んだ
とても輝いていた、羨ましかった、
私も、叫びたい
でもただ叫ぶだけじゃだめだ
全てを捨てて、
なにも考えず
力を抜いて
理想を頭で空に書く
メロデイが流れてきた
すぅと深呼吸をする、
新鮮な空気が身体中を巡り、どこからともなく高揚感がふつふつと沸いてくる
第一声は威勢よく、今までの人生で聴いたこと無い様な大きな声で威勢よく
体中の穴と言う穴から新鮮な風が入り、出る
自然と笑みがこぼれる
歌う
ただそれだけ、自分のために歌う
僕は声が枯れるまで歌う
まだ、声は枯れてない