『現実逃避』
明後日からテストが始まる。
勉強をしなければならない、それは分かっている。
でも面倒くさい、やりたくない、そんな思いが先行する。
よし、ゲームをしよう。勉強は明日やれば良いや。
そしてテストが返された後、俺は補修の為に休みの日にも学校に行くことになる。
『君は今』
天国と地獄はあるのだろうか。
よく死んだ後に善い行いを多くした人は天国、犯罪などの悪い事をした人は地獄に行くと言われている。
それが嘘か真実かを知る事が出来るのは死ぬか、それとも神様と言う存在くらいだろう。
君は今、どうしているのだろうか。
君が病気にかかり、余命を告げられ、そして逝ってしまった。
君が亡くなって、私は君と同じ所に行こうと考えた事もある。
だけど君は最期に私に言った。『あなたには生きて欲しい』と。『一緒にこっちに来たら駄目よ?』と。
多分、分かっていたんだろう。君が亡くなったら、私がどうするかを。
だから最初に釘を刺しておいたんだろう。
だから、私は今を必死に生きている。
恋愛はもうする気は無いが、今でも充分幸せだ。
君は今、どこで何をしているんだろう。
君に会えるのは、もう少し先になりそうだ。
好きだった彼女と別れた。
ずっと浮気されていたらしい。
街で男と歩いている所を偶然見つけ、問い詰めたら
『だってあんた嫌いなんだもん。貢いでくれるからしょうがなく付き合ってあげてたけどさ〜』と言われ振られた。
天気は生憎の雨。まるで俺に追い討ちをかけるかのように体に雨が当たり、体温を奪っていく。
立ち止まり、上を見上げて曇り空を眺める。
そして、涙が出て来た。
好きだった。愛していた。学生の頃から片想いをしていて、告白して、やっと付き合えたのに。
物憂げな空の中、俺は1人泣いた。
太陽が輝いている。とても良い天気だ。
いつも家に篭っているのでたまには散歩に出ようと思ったが間違いじゃ無かったらしい。
見慣れた景色を横目に街を歩いていく。
散歩の途中、喉が渇いたので公園に寄り缶ジュースを買う。
タブに指をかけ、ジュースの蓋を開けて飲む。
その時、下に蟻が見えた。
1匹1匹が綺麗に並び、『今日』を必死に生きている。
その小さな命を使って。
銃の発砲音が近くで何度も響く。
もう何人この手で殺したか分からない。
もうこんなことやめたい、と思っていても出来ない。縛りは私を強く呪い、蝕む。
昨日まで夢や、ずっと心に秘めて来た願いを語り合った友も、胸と頭を撃たれた。即死だろう。
何故、このような事を続ける。何故、このようなことを繰り返す。
分かっている。いくら終焉を願っても、届かない事なんて。
『死ねぇぇぇ!』
その時、後ろから殺気を感じ、地を蹴り、攻撃を避ける。
『なっ』
すぐに体勢を立て直し、襲撃者の足を撃ち、機動力を奪う。そして、銃口を頭に付け、引き金に指をかける。
『待ってくれ! 死にたく無いんだ! 助けてくれ!』
『お前らが始めたんだ。この地獄を』
次の瞬間、バンッ! と言う銃声が鳴り響き、辺りに血が流れていく。
もう、何も感じない。最初に人を撃った時の感触も、悲しみも、そして、込み上げてくる吐き気も無い。
人を殺すのに慣れた。いや、慣れてしまった。
いつ終わるんだろう、この無意味な戦争は。
人を殺す為に銃を撃つのを、誰も求めていないのに。
『早く、終わってくれ……』
そう呟いた時、軍から渡された無線から声が聞こえた。
『次だ。願うより行動をしろ。足を動かせ。』
『……はい』
また、歩き出す。人を撃つ為に。
また、銃を構える。いつか、太陽が燦々と照り、その下で人々が笑っている未来を掴む為に。