ここは魔王が支配する世界。
そんな魔物が蔓延る混沌の時代に、
勇者A・勇者B・勇者Cは誕生しました。
"サクシャ"という神様が3人に語りかけます。
『偉大なる勇者達よ。この世界に平和をもたらすため戦うのじゃ!記念に何か1つアイテムを差し上げよう』
勇者Aは敵を倒すための「剣」を願いました。
勇者Bは敵から身を守るための「盾」を求めました。
勇者Cは便利な「タイムマシーン」を欲しました。
こうして3人は各々要求したアイテムを手にして、
冒険の旅へと出ました。
勇者Aと勇者Bが与えられた武器を操り敵と戦う間に
勇者Cはタイムマシーンを使い過去へ飛びました。
そこで彼は魔物たちによる数々の被害を食い止め、
ひいては魔王の誕生まで阻止したのです。
かくして世界に平和が訪れましたとさ。
~完~
神様は頭を抱えました。
『とんだチート能力を与えてしもうた。これではお話にならんぞい!』
勇者Cは神様に存在ごと消されてしまいました。
お題「タイムマシーン」
夜の澄み切った空気が好きだ
街の喧騒から離れた静かな道
お気に入りの曲を聴きながら
帰路につく
突然何者かに後ろから抱きしめられた
そのまま暗闇へと引きずりこまれる
震える身体に覆いかぶさり
何者かが耳元で囁いた
一目見た時からずっと想っていた
好きになってくれなくてもいい
君にとって忘れられない
特別な夜になれば
それから長い年月が経った
大好きだった曲はあの日以降聴けなくなった
私は今でもあの夜が忘れられない
お題「特別な夜」
ただの暇つぶしだった
街で見つけた可愛いおもちゃを
仲間たちと盗んで檻の中に閉じこめた
散々弄んで壊した後は箱に詰めて海へ捨てた
きっと今頃は海の底だ
だけど俺たちがやった悪戯は大人たちにばれて
檻の中へ入れられた
俺たちはまだ子どもだったから暫くすると
外に出してもらえた
それからまた新しいおもちゃを探して街を歩いてると
突然視界が真っ暗になった
気づいたら俺は暗く冷たい場所にいた
罪は鎖となってこの身体を縛り上げ
罰は碇となってこの魂を海の底へと沈めた
人もいない光も届かないこの場所で
死ぬことも出来ずに一生俺は生きていく
お題「海の底」
いつからだろう
そいつが現れるようになったのは
ふと窓の外の景色を眺めているとぼんやりとした
何かが立っておりこちらをじっと見つめていた
食事をしている時 誰かと話している時
買い物をしている時 家に帰る時
いつも視線を感じていた
ピンポーン
午前2時 玄関のチャイムが鳴る
ピンポーン ピンポーン ピンポーン ピンポーン
無視していると何度も何度も
インターフォンを押された
苛立ちながら玄関の扉を開けると
そこには誰もいなかった
鍵を閉めて念の為チェーンもかけておいた
これでようやく眠れる
布団をかぶるとそいつはこちらをじっと見つめていた
お題「君に会いたくて」
部屋を掃除していたら「✝︎禁断の書✝︎」と書かれた
A4ノートを見つけた。
『この封印されし「✝︎禁断の書✝︎」を開く者よ
おめでとう
我らはサタンに選ばれし闇の同胞である
来たる吉日
ワルプルギスの夜に我らは紅き月の下
再開するだろう
若く美しい娘を生贄に
その芳醇で濃厚な血で盃を交わし
我らは破れぬ血の盟約を結ぶ事となる
もし約束を破れば
我がブラッディ・ホーリー・エスパーダ
の餌食となるだろう
それをゆめゆめ忘れることなかれ
闇の同胞よ』
私はこのノートを処分した。
お題「閉ざされた日記」