手放す勇気
妹に缶バッチをもらった。
修学旅行のお見上げらしい。
別に好きなキャラクターのものではないし、
缶バッチ自体もそこまで好きじゃない。
けれど、手放せないのは
「妹が自分に買ってくれた」という過程があるから。
手放したくないのは、缶バッチじゃなくて、
妹との思い出だ。
光り輝け、暗闇で
エアコンに電子レンジ、テレビ、
そして、ドライヤー。
照明が少しの間チカチカした後、部屋の中が
真っ黒になった。
そうだ、忘れてた。一気に電気使うとブレイカー
落ちるんだった…。
少し熱を持ったドライヤーを、テーブルの上に置く。
そして、ため息をひとつ吐いてから立ち上がった。
——スマホよ、君の出番だ。
夢を描け
将来の夢は、大きければ大きいほどいい。
例えば、サッカー選手になりたいと思って必死にサッカーに取り組む。頑張って頑張って、海外で勉強できることになったとしよう。だが、怪我を負ってしまって選手寿命が途絶えてしまう。
この後、サッカーを教える側として前とは違う形でサッカーに関わるとする。
何年か経った後、海外で暮らしていたという経験を活かして英語の教師として今は生きている。
そんな人がいた。
木零れ日
ギラギラと輝く太陽から逃げるように木陰に入った。
温暖化のせいで最近の夏は特に暑い気がする。
暑いし、汗かくし、食べ物はすぐ痛むし、日焼け痛いし、寝苦しくてよく悪夢を見るし、暑いし、暑い……
やっぱり、どうも夏は好きになれそうにない。
「……はぁ」
ふと、上を向くと、みずみずしい枝葉から差し込む太陽の光が視界いっぱいに入る。
……夏がほんの少しだけ好きになった。
ラブソング
バスの中。
少しヤンチャそうな男の子が、途中で乗り込んで来た。
丁度空いていた、私の前の席に座った彼は、ヘッドホンを耳にかけ、スマホを操作する。
彼はどんな曲を聴くのだろう。
やっぱり激しめのバンドの曲……?
失礼ながら見た目から、なんとなく想像を膨らませていると、微かに聞こえてくる音色。
音漏れなのだろうか。
ポップで可愛らしいそれは、愛を唄ったもののようだ。
そして、それは聞き間違いじゃなければ、私のすぐ前から聞こえる。
えっ、、この子が……?
「……なにそれ、可愛い…」と、声に出さなかった私を誰が褒めてほしい。