『あなたを採用します。』
電話越しに男がそう言った
私は嬉しくてたまらなかった
来年から働くのだ
憧れていた東京で
その時はまだ———
もう一つの物語り
何をしたらいいかわからない
何が正解かわからない
灯りのない迷路の中を
一日ひたすら歩いてる
私の日常はこんなものだ
闇の中を彷徨い続け
いつ灯りが差すかもわからない
でも今日は一筋の光が見えた
『それでいいよ。正しいよ。』
と言ってくれる人が現れた
その人は月のような優しい光で
私の道を灯してくれた
いつもより道がよく見える
次はあっちへ行ってみようかな
それでいい
彼は常に強く居る
大きな自信を持ち合わせ
何かを決断する勇気もある
そんな彼が私に言った
努力をしていないのに
自信がないなんて
言ってはいけない
私は
彼が努力したから
自信を持てているとは
到底思えなかった
努力が見えないと言うのはそうだが
容姿は良いし家庭にも恵まれている
自分を卑下しているのではない
私は彼より努力していると自負していた
思考を深めると
彼の自信に興味が湧いた
人は皆悩みを持つと言う
私にも悩みの一つや二つある
それどころか絶え間なく押し寄せてくる
一つの悩みが二つ三つと増えると
どうにも立ち行かなくなるのだ
悩みに向き合い
もがき苦しみ
ようやく抜け出すような日々だ
そんな私を見て
彼は言うのだ
努力をしていないのに
自信がないなんて
言ってはいけない
と
1つだけ願いが叶うなら
彼のような人生を歩ませて欲しい
そして
私のような人生を歩む彼に
私はきっとこう言うだろう
努力をしていないのに
自信がないなんて
言ってはいけない
この願いが私の努力で叶うものなら
1つだけ
届くはずのない手紙を書いた
この手紙を届けられないのがとても悔しい
届けられるはずだった手紙が
いつしか届けられなくなっていた
もう少し早く気づいておけばなんて自分を攻めるけど
攻めたところでもう遅い
自己満足と自己嫌悪と喪失感に浸りながら
届くはずのない手紙を書いた
君に届かないことは知っている
でも書かずにはいられない
願っても叶わない
でも—————
あなたに届けたい
思い通りにならない事ばかりだけど
思い通りにならないからこそ
愉しめることもたくさんある
この世界は