「優しくしないで」
「おはよう!」
ひとりぼっちで、勉強も運動もダメダメなわたしに話しかけてくれて、
「一緒に食べよう!」
いっしょにご飯食べてくれて、
「一緒に行こ!」
ずっとそばにいてくれて。
うるさいだけの教室が、少しだけ暖かく感じるくらいに幸せだ。
どうしてそんなに優しいの?
わたしのこと好きなのかもって、勘違いしちゃうじゃん。
でも君がわたしを好きなわけない。
わたしのことが好きな人なんていたことない。
どうせこの思いを打ち明けたら君ははなれてしまうんだ。
だから、今はまだこのままがいい。
この日々が、いつまでも続いたらいいのに。
そんな日々もあの子が転校してきて崩れた。
あの子は勉強も運動もなんでも出来て、すぐにクラスの人気者になった。
君はあの子の近くで笑ってて、
わたしとは全然話してくれなくなって。
君に相応しいのはわたしじゃないんだって、
君が好きなのはあの子なんだって、
気づいてしまったんだ。
結局わたしは変われなかった。
元通りになっただけ。
君がいなければ、ずっとひとりだったはず。
そう自分に言い聞かせるのに精一杯。
君との甘くて優しい日々は、思い出になってしまった。
こうなるから、優しくなんてしないで欲しかった。
ベットに寝転んで、泣きながら眠りにつく。
「おはよう!」と君が言う。
他の誰でもない、わたしに向けて。
「一緒に食べよう!」
他にも友だちなんてたくさんいるだろうに。私のところへ来てくれるくらい、君は優しい人なんだ。
「一緒に行こ!」
移動教室のときですら、わたしと一緒にいてくれて。
ああ、わたしは幸せすぎたんだ。十分過ぎるくらい、君にもらっちゃったんだ。
だから、わたしの幸せはもう終わり。もう、他の誰かにゆずらなきゃ。あとわたしができるのは、君の幸せを願うことだけ。そうなんでしょ?ねぇ…
目が覚めた。
さっきまでのは全部夢。
これで、わかった。
君はあの子と結ばれて、ハッピーエンド。
わたしはそれを見てるだけ。
そして、おめでとうって言って、わたしはそれでおしまいなんだ。
もう、君のことなんて忘れちゃえばいいんだ。
きっと、絶対、それがいいんだ。
制服に着替えて、いつも通り学校へ。
あの子と話す君を横目に、自分の席に座る。
教室は五月蝿くて、冷たく感じる。
いつかのわたしと一緒だ。笑えてくるくらいに。
君への思いは手放した。
心はすっきりして、でもすごく冷たい。
…ああ、世界はもう優しくなんてしてくれない。
こんなことになるのなら、最初からやさしくしないでよ。ねぇ!
「カラフル」
大好きだよと伝えれば
ちょっぴり照れるきみの横顔
わたしもあなたが大好きだって
伝えるきみは真っ赤だった。
快晴のもとで走り出す
あついあついと言いながら
駄菓子屋によって買ったラムネは
透き通るほど青かった。
木の葉にしずくがきらきらと
かがやきみとれる昼下がり
若葉の成長を祈りながら
緑を目に焼き付ける。
夕暮れのもとでただひとり
烏のなきごえが耳に残る
何故かおさないあの日々を
思い出すのはオレンジ色。
夜空に浮かぶ三日月と
満天の星々が目に映る
夜をみまもるものたちは
闇を金色で照らしている。
海底の景色がみたいから
どんどん深く潜ってく
ついにたどり着いたそこには
藍色の世界が私を待つ。
あなたによろこんでほしくて
あなたの好きな花を見に
優しく忠実なあなたは
この紫の花に似ている。
雨上がりの空を見上げ
ずぶ濡れのまま笑い合う
空もきみとの思い出も
全てがカラフルな虹みたい。
「楽園」
それは、色とりどりの花に囲まれてるような
それは、美しい音楽に包まれてるような
それは、神秘的な光景を目にしたような
それは、大切なひとと一緒にいるような
それは、純白のヴェールに覆われたような
それは、天から降りそそぐ光のような
それは、透明で清らかなような
それは、私だけの天使のような
それは、秩序が保たれたような
それは、唯ひとりにゆだねるような
それは、踏んづけられた意思のような
それは、みんなみんな同じような
それは、ケーキにかかるラズベリーのソースのような
それは、おおきなおおきなシャボン玉のような
それは、お気に入りのリボンのような
それが、わたしだけの楽園。
「風に乗って」
たんぽぽのわた毛 そよ風にのって
どこまでゆくの あそこまで
そらにうかぶ雲 そよ風にのって
どこまでゆくの どこでしょう
ピアノの音色 そよ風にのって
どこまでゆくの あの子のところ
わたしのきもち そよ風にのって
どこまでゆくの どこまでも!