【何もいらない】
そう言って俺は全てを拒絶した。
それが正しい事だと思っていたから。
何も望まないことが、きっと最善策なのだと信じていた。
少しの間、耐えていれば、いつか救われると。
「バカじゃないの?」
あぁ、本当にそう思うよ。
「自己犠牲だなんて酷い発想ね」
盲目だったんだ。
「いつか救われる、だなんて他力本願もいいとこよ」
確かに。
「アンタがやってるのは、ただの現実逃避でしょ」
君の言う通りだよ。
全部、俺が悪い。
「……そう言って、いつか私のことも捨てちゃうんだ」
そうかもしれないな。
頼むから、泣かないでよ。
「…………何もいらないなんて、ウソつかないでよ」
「……ごめん」
それでも俺は、何もいらない。
【もしも未来を見れるなら】
「どんな夢を見てみたい?」
「……どんなって?」
「こんなふうになりたいとか、あんなふうになりたいとか」
「考えたこともなかったな」
「本当に?」
「……望んだって叶わない夢なら、見る必要もないだろ」
「そんなことないよ。夢を見るのって凄く楽しいし」
「それは多分」
「なに?」
「…………凄いことだと思う」
「そうかな?」
「そうだよ。だから、どうせ見るなら……」
「見るなら?」
「……お前の夢がいい」
「…………それでいいの?」
「いいよ」
「本当に?」
「お前の幸せを見ることが出来るなら、それでいい」
「…………変なの」
「知ってる」
【無色の世界】
何色にも染まらない
何色でもない世界
時に美しく
時に恐ろしい
透かした世界に何が見えるか
鮮やかさのない
透明な世界
何色にも染まれない
何色にもなれない世界
貴方の目には、どう見えるか
逸らさず教えて
無色の世界
【桜散る】
「桜の樹の下には死体が埋まっている、って……よく言うじゃない?」
「……それが、どうかしたのか?」
「どうして、わざわざ死体なんて埋めたのかな? それに誰が埋めたの? どんな得があるわけ?」
「知るかよ。だいたい、それは文豪が書いた短編の有名な一文であって、本当に死体が埋まってるわけじゃない」
「そうなの?」
「そうだよ。短編の内容だって、ほとんど主人公の妄想だし」
「ふーん……すごい想像力だね。その主人公は」
「美しく咲き誇る桜に不安を感じて、そんなことを考えたらしい」
「……あぁ、それなら少し分かるかも」
「なにが分かるんだ?」
「だって完璧なものって、見ていて憂鬱にならない?」
「…………」
「まあ本当に埋まってたら、それはそれで感動的だと思うけど」
「そうか?」
「うん。ほら見てよ、あの桜」
「散ってる」
【ここではない、どこかで】
何をしよう?何がしたい?
移動しながら話し合う
これからの予定を計画しよう
ここではない、どこかの場所で
君と過ごす時間が楽しみだから
君はどうかな?どう思った?
移動しながら想像しよう
着いたら何が待っているのか
不安ちょっぴり、ワクワクたくさん
僕と過ごす時間を楽しみにして
ここではない、どこかで過ごす
君と僕の物語