通り雨
辛いことも
嬉しいことも
きっとぜんぶ通り雨
新しい色の雨が降っているうちに
雫を集めておかないとね。
次にいつ、この色の雨が降るか分からないから。
秋🍁
秋は過ごしやすくて、雲が綺麗なつぶつぶになる。葉が恥ずかしがって、赤くなったり黄色くなったりする季節。
甘い柿に、うっかりほっぺたを落としそうになって慌てる。秋刀魚のいい匂いが、仄暗い帰り道にいっぱいに満ちる。美味しい季節。
長い間とっておいた本を取り出して、静かに近寄ってくる月と一緒に読書をする。未知の世界に日帰り旅行をする季節。
スポーツの大会に心を燃やして、正々堂々と戦う。悔し涙を流す人もいれば、笑顔になる人がいる季節。
なんだか気になる、でもなかなか会話が弾まない―そんな間柄のあなたと歩いているとき、道端に落ちている銀杏をうっかり踏んでしまって焦る。
だけど―そのことがきっかけで、二人の距離がちょっとだけ縮まる季節、かな。
窓から見える景色
私の席の近くにある窓からは、中庭が見える。
そこでこっそりお菓子を食べたり、写真を撮ったり、放課後には部活をしたりしている人たちの姿が、私にはよく見える。
私もそういう、ありきたりな青春を過ごしたかった。
机の上に書かれた、私に向けての心無い落書きを見つめる。
きっとこれを書いた人たちは、ありきたりで、無分別で、遊んでばかりの―すごく尊い日々を過ごしているんだろう。
青春は、必ずしもハッピーエンドにならない。早く終わって欲しい、この長く辛い時間が。
形の無いもの
好きで好きで燃える愛、
辛いのに誰にも言えない悩み。
何処かの誰かの笑い声、
何処かの誰かの泣き声。
叶うかわからない大きな夢、
忘れてしまった昨日の夜の夢。
楽しかった記憶、
思い出すと胸が痛む記憶。
どこからともなく吹いて励ましてくれる風、
私をびしょ濡れにする無情な雨。
あなたとの大事な思い出、
もうここにはいないあなたの、優しい笑顔。
ジャングルジム
小学生の頃、校庭のすみっこに黄緑色のジャングルジムがあった。
よくそこで、寄りかかって友達とおしゃべりしたり、鉄棒のように前回りをして頭をぶつけたり、鬼ごっこをして騒いだりした。
今思えばとても不思議だ。鉄が組まれただけの遊具が、何であんなに好きだったんだろう?
その答えを探すために、あの頃よりは「おとな」になった私は、母校を訪ねてみた。
あの黄緑色の塔は、どこにもなかった。
ただ静かに、殺風景なグラウンドがあるだけだった。
あの遊具は消えてしまった。
同時に、あの頃の私も何処かに消えてしまったのかもしれない。
今となっては、確かめる術もないが―。