「向かい合わせ」
正面から人に見られると
試されているような気がする。
体が石のようになって
言葉が喉にひっかかる。
言いたいことはいっぱいあるのに、やるせないな。
創作「海へ」
お盆の昼下がり。海へ散歩に向かうと海月が沢山、海面を漂っていた。海月は幻想的な生き物である。 だからつい、想像したくなってしまうのだ。
静かな夜の海で生を受けた海月は、穏やかな波をゆりかごに、蝶よ花よと育まれる。そして、うつろいゆく空模様に翻弄されることもなく、広く厳しい海原をのらりくらりと揺蕩う。
それから、真っ白な砂浜に打ち上げられて、 裏返しになった体を波に洗われながら、ここまで生きられた誇らしさをそっと噛みしめる。最期には、さよならを言う前に影も形もなく消えゆく。
時にはつまらないことでも真剣に考えるのも悪くない。ゆったりと漂う海月たちを眺めていると、そう思えた。それが、ありがたいと思ったのだった。
明日、もし晴れたらまた海に来よう。わずかに秋の空気を含んだ潮風をあとにして、のんびりと帰路に就いた。
(終)
「鳥のように」
麦わら帽子をさらう風にのって
大空を自由に飛び回ることができる
大地を駆け抜ける健脚を持っている
鏡のような水面に浮かび
凍てつく水底へ潜る力がある
食べ物を工夫して見つける賢さがある
さえずりは君の奏でる音楽 私の心の健康
自転車に乗ってどこまでも、鳥のように旅をする
この希望は、いつまでも捨てられないもの
「終点」
旅の終わりは冬晴れの空と凪いだ海が良い。
これはふと、空を見上げて心に浮かんだこと。
寒さにひりつく頬、かそけき波の音。
そろそろと訪れる夜の帳に、まぶたを閉じて
静かなエンドロールとともに旅の終わりを迎える。
ここは、終点、ここは、終点。
「上手くいかなくたっていい」
眠れない夜には、月や星を見る。
うっすら浮かぶ雲を眺める。
夜空がこんなに綺麗なら
たまには眠ることが上手くいかなくたっていい。
そう思うとだんだん眠くなってくる。
おやすみなさい、良い夢を。