谷折ジュゴン

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8/7/2024, 12:20:33 PM

創作「最初から決まってた」

「よくここまで生き抜いたね」

太陽の光が届かぬ地下深く。魑魅魍魎を統べる魔の女王は玉座に身を委ね、一人だけ生き残った勇者を見下ろしていた。そして、艶やかな赤の唇を開く。

「貴方は確かに神に選ばれし勇者だよ。だけどね、それでもどうにもならないこともあるの」

魔の女王は手招きするような動きをした。すると、目には見えない斬撃が勇者を襲う。四方八方から受ける不規則な攻撃に困惑する勇者を、魔の女王は鼻で笑った。

「この迷宮に入って来た時点で貴方は終わる。理解するもしないも、貴方のそれは蛮勇だったの」

攻撃をさばききった勇者は魔の女王を見据え再度、剣を構えた。が、すでに勝負はついていた。勇者の胴体を一本の剣が貫いている。

「もう終わりにしよう、貴方もご苦労様。少しは楽しめたわ」

剣が引き抜かれ、勇者は膝から崩れ落ちた。虫の息になった勇者が何か呟く。その言葉に魔の女王は穏やかに笑った。

「答えは単純。結末は最初から決まってた。そして、我の味方が多かった、ただそれだけよ」

狩りの終わりを知らせる鐘の音が鳴った。迷宮のあちこちから集まって来た彼女の配下たちが、今夜はご馳走だと騒ぎながら勇者たちの骸を運んで行く。その様子を眺めながら魔の女王は、次なる獲物への策略を巡らせるのだった。
(終)

8/1/2024, 7:15:26 AM

「だから、一人でいたい。」

心に嵐が来ようとも一人で文章をまとめる間は

澄んだ瞳でいられる気がする。

だから、一人でいたい。

7/29/2024, 9:51:11 AM

創作「お祭り」

騒がしい人いきれの中を、父親に手を引かれて泳ぐように進む。わたしの顔に浴衣の帯がかすめ、甚平の体が横を通り過ぎた。

ようやく少し開けた所に出ると、辺りが見渡せた。夜風が心地よい、ほんのり橙色に染まる空気。腹に響く和太鼓の軽快なリズム。屋台からソースの香りを帯びる煙が揺れる。

こじんまりとしたスペースに、これでもかと非日常が詰め込まれていた。遅れて来た母親と合流して屋台を見てまわる。はだか電球に照らされた焼きそば屋、アニメや特撮もののお面が並ぶおもちゃの屋台。込み合う、かき氷屋と射的屋。

どれも魅力的な光景だった。が、ひときわ目をひいたのは、水色の水槽である。両親の手を軽くゆすり、水槽に近づきたいと頼んだ。

透明な水の中を、金魚たちがのびのびと泳いでいた。赤や黒、白と赤のまだら模様のもの。丸い体にひらひらした尾びれ。じっくり眺めた後、店主の手のひらに100円玉をのせた。

ぽいと水が入ったお椀を手に、黒い毬のような一匹に狙いを定め掬う。金魚はでっぷりと丸いお腹を揺らし逃げようと抵抗する。落とさないよう、そっとお椀に泳がせ、次の金魚を狙う。赤い和金を一匹掬い上げてお椀に移したところで、ぽいが破れた。

店主へ破れたぽいとお椀を返し、水と掬った二匹とおまけの一匹が入ったビニールの巾着型の袋を受けとる。ずしりと重みのある金魚袋を大事に右手に下げ、屋台を離れた。

人々のざわめきが静まり、 夜空に一筋の光がひゅーうと昇った。大輪の鮮やかな花火が開く。すぐに炸裂の音が体を貫く。

続けざまに、小さな花火が上がった後、滝のような花火が夜空を覆った。その迫力と幻想にわたしはしばらく見入っていた。

ふと、金魚の存在を思い出し右手をあげる。夜の闇に金色の鱗を煌めかせ、三匹の金魚は泳いでいた。水中からも、あの花火は見えているのだろうか。わたしは、ひんやりとした金魚袋の底をそっとつかみ、金魚と共に花火を見た。

そうして我が家に迎えられた金魚たちは、十年近く生き、天寿を全うした。

(終)

7/28/2024, 2:39:10 AM

創作「神様が舞い降りてきて、こう言った。」

家を出ると、絵に描かれる神様みたいな姿のおじいさんがいた。地面から1mほどの高さに浮かぶ雲にあぐらをかいて、額に汗を光らせながら首をひねっていた。よく見ると手には短冊と携帯用の墨と筆を持っている。

「神様が舞い降りて来てこう言った あとの七七何と詠もうか」

朗々とした声でおじいさんはそう言い、不満そうに新たな短冊をどこからか取り出す。わたしは戸惑いつつ、移動してもらうために声をかけた。

「あの……何をされているんですか?」

「ん?短歌を作っているのだ」

「ここ、わたしの家の前なので、移動していただけないでしょうか。短歌を詠まれるのなら、向こうの公園が涼しくておすすめですよ」

おじいさんは驚いたように目を開き、わたしの足の先から頭の上までじっくりと見た。

「おお、そうか。あんた、わしが見えるのか。いやはや、創作意欲が湧くとどこでも詠んでしまうのが、わしの悪い癖でな。うむ、移動しよう。ここはちと暑い」

そう言い、がははと笑う。案外気の良いおじいさん、もとい神様だった。神様はこっそり地上を視察して短歌として記録しているらしい。

「では、わしは一度、天に帰るとしよう。あんたも元気でな」

そして、神様はふわふわと浮上して行った。

ふと、足元を見ると短冊が一枚残されていた。手に取ると驚くほど軽い。そこには見たこともない言語が記されていた。読むことはできなかったが、心まで軽くなるような言葉であると伝わって来る。しばらくすると、短冊は手の中から消えていった。

こんなに暑い日には、不思議なこともあるものだ。

(終)

7/27/2024, 7:20:46 AM

「誰かのためになるならば」

私は私のためにこのアプリに文章を投稿している。
だから、もし誰かに読んでもらえて、さらに心に残っているのなら幸運なことだと思っている。

どのような思いで私の文章が読まれているのか、私にはわからない。

だが、誤字脱字は気づきしだい修正している。
少しでも読みやすいように意識しつつ、私はこれからも自分の心のままに文章を綴っていくつもりだ。

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