ただ、必死に走る私。
何かから逃げるように。
記憶は無い。
体力も少なくなってきた。
遠く、背後からドシンドシンと音がする。
耳の奥が痛くなるような音と同時に。
段々音が大きくなってくる。
もうダメ、そう思った時、私は目を瞑る。
何かをドンドンと叩かれる。
服が剥ぎ取られる。
知ってる大きい声が耳元でする。
なんだ、夢だったんだ…。
あれ、ここは何処?私は誰?
あれ……私は生きてる?
59
58〘 突然の別れ 〙
君は十年前、突然消えた。
まだ、君の体は見つかっていない。
なんでなんだろう。
なんで君だったんだろう。
どうして僕じゃなかったんだ。
なんで君を一人で待たせてしまったのだろう。
僕は彼氏失格だよ、。
君の捜査が打ち切りになってから八年ほど経ったよ?
君の服すらも、足跡すらも、小物すらも、髪の毛一本でさえも見つからない。
どこに行ったの?
なんで、君の異変に気付かなかったんだろう。
もう自分を問いつめても君は帰ってこない。
ならば、もう君のことを忘れる方が早いだろう。
なら、方法はたったひとつだ。
〖自分で自分を殺す〗。ただそれだけ。
もう、君と会えないのならば、僕は何をしたって君に会いに行く。
もう、君から離れたくないからさ。
今日の心模様
今日はどんよりしてる。
雲も気持ちも周りも全部。
もう動きたくない。生きたくない。
全てを捨てて旅立ちたい。
でもそんなこと出来ない自分が嫌い。
助けて誰か、誰か拾って。
この暗闇の中から誰か出してよ。
今日も心の中で叫ぶけど、
こうして誰も助けてくれないのがオチだ。
あーあ、透明人間になりたいなぁ…。
早く逝きたい。生きたくない。
57
僕の世界は無色の世界。
真っ暗で何も見えない。
僕は生まれつき目が見えない。
だから真っ暗。
でもね、お母さんに言われたんだ。
「真っ暗でも色はあるんだよ。黒っていう色がね。」
僕は真っ暗が好きになった。
ある日黒以外の色も見えるようになった。
僕の目はみんなと同じように開いたんだ。
黒以外の色は眩しかった。
ずっと真っ暗の世界に居たから。
僕は真っ暗の世界に戻りたくなって、
目を瞑った。目を瞑って考える。
どうやったらまた、黒の世界に戻ることが出来るのか。
一週間後、僕はまた、黒の世界に戻ることが出来た。
でもその目は開くことが出来なくなった。
56テーマ「無色の世界」
毎年、町の行事で小学校では、「神社に居る神様に送る手紙」というテーマで子供たちが神様宛に手紙を書く機会がある。
下記はある小学校の二年生男の子が書いた手紙の一部だ。
~神様へ~
ぼくはいらない人間ですか。
ぼくは元からひつようなかった人間ですか。
ぼくはまいにち、クラスの子たちにおなかをけられてなぐられます。
ぼくの一日はいつもこうです。
6:30にぼくはおきます。
7:00までにごはんをパパとママのために作ります。
7:30には学校に着いておかないといけません。
じゃないと、またトイレにこもらされます。
12:30に四時間目がおわります。
おわったらすぐにごはんを取りに行かないといけません。
ぼくがたべられるのは少しだけで、みんなたくさんおなかいっぱいになるまで食べます。
六時間目がおわったあとは、みんなにたたかれてなぐられてけられます。
帰ってからはパパにハグをされます。
でもそのはぐはすごく強くてぼくが潰れそうなくらいぎゅーってします。
ママはぼくの首をぎゅーってして「いたい」って言ったらお風呂に連れて行ってくれます。
みんながえがおになれるなら、ぼくはこれでいいです。
でもぼくはこの生活を楽しんでいます。
みんなにみとめられるから。
ぼくが生きていいと言われる場所だから。
でも、ぼくのおばあちゃんはその話をきいて、泣きます。
ぼくはこの生活が大好きです。
でも、神様だけにはむしをされます。
ぼくがきらいですか?
きらいならハッキリ言ってください。
お返事まってます。
☆◎小学校 2年3組 むい こうた より
この子は虐められているのか。虐待されているのか。と思い、学校に直接行くことにした。
~当日 ☆◎小学校にて
『2年3組、むいこうた君について、お話伺っても宜しいでしょうか。』
「むい…??そのような生徒はうちには居ませんけど。」
『じゃあこの手紙はなんですか?』
「これって………校長!!」
インターホンに出た先生は青ざめていき手紙を落として職員室に慌てて帰って行った。
「これをどこで??」
『毎年恒例のポストの一番下に入っていました。』
「…そうか、、これは、この学校で亡くなった男の子の物だ。」
そう言って校長先生は自分を校内に入れてくれた。卒業生の写真が貼られてい廊下に来て話を始めた。
「むいくんはね、"被害妄想がすごい"と当初噂されていた子なんだ。他の学年の先生たちは何も知らないし、学年主任を置いても何も無いという言葉の一点張りで、私が一回だけ見に行った時も何も無かったように見えたのだ。」
「でも、、この子が訴えていたことは事実だった。学年全員でこの子一人を虐めていた。誰も助けてくれる人はいなかったらしい。」
『だから……』
「でもこの子はその手紙を書いていないんだ。」
『えっ?』
「この子は、この手紙を書く一週間前にクラスの子に殺されたんだ。」
『ということは…これは……』
「違う誰かがイタズラで書いたのであろう。一応こちらで預かっておいてもいいですかね?」
『あ、はい、どうぞ、』
その一週間後のニュースでは──────
「速報です。先程、♧◇町☆◎小学校で、2年生の男の子が誤って3階から転落するという事故が起きました。その後すぐ、近くの病院に運ばれましたが、頭を強く強打していて即死だったとの情報です。」
神様へ、すみませんでした。55