子供の頃は…
そうだなぁ
友達と公園を走り回るだけで楽しかった。
ブランコに乗ってるだけでも楽しかった。
けど、
今は家にいる時間が増えて、スマホをずっと見てしまったりして。
つまんないやつになっちゃったなぁ。
いつものように、
サイズがまだ少し大きくて丈の長いスカートを履いて。
今日の午後も部活だなぁとか思いながら、行ってきますって言ってドアを開けて。
学校に着いたら友達との朝の挨拶を交わして。
好きな人の話をして、脈アリとか脈ナシとか色々話して。
あえて好きな人の前を通ったり、好きな人を見つけようとして廊下に長居して先生に怒られて。
そんな日常。
ずーっと続いて欲しい。
私の好きな色は黄色
周りの人からは子供っぽすぎないと言われるけど、
君だけは
素敵だねって言ってくれたよね
私はこの世の中で1番必要とされていない人間だと思う。
嘘偽って出来た友達からの励ましの言葉。
素直に受け取れないし。
人気者の立ち位置だ。だけれど本当の自分を見せたことは無い。
本当はくだらないと思ってること。
本当はトイレに行くのに群れなくても行けること。
料理が苦手なのに頑張ってクッキーとか作っちゃってみんなに渡したりしてること。
前まではメガネをかけてて推し活に精一杯だったこと。
そんな自分自身を愛せなくなっていた。
動画とかで見る、自己肯定感が高い人が羨ましくて堪らない。
私はのうのうと嘘をついて生きてきた。
友人の好きな人をバラしてしまったり、好きな人が誰かというクイズでわざと当ててもらうようにしたり。
自分に被害があったらすぐ泣いて被害者ぶる私。
そんな私を愛せる人なんぞ誰もいないだろう、この世界の中には。
部活を辞める時もすっとぼけたりして。
あの時が1番辛かったりしたかもな。
まぁ、そんなこと言ったところで周りに引かれるだけだと思うから私はいつも取り繕う。
だけど、そんな私の仮面も外れる時が来たのだ。
いつも1人でいるアイツ。
前髪が長くて、うざったそうだ。
だけど、たまに見える顔は少しイケメンだ。
どこはかとなく昔の私に似ていて苛立ったが…
そんなアイツに私はみんなに向けるスマイルを振りまき喋りかけた。
ねぇ、なんの本呼んでるの?
喋りかけたが、コイツはこちらを見て目を少し見開いただけだった。
そして、少し経ってから声を発した。
「いつも君を見ていて思ったんだ。君、なんとなくだけどちょっと俺と似てるなって。」
はぁ? と思わず声が漏れる。
その声はきっとコイツにしか聞こえていないだろう。
「あ…ごめん…そんなつもりじゃないけど、君は本当はあんな風にクラスの流れに乗りたそうな人じゃないんじゃないかと思ったんだ。」
うそ、なんでコイツ分かったの?
私は驚いた。
それは…どうしてそう思ったの?
「…まぁね。」
コイツは曖昧に答えた。
けど、理解者が居るんじゃないかと思い、少しだけ心が軽くなった気がした。
そこから少しだけ仲が良くなった気がする。
コイツとだけは本音で語り合えたからストレスも結構減ったかも。
そんなある日、私はコイツに提案をした。
前髪とか整えたら良いのに。
コイツは驚いた顔をすると前髪をいじいじと触りだした。
「切って欲しい?」
少し顔を傾けてにこにこしながら聞いてきたもんだから、私はたちまち頬が染まった。
別に
と答えた。コイツは そっか と少し寂しげな表情を浮かべ、その場を後にした。いつもと少し違うコイツの反応に私は違和感を覚えてその場を後にした。
次の日、アイツは髪をさっぱり切ってクラスに入っていった。もじゃ男だったやつがイケメンになって入ってくるんだもん。
みんなが見てしまう気持ちも分かる。
それと同時に面食いな女子がアイツに群がる。
少し、嫉妬を覚えた。
私のが、先に彼を知っていたのに。
私は思わずクラスから飛び出して、屋上へと逃げた。
とにかくアイツから離れたい。
屋上のドアを閉めると雨が降ってきた。
それと同時に息切れしてるアイツが来た。
「なんで、なんで。」
コイツの顔が雨のせいで何も見えない。
「私の方が、面食いのあんな奴らよりも先に貴方が好きだった。」
「貴方がいたから、救われた!」
「きって欲しい?って聞かれた時はとても嬉しかった。」
あなたが…
あなたがいたから。
僕は傘を忘れた。
しかしそんな僕の隣で傘を開いた君がいた。
君は僕の方をチラッと見てから少し下を向き、走って帰ってしまった。
僕はあの子が好きだった。まぁでも、嫌われているだろうなと考えた。
仕方がないから僕はカバンを傘替わりにして君を追いかけた。
少しあの子の話をしよう。
あの子は高校になってから隣の席になったんだ。
最初は僕もあの子も気まづそうにしていたけれど、時が経つにつれて心を打ち解けてきたんだ。
授業中にメモ帳をちぎって絵しりとりしたり。
先生の愚痴を言ったり。
好きな人を探りあったりして。
雨が降った日はいつも一緒に相合傘をして帰って。
お互いの肩が近くて、僕はドキドキしてたけど、あの子は僕の方を見ると照れくさそうに笑って「ありがとう」って言ってくれたっけ。
あの子は雨の日はいつもびしょ濡れで登校してきて。
僕がいつもあの子を傘に入れてやった気がする。
そんな日常が突然パタンと終わってしまった。
僕は交通事故にあった。
あの子は毎日お見舞いに来てくれた。学校であった出来事を楽しそうに話してくれたり、時に僕の前でだけ泣いてくれたりした。
くしゃっとした泣き顔がとても可愛く思えた。
手術の時、あの子は何故か来なかった。
きっと用事があったんだろう。
その手術はとても簡単な手術らしい。
僕はすぅっと目を閉じた。
次の日、目を開くと、学校の門に居た。雨が降っていた。
きっと僕は疲れていて、ここまでの記憶がすっ飛んだんだろうと思った。
それか手術の後遺症だろうか?
ここはあの子といつも一緒に待ち合わせ場所にしていた所だ。
懐かしさに浸っていると、横に君がいた。
君は僕の方を2度見してとても悲しそうな顔を浮かべていた。
僕はたまらず声をかけた。
「なぁ、一緒に帰ってくれないか?」
しかし、君は何も反応せずにただただ靴を履いて、紫色の傘をさして帰ろうとしていた。
無視されて悲しくなったとともに、涙が出てきた。
「どうして無視するんだ?!なにか、なにか君に悪いことをしたのなら謝るよ!!!!」
そんな僕の声も届かず、君は少しこちらに振り向いてまた前を向き走り出した。
僕はたまらず君を追いかけた。
すると
君は小さな声で何かを呟いていた。
「手術の日に行けなくてごめん。待ってて、すぐそっちに行くから。」
君は道路に飛び出して車のタイヤに引き摺られる。
君の悲鳴がセミの鳴き声によってかき消された。
いつの間にか晴れていた。
傘など要らないくらいに。