「ページをめくる」 #113

私の膝の上に収まるあなたがページをめくる。
その文字を、後ろから私も目で追いかける。

その本に載っていた一節。
「ねえ、好きだよ」「知ってる」
私たちも真似して声に出してみる。

あなたの「知ってる」の音を私はきっと忘れない。

「夏の忘れ物を探しに」 #112

あなたとの夏の思い出。
ちょっとしかなかったから忘れなかったみたい。

なんて、嘘。でも、探さなくていいよ。
忘れたくてわざと置いてきたものもあるからね。
必要なものは、ほしいものは全部持ってきたから。
心配しなくていいよ。

「8月31日、午後5時」 #111

今日はアイラブユーの日らしい。
あなたと話すきっかけにするには、午後5時は早すぎた。
そして午後10時には手遅れになってしまう。

あと10分の間に、話しかける勇気をください。

「ふたり」 #110

ずっとふたりで生きていきたい。
ずっとふたりだけで生きていきたい。

けど、そうしたらあなたは歪んでいく。
私は、自由で意思のあるあなたが好きなの。

でも、もし、あなたの意思で私に縛られたいと言うのなら
私は不自由で意志薄弱なあなたも大好きだよ。

ふたりで居れるならどんなあなたでも愛おしいのね。

「心の中の風景は」 #109

あなたの横顔ばかり。
あなたは照れて私と目を合わせてくれないから。
それは私にも言えるかもしれないけど。

だから、あなたの睫毛の長さは私しか知らないね。