閉ざされた日記
吐いた白い息が震えている。それは、恐怖からなのか走っているからなのか、私には分からない。
元々きな臭いと思っていた忍務、何をする気かと依頼主を尾行していた。
何度も脳裏に会話が思い起こされる。
「そろそろ我々の準備も終わりそうだな。本当に長い時間を費やしたものだ。」
「一度きりの機会だ、万全に行わなければなるまい。それにここまで辛抱したのだ。あとの少しなど耐えられる。」
「やがて世の均衡は崩れる。夜は昼を覆い、シノビである我々が利権を掴む。」
国の重役に座るシノビ達の密談は続いていた。全てを聞き終えた後、バレないうちにその場をあとにした。
昼と夜の均衡が崩れる?そんなことあってはならない。
シノビはいつだって陽の射さない暗い世界から、人を護り人と共に生きてきたと先生は言った。1度乱れてしまえば昼の人々は一生夜に怯えることになるだろう。
私がこの事実を広めたところで信じる者は少ないし噂を広めた私が消されるだけ。
…誰も信じることはできない。
シノビの世はそういう風に回っている。昨日まで友人だった者と殺し合いをしなければならないことなんて普通だ。
「友達だと思っていた。」ではない、「忍務だから殺さなければならない。」のだ。
そんな世界で他者を信用して生きるのは、気狂いのすることだろう。
でも。それでも…。
私の大事な、お弟子ちゃんなら。あの子なら気づいてくれるかもしれない。
シノビになる前から人を疑って生きてきたからこそあの子なら、真に信用できる人を見つけて、私のように抱えずに解決ができるかもしれない。
焦りながら家に着き、乱れた息を整えて机に向かう。
机の引き出しに手を突っ込み、1冊のノートを取り出す。表紙にはただ『日記』と名前だけを記した。
いつかあの子じゃなくてもいい、私の想いを継いでくれる誰かが開けてくれると祈りながら一つ一つ見てきた事実を紡いでいく。
世界が壊れる前にこの日記が見つかりますように。
『シノビガミ-ひとりぼっちの想いを抱えた少女の話』
この世界は
この世界は不条理に満ちている。
夢を見てたい
思えば幼い頃から双子とかきょうだいのことを羨ましく思っていた。
それは多分、親の影響だろう。
私の親は私に呪いをかけた。
「お前は陸上で世界を取れる。」「父さんには出来なかったことだぞ?誇らしいと思わないのか?」
「私たちは男の子が欲しかったの。」「だから貴女に『小華』と名付けたのよ。」
「「期待に応えてくれる?『小華』」」
そう言われ続けた私は、本当は髪を伸ばしたいのに短くして続けたくもない陸上を無理やりやらされていた。
ずっとこのまま