冷凍庫が壊れたからアイスを一ヶ月も食べていない。家まで持ち帰れる暑さにも中々ならない。残暑だって。でも秋分が来たよ、って。今秋なんて呼んだら向こうだってちょっと気まずいって思うよ。
救急車のサイレンを聞くことが減ったなあ。秋がもし今年は来るのなら、近くの公園にピクニックに行ってみたいなあ。思ってるだけじゃなくってさ。
秋口の恋は続きやすいって噂の当事者になることなんてたぶん一生ないけど、それでも秋は美味しいし結構好きだ。こっくりと熟れた果実みたいな色が街を覆って、今が一番食べごろだよって教えてるんだ。
マスカット味の板ガムを柔らかくなるまで噛んで、甘酸っぱい気持ちみたいな作りものの味で心を満たした。花はなんで咲いたら枯れてしまうんだろうね?
「だめだよ。さいごばかり見ていたらほとんどを見逃してしまうでしょう」
うさぎが月でついてる餅は誰が食べるんだろうね。大福の中に入ってる果物って酸っぱくないですか。ぷちゅっとあふれる果汁が痛みみたい、でも嬉しくて、いたみだして潰れちゃう心を、大事にしたい。
わあ、幸せ!鍵を探し当ててしまった。旅の結末を迎えて扉がきぃと開いてしまったみたいだ!これがエモーショナルの頂点だね。上がりきってしまえば下がる温度。ああどうか時間よ止まれ!積み木を崩さないで!
不安定だ。ミルク溜まりの迷宮を指先のスプーンで転がした、砂糖よりははちみつが好きだ、このときは。夢見る獏みたいに眠りに矛盾を抱えてしまうけどほんの人生を歌うように鳴らす銀のベル。
おさない夢は覚めてそのことを嘆くばかりしないで、手のひらに握った一番星でふわふわのクリームを買おう。それでがんばってかき混ぜて、とびきりのケーキを贈りましょう!そんな素敵な未来が来るから!終わりなんかじゃないから!!
夜景と言われてビルばかりが浮かぶ脳裏にすり替わったから、蛙の鳴く夜道を携帯もなしに歩く退屈にはもう耐えれないかな。あのころ、水辺にはさ、蛍が飛んでいるところがあったよね。
光が敷き詰められた碁盤の中にはあまさず人間がいるんだね。勤勉は美しい。でも苦しみはそんなに好きじゃない。だから缶コーヒーがまだ飲めない。午後の紅茶が好き。
ずっと一緒に。あかるい歌とやさしさで踊ろうね。
隔たった時間に鍵をかけて箱庭を守ろうね。
先立った季節の風が吹いて、遠のいていかないで。
木々が色付いて、また芽を出して…訪れを愛そうね。
春風に押されて揺れるブランコ、桃色の白昼夢。
染み付いた記憶を口にしないように、よく手を洗おうね。
(本当はどこまで行けるんだろう)
そんなこと言わないで。
春めいた花色のカーペットに出会いだけを数えようよ。
おしまいの調べにまわるはなびら。
大人になっちゃったね。