始まりはいつも
毎朝の「おはよう」や、毎晩の「おやすみ」はないけれど、そろそろ話したいなと思うタイミングで話しかける。「何してるの?」とストレートに聞くのは緊急性があるように感じるし、監視してるようで重たい気がするから、まずはじゃんけんを挑んでみる。そして、「電話したい」と素直に言うのは恥ずかしいからお決まりのスタンプを送り合う。まるで素顔を隠して相手の様子を伺い突撃のタイミングを見計らうハンターのような気分になる。会話の始まりはいつも慎重になっちゃうけど、話し始めれば夜中から次の日の夕方までずっと。いつか、じゃんけんもスタンプも必要なくなる日が来るのだろうけど、それも寂しいね。
あなたは私と似てるから、選ぶ単語や吐息や表情や間で全部わかるの。そして、あなたには私の言葉が誰よりも正しく伝わっているのもわかってるの。だからね、私はあなたに「大好き」って言いたいけど、あなたには「離れないで」と聞こえちゃうから言えないの。あなたと私は似てるのに、あなたはこんな感情を抱かないんでしょう?私があなたに支配されてるのと同じくらい、私もあなたの心臓と脳を支配したいのに、あなたは私を信じすぎてる。少しは疑いなさいよ。
あなたのことよくわかるのに、誰よりもわかるのに、一番理解できて、理解できることがうれしくて、それがきっかけで、そこが好きだったのに、今は一番あなたがわからない。隠しててもいいから、転がされてあげるから、せめて同じ感情でいて。
片手間で見た進撃の巨人。全ての記憶を消してもう一度最初から丁寧に見たい。なんてことをしてしまったんだ。何年経っても完全には消えない気がする。あーーー
母が優しく抱きしめてくれているような温かな15時の光が大好きだった。姉が保育園から帰ってくるのを待つ15時。私は毎日母と光に抱きしめられてお昼寝をした。
三限が終わりミスドを買って家に帰った。抱きしめられてお昼寝していた15時に、今、母とコーヒータイムを楽しんでいる。やわらかな光を浴びながら、ふとあの時の記憶を抱きしめ返した。
姉の部屋
一人暮らしの大学生の姉の部屋。母と一緒に遊びに行くと私は部屋に残された色恋の痕跡を必死に消す。ベランダに干された大きめのTシャツ。お堅い母の眼が鋭く光る。鋭い視線がTシャツに穴をあけないに背中で守る。
姉よ、妹の痕跡には気づけ