共働き家庭で育った私は小学生から家事を手伝ってきた
中学になる頃には夕飯の下準備なんかもお手のものだった
いつもように学校から帰って家事をして、その日は連日のテスト勉強で疲れてたせいもあってひと通り家事を終えてうたたねをしてしまった
どのぐらい眠っただろう…目が覚めると手に違和感を感じてふと見ると小さな箱が乗っていた
するとお母さんが台所から「やっと起きた…開けてみて」と微笑んだ
私は訳もわからず箱を開けてみた
するとそこには私が欲しかった腕時計が入っていた
私は嬉しくて母の方を見ると「今日お誕生日だね、おめでとう、いつもありがとう」と優しく言葉をかけてくれた
私は早速腕に当ててまだ皮のベルトがかたい腕時計をつけてみた
その華奢で女性らしい腕時計を惚れ惚れしながら眺めた

あれからもう何年の月日が経ったかな…
まだその腕時計は私の手元にあります
これからもずっと大事にします

今も覚えている
一生忘れないのではないかと思わせてくれる鮮明な記憶、湿度や温度、匂いや音、手の大きさや形、その温もり
よくドライブの途中で車を停めて一緒に星空を眺めたね
このまま時間が止まればいいのにって苦しいぐらい願ってたよ

地位も名誉も手に入れた
それを望んでいたはずなのに
もうあの頃のようには生きれない
戻れないんだと思い知る
その辺をうかつに歩く事もできない
深海の魚は浅瀬では生きられないんだ
もし、ここではないどこかに行けるなら
もう一度だけ…

君と最後に会った日
ジャングルジムの上で話をしたね
君は私の目を見て「何か夢を持ってみたら？」と言ったよね
うつむいたまま「夢なんて持てないよ、私には取り柄もないし…」と言う私に、君は私のいいところをたくさん教えてくれたね

君は何にでもチャレンジして世界を広げていったんだね
夢を叶えたって友達伝いに聞いたよ

私も君がいたから夢を叶えられたんだよ
今も夢を探しているよ

来ると思ってる一年後
それは約束されているわけじゃない
今この瞬間を生きていることの尊さを感じずにはいられない
なにも当たり前じゃないんだ
感謝する気持ちが湧いてくる