『言葉はいらない、ただ…』
生きていてさえくれればいい
少しでも 長く
そんな願いを
もう
何回してきただろう
今まで
一度も
叶ったことはないけど…
『突然の君の訪問』
「離婚してください」
まさか 突然
家まで君が押し掛けて
妻に
直接そんなことを言うなんて
妻が
どんな反応をするのか
戦々恐々としながら
聞き耳をたてていると
「いいわよ」
渇いた声が聞こえた
背筋に冷たいものが
スーっと落ちる
「あなた、お迎えが来たわよ」
笑顔なのに
目が笑ってない
「荷物と離婚届はすぐに送るから、後は弁護士にお任せするからよろしく」
そう言うと
「それじゃ後はよろしく」
「はい。ありがとうございます。」
すでに女同士で話はついている
いったりいつから この2人は
突然の君の訪問で
僕は家を追い出され 全てを失い
妻は僕への恨みを晴らし
君は
まんまと望みを叶えた
『雨に佇む』
この罪も汚れも
すべて洗い流して
過去も何もかも
忘れさせて
どしゃ降りの
雨に佇む
意味もなく
許されるはずないことが多すぎる
私の人生
これで良かったんだっけ?
ぼんやりした不安や
不満を抱え
それでも 平凡に暮らしていた
はずなのに
どこで間違ってしまったのだろう?
やまない 雨に佇み
もう
終わりにしようと
再び
崖の下を覗きこむ
『私の日記帳』
毎年 新年になると
新しい日記帳を買う
買う前は
書く気満々だけど
買っただけで満足して
結局
真っ白いままの日記帳が
増えていくだけ
そう言えば
小学生の頃
夏休みの宿題の絵日記
ギリギリまでやらなくて
最終的に
母親が書いていた
妄想は好きだけど
現実を文章にするのは
子供の頃から苦手みたいだ
にもかかわらず
私は
今年も 新しい日記帳を買った
そして
相変わらず
真っ白いままの日記帳
ホコリをかぶって
部屋の隅
『向かい合わせ』
背中合わせは向かい合わせ
あの娘の歌声に
ハッとした
昨夜も背中に感じた
あなたのぬくもり
向かい合わせでいる時より
なぜかドキドキした
なのになぜ
「ごめん」
の一言が言えない