『モンシロチョウ』
今日 あの人と最後のお別れに
心残りはあるだろうが
どうか 安らかに
迷わず 天国に
そして できれば
時々は
愛する我が子たちの元へ
白い蝶にでも姿をかえて
いつも 変わらず側で見守っていると
伝えに来てやってくれないかと
そんな願いを込めて
最後の花束をたむけた
『一年後』
来年のことを言えば鬼が笑う
ということわざがあるが
昔のことを言うと鬼が笑う
ということわざも
あるらしい
予想できないことを
あれこれと
気に病んでも意味がないということなのだろう
明日さえ
どうなるかわからない
この状況で
とにかく
なんとか
今日という日を
生きぬく手段を模索する中で
一年後
なんて 言われてもねぇ~
何も 浮かびはしないですよ
『明日世界がなくなるとしたら、何を願おう』
どうか、誰ひとり 何ひとつ
取り残すことなく
全部が全部
きれいさっぱり
消え失せて
なくなってしまいますように
『君と出逢ってから、私は…』
色々考えて、迷って、悩んで
それでも、やっぱり
夢をあきらめることは
できなかった
たとえこの町を離れて
たとえ二度と会えなくなっても
それでも必ず叶えたい
そう思える目標を見つけたから
それは
キミ
君と出逢ってから、私は…
キミを尊敬し
キミに憧れ
キミの様になりたいと思った
愛情とか
友情とか
そんなものとは違う
別の感情が芽生えた
だから
さようならは言わずに
旅立つ
また いつか会おうなんて
約束もしない
いつか必ず
君を越えて見せる
『大地に寝転び雲が流れる…目を閉じると浮かんできたのはどんな話?』
智恵子は東京に空が無いといふ
ほんとの空が見たいといふ
私は驚いて空を見る
桜若葉の間に在るのは
切っても切れない
むかしなじみのきれいな空だ
どんよりけむる地平のぼかしは
うすもも色の朝のしめりだ
智恵子は遠くを見ながら言ふ
阿多多羅山の上に
毎日出ている青い空が
智恵子のほんとの空だといふ
あどけない空の話である
「あどけない話 高村光太郎」