【こぼれたアイスクリーム】

今日は私の大好きなお休みの日。
お気に入りの白いワンピースとパンプスを履いて、首には小さなカメラだけをかけて。

今は海開きも中盤で、たくさんの人が海水を楽しんでいる。
浮き輪に乗る人や泳ぐ人、浜でBBQをする人など様々。

私の海へ来た目的は、そんな海で楽しんでいる人たちを写真で綺麗に残すこと。

潮風を浴びながら心を躍らせる私が止まった先は、浜より上に作られた石の塀。
浜から水平線までを一望できる絶景の場所で、私のお気に入り。

ときおり聞こえるエンジンの音を背景に、私は顔の前にカメラをかまえた。

スイカのビーチボールを投げ合う子供たちで1枚。
パラソル下に寝転がる女性と、座って携帯を触る男性で1枚。
売店で焼きそばを受け取る女性たちで1枚。

たくさんの思い出のワンシーンをこのカメラに収めていく。
するとふと近くの浜でアイスを持った少年がいた。

キラキラとした目で手元の甘味を見つめる顔は、とても可愛らしく尊く思え、すかさずカメラのシャッターを切る。

すると、私がカメラを下ろすより早くその子の泣き出す声が聞こえた。

そっとカメラを下ろすと、からになったコーンと手に垂れる茶色い液体。
そして地面には、形が崩れ飛び散るアイス。

大人になれば正直どうって事ないこぼれたアイスクリーム。
それを悲しそうに、悔しそうに泣くその少年が私にはとても愛おしく見えて

また私はシャッターを切った。