たそがれ……。
たそがれを感じたことなど、あっただろうか?
あのゲス女に、台無しにされた人生。そんな洒落た言葉なんて、忘れていた。
人のおもいを躊躇いもなく踏みにじった売女……犯罪者・今井貞夫の娘、人でなしの今井裕子。
たそがれ……。
最近は、陽が落ちるのが早く、たそがれ時もあっという間。逢魔が時が、辺りをすぐに包み始める。
きっと明日も……。
きっと明日も、今日と同じ、面白味の無い人生だろう。
あのゲス女の所為で。
人のおもいを躊躇いもなく踏みにじった売女……犯罪者・今井貞夫の娘、人でなしの今井裕子。
きっと明日も……。
昨日も今日も、同じだった。きっと明日も……。
それなら……、いっそのこと。
静寂に包まれた部屋……。
誰も居ない。ネコさえも……。
病気になっても、濡れタオルを絞って額に置いてくれる者も居ない。
死んでも、発見されるまで最悪2週間もある。
こんな人生を歩ませたのは、あのゲス女だ。
人のおもいを躊躇いもなく踏みにじった……犯罪者・今井貞夫の娘、人でなしの今井裕子。
静寂に包まれた部屋……。
時計の秒針の音が、はっきりと聞こえる。
屋根を走るカラスの足首が、必要以上に煩わしい。
別れ際に……。
別れ際なんてものは、無かった。人の人生を台無しにして、逃げるように居なくなった、あのゲス女。
人のおもいを躊躇いもなく踏みにじった売女……犯罪者・今井貞夫の娘、人でなしの今井裕子。
別れ際に……。
粋な台詞を口にして、ウインクをキラリ。
そんなシーンに憧れるな。
通り雨……。
人生に降っている雨は、いつ止むのか? 通り雨にしては、永すぎる。
あのゲス女に台無しにされた人生は、もうもとには戻らない。
人のおもいを躊躇いもなく踏みにじった売女……犯罪者・今井貞夫の娘、人でなしの今井裕子。
通り雨……。
夜の新宿、裏通り。肩を寄せ合う、通り雨。
この頃は、歌が三番まであったんだよなぁ。