何か手元が暗い、と言うか世界が暗い。
何だあ周り全部が暗いじゃないの、何か目が悪くなったのかと思った。
えっ停電?
真っ暗の中、手探りで玄関に出てみると周りどころか町全部が。真っ暗だった!
確かに、凄い台風だったがこんな事になるとは。
それから、大変な数日を迎える事になるなんて。
思いもせずに、真っ暗な空を見上げると凄い星の数。周りが暗いせいで、満天の星星束の間の天体ショーだった。
不謹慎だが、感動してその夜の星は忘れない。
ふわ〜と、いい香りが漂ってくる。
何処からだろうと、鼻をクンクンさせて香りの漂う方に目を向ける。香りの元が何なのかと追跡してみたら、なんと足元の飼い猫だった。
抱き上げて、匂いを嗅いでみるいい香りがする。なんの匂いか、すぐに解決した。アンタ、紅茶テーブルから落としたでしょ!キッチンがいい香りで充満してる!
何でも深く考えないで生きて来た、あの人と暮らしてだいぶ立つが。何で結婚したのかも定かでは無い。のりなのか、勢いなのか?
でも、この頃考えるこれで良かったのか、悪かったのか。
ね〜、大丈夫?あ〜大丈夫だよ。
最近の合言葉!ね〜、あ〜!
雑踏の中を歩いていると、誰かに似ている人にすれ違う。
何時も思うのだけど、こんな都会に居るはずのない人々の顔が雑踏の中に居る。
世の中には三人似た顔の人が居るらしい。テレビを見てても似てるいや、同じ顔の人が出てる。
あ〜懐かしいな、このおじさんには怒られたなぁ〜とか。
このおばさんには、優しくしてもらったなぁ〜とか。
自分より若い人達なのに、不思議でならない。たまに、友達も出てくる、あ〜子供のままの顔だ!不思議でならない。
長雨が止んで、雲の隙間から暖かい日差しが差し込めている。病室の空気が少し和らいだように、皆が窓に目を移す。ベッドにいる人は、至って平気そうに微笑む。
今、医師から言われたことが嘘のように微笑む。
母は、崩れ去りそうな気持ちを支える様に硝子に触れる。
本当に綺麗な光の渦に、身体を預けて倒れ込む!
行かないで、まだ何も返せてないの!と呟く小さな私。