クリスマスの過ごし方
クリスマスの過ごし方だと? おい正気で聞いてるのか? うん。マーブリィ紙の囲み記事コラムに書くのか? まあわかった。いいよもう怒らんからそのへんでケーキ食ってなよ。残りたくさんあるぜ? なんならチキンもあるから食っとけよ。で、クリスマスの過ごし方? ここに取材に来たんだから少しは聞いてるか? ここでクリスマスの過ごし方を聞いちゃいかんのだ。なぜか俺に聞くな。ここでクリスマスの過ごし方を聞くとだいたい呪われる。新年早々犬のクソ踏むとかそんくらいだから気にするな。以前呪われたやつもピンピンしとる。まあ気をつけて、良いお年をな。…いきなりやってるなあ、なんで自分で開けたドアに頭をぶつけるんだか。
大空
輝かしい金管楽器の音が
フォルテのまま終わる
きらきらする残響は
青い大空に解放されてゆく
音楽は終わってしまう
いつもいつも必ずどんな音楽も
残されるわたしは
大空に解放された音をうらやむ
でもわたしのなかで
途切れず続く音楽がある
この呼吸 そして心音
いつかわたしという音楽も終わる
終わったあとのわたしは
あの大空に解放されるだろうか
ベルの音
ベルの音が聞こえる
自転車のベルのような気がする
それにしても何度も鳴る
今は真夜中でここは2階なのに
やっぱりベルの音が聞こえる
むしろ近づいてきた気がする
もうほとんど窓のすぐ下で鳴る
立ち上がって窓を開ける
道路を見下ろすけど誰もいない
何もいない 見えない
でもベルの音が聞こえる
窓を閉めて布団に入る
何かがもぞもぞ動く気配
耳元でベルの音が聞こえる
寂しさ
ひとりで家にいるから寂しい
というのはありきたり
都会の喧騒の中で寂しい
というのもバリバリ既視感
寂しさに貴賤はないとする
軽重はあるとする
浅薄深慮があるかは知らない
寂しさと孤独の関連は後ほど考慮する
さて私は冬の夜空を見上げ
昔習い覚えた星座を探す
おうし座のプレアデス星団を探す
寂しさを味わいたいなら
冬の夜空を見よう
星でさえあんなに寄り添って光る
冬は一緒に
連絡は突然だった。何年連絡していなかっただろう。自然消滅したはずの昔の恋人からのLINEに私が反応してしまったのは、つまり、失恋したばかりだったからだ。久しぶりだね〜と返すと、冬は一緒に過ごさない?と言ってきた。なんか知り合いの別荘を借りられるので泊まらないか?とのお誘い。ちょいと悩んだが出かけることにした。直近の失恋より昔の恋よ再び。約束の別荘に着くとそこは葬儀会場だった。戸惑う私の耳元で何かが囁く。冬は一緒に過ごそう? 血の気が引く。目の前が暗くなってゆく。私死ぬのかな。死ぬんだろうな。