19歳 誕生日の夜
バイトから帰ると冷蔵庫にあったホールケーキ
私の大好きな苺がたくさん乗っていた
その苺たちを掻き分けるようにして
真ん中に飾られた大きなチョコプレートが
機械的な冷蔵庫の光に照らされていた
父とは高校生の頃から口を聞いていない
原因は些細なことから始まった大喧嘩
頑固でひねくれた性格はあいにく父娘そっくりで
時間が経つほど私達の距離は遠くなっていっていた
"19歳の誕生日おめでとう”
バイト連勤で疲れてたからかな
なんの捻りもない言葉だったけれど
愛情に殴られたような感情で、泣けた
『愛情』
大好きな人が私のものじゃなくなった
もう会いたくないと突き放されたのは3日前
私が重すぎたのは百も承知だったけど
彼も同じ分量で愛してくれていると自惚れていた
今日の朝も38度
3日連続の微熱にうなされて吐きそうだ
やはり最後のディナーで皿に毒でも盛られたらしい
解毒薬のない毒
『微熱』
隣のクラスのあの子はいつも綺麗だ
ニキビひとつない白肌は自然光が映える
あの子がハードルを飛び越える度、綺麗な黒髪が靡いた
数学の説明が何ひとつ頭に入ってこない
私は窓の外の光が眩しくて
思わず白いカーテンを閉めた
『太陽の下』
キャラメル色のセーターがタンスから出てきた
実に十数年ぶりの再会である
そういえば小さい頃、寒い日はいつもお気に入りのこれを着てたね
小さなセーターに縫われたクマの顔が
あなたの小さかった頃の笑顔を思い出させて
ちょっと笑ってしまった
今年も寒い冬がやって来ます
意地っ張りで泣き虫で我儘で
でも何より
誰よりも心が暖かくて優しいあなた
これはきっと親馬鹿なんかじゃない
大雨の日、ぐったりした子猫を抱えて泥だらけで帰ってきたあなたを私はずっと忘れません
次の日にはしっかり熱を出しました
心優しいあの子の人生に眩しい光が満ちていますように
寒い思いをしませんように
あの子の暖かい心が冷えてしまいませんように
一生の願いをここで使います
『セーター』
この世界は広くて自由で案外素敵
『空を見上げて心に浮かんだこと』