終電なのにいつの間にか眠ってしまったようで、車掌から終点の合図が響く。
ただの暗闇の中、何も無い駅に置いてかれた私はどこかにタクシーがないかを探しに駅前へと飛び出した。
タクシーどころか人っ子1人いないその駅は、まるで都会から電車一本とは思えないほど静かだ。
アプリからタクシーを呼び出そうとしたら、圏外だった。
−−−それどころか、スマホの挙動がおかしい。
磁場が乱れているのだろうか。いくらタップしても反応しない。必死に押していたら終ぞ電源が切れてしまった。
−−−背後からカラスの鳴き声が聞こえる。私は思わず身震いをして、どこか泊めてもらうところがないかを探すことにした。
幸いにも近くに交番があったので、そこで訳を話そうと足を運ぶ。
灯りはあるのに人は居ない。何故だ。
「誰か居ませんか〜?」
おかしいと思い、そう呼びかけ辺りを見渡すと、
−−−ガラス越しに、黒い塊がこちらを見ていた。
上手くいかなくたって大丈夫。
失敗したってそれがいつか必ず人生の糧になる。
その後悔すらも経験として次に活かせば、成功への一歩を歩み出すであろう。
蝶よ花よと育て上げた我が愛娘が、今日、結婚する。
書類だけで結構だよと娘は言い張っていたけど、白いウエディングドレスに身を包んだ彼女は、とても綺麗だった。
感謝の言葉で、思わず涙が溢れてしまった。
パパ、ママ、育ててくれてありがとう。
その言葉だけで、ああ、私たちはこの日のために育ててきたのかと、想いが走馬灯のように蘇ってきた。
結婚おめでとう、これからもよろしくね。
運命なんて、最初から決まっている。
そう考えると無慈悲のように見えるけど、どこか安心するような気もする。
結局、人間は死ぬものだから。
だから、楽しく生きるために皆が身をやつしているのだ。
真っ赤な太陽が地面を照りつける。
その焔のゆらめきは、幾たびとも途絶えることはない。
それを背に我々は。
常に太陽に生かされていると言っても過言ではない。
過酷と思うのなら、それは試練の時だ。