遠くの空へ、思いを馳せる。
就職を機に上京したけど、地元の友達たちは元気にしているのだろうか。
今はスマホもあるし、電波さえ通れば連絡は取れるけど、みんな結婚とか子供とかなんとかで忙しそうだしなんかちょっと躊躇しちゃう。
でもみんな、ふとした時に同じ空を眺めてるといいなぁ。と期待してみる。
繊細だと、よく人に言われる。
意図はよくわからないけど、きっとめんどくさい人だと思われているのだろう。
好きで繊細に生まれたわけじゃないのに。と心の中で唱えながら
わたしは言葉にできない思いを抱えて生きている。
桜の季節って、なんだがいつも慌ただしくしてたら終わっている気がする。
今年だってもう桜の木に緑が出始めたし。
お花見し忘れたなーって思うけど、春はそれだけじゃない。
チューリップにツツジの花に、一面のタンポポ
春はまだ、始まったばかりだ。
誰よりもずっと、好きだった。
教室で隣の机に座る、笑顔が眩しいキミのことが。
でも、キミは私の思いに気付いていない。
だって、まだ言葉にしていないのだから。
なんでかって?
正直なことを告白して、ダメだった時が怖くて仕方がないからなんだ。
私って、いくじなしだなあ。
でもこのまま、好きのままでいさせて。
市の役所の待合室でキミと待っている。
普段は手続きなんてめんどくさいことこの上ないのだが、今日に限っては僕もキミもどこかソワソワしている。
手に持つ書類には、同じ苗字の書かれた届出。
そう、僕らは今日、結婚するのだ。
僕らの番号が呼ばれる。手続きは案外シンプルに終わり、逆に拍子抜けするほどだ。
しかしこのあと残っている免許とかマイナンバーとかの手続きの残り時間が大丈夫なのだろうか。
僕は焦るように時間を確認していたら、突然肩を叩かれた。
「これからもずっと、よろしくね」
キミは書類を仕舞いながら、笑ってそう言った。