桜の季節って、なんだがいつも慌ただしくしてたら終わっている気がする。
今年だってもう桜の木に緑が出始めたし。
お花見し忘れたなーって思うけど、春はそれだけじゃない。
チューリップにツツジの花に、一面のタンポポ
春はまだ、始まったばかりだ。
誰よりもずっと、好きだった。
教室で隣の机に座る、笑顔が眩しいキミのことが。
でも、キミは私の思いに気付いていない。
だって、まだ言葉にしていないのだから。
なんでかって?
正直なことを告白して、ダメだった時が怖くて仕方がないからなんだ。
私って、いくじなしだなあ。
でもこのまま、好きのままでいさせて。
市の役所の待合室でキミと待っている。
普段は手続きなんてめんどくさいことこの上ないのだが、今日に限っては僕もキミもどこかソワソワしている。
手に持つ書類には、同じ苗字の書かれた届出。
そう、僕らは今日、結婚するのだ。
僕らの番号が呼ばれる。手続きは案外シンプルに終わり、逆に拍子抜けするほどだ。
しかしこのあと残っている免許とかマイナンバーとかの手続きの残り時間が大丈夫なのだろうか。
僕は焦るように時間を確認していたら、突然肩を叩かれた。
「これからもずっと、よろしくね」
キミは書類を仕舞いながら、笑ってそう言った。
夕日に手をかざしてみる。
オレンジの光が、やけに暖かく見えてとても綺麗に映る。
いつも帰りは夜になってからだから、この休日の夕焼けがやけに特別に見えて。
その優しい光に包まれる感覚に懐旧の思いを抱えた。
ーーゆうやけこやけでまた明日。
明日も、また会えるといいね。
突然だけど、キミはメデューサなんじゃないかと思ってる。
え?わたしはそんなモンスターじゃない?あぁごめんごめん。そんなに怒らなくてもいいじゃないか。
だって、キミのその美しい瞳を見つめたら、僕は固まってしまうように緊張しちゃうからさ。