君と何時から会ってないかな。それでも連絡は頻繁に取り合っていたし、お互い元気だという報告も必ずしていた。そしてお互い、毎回こう誓う。
「また、いつか絶対会おう、あの祭りに一緒に行こう」
家庭の事情で海外に行った君。国境という川が僕らを隔てているように感じる。こんなに連絡を取っているのに、直接顔を合わせられないもどかしさと、こんなに近く感じているのに、川の流れが邪魔で渡れない苦しさから逃れられない。
今夜は七夕。天の川を隔てた2人が1年に1度だけ鵲の渡す橋を渡って会うという、伝説の夜。本来は学業などの上達を願うものらしいが、きっと織姫と彦星にはこのどうしようもない気持ちがわかるはず。笹の葉に願いを込めた短冊をそっとかけた。
星に願いを。
急な夕立なので、小さな折り畳み傘で帰らなければならなくなった。
私は梅雨は大嫌いだ。
ずっと雨に降られている気がするし、心なしか気分も悪くなる。それに、偏頭痛も酷くなる。できれば梅雨なんて、1日でも少ない方が私はありがたい。
ふと道端の花を見た。
見事なほどに水色のあじさい。形容するなら、夏の昼頃の空の色。太陽が空の頂点にいる時の、透き通った青い空。
梅雨のせいで空はねずみ色の雲に覆われて、空が見えない日が続いていたけど、このあじさいの色が、私に夏が来ること、そろそろ空も見られると教えてくれたんだ、多分。
夕立は少し穏やかになり、雲の隙間から太陽が顔を出した。そして、虹がねずみ色の空を彩っていた。
もしも明日世界が終わるなら。
これはよくあるオカルトの類で、実際に終わる、なんてことが急に起きるわけではないけども、少し考えてしまう。
私は最後の日、何をするのかな。
大切な人と一緒に?
いつも通りに?
それとも、したい事全部するかな?
私はきっと、何も出来ないまま世界が終わっちゃうと思うけど。
私は、もしも明日世界が終わるならー
君と一緒にいたいかな。
最後まで一緒がいいな。
今日は暑い。まるで鉄板の上で焼かれているかのような暑さだ。そんな中、蝉は狂ったように鳴き続けているのでなかなかこれも鬱陶しい。
そんな日には、家の中にいるに限る。外に出たら、暑すぎて倒れてしまいそうだし。
まだ明るい六時、耳を澄ますと遠くから小さな子供たちの遊ぶ声が聞こえる。きっとそろそろ家に帰る時間だろう。
夕焼けはひたすら赤く、辺りを照らしている。
ヒグラシは、ここぞとばかりに、切ない声で鳴いている。
あの日、帰り際に友達と見た夕焼けを思い出した。
あの日も暑く、ヒグラシは鳴いていた。
きっと明日も、夕焼け空に向かって切ない合唱が響くだろう。
幼なじみのあの子、いつからか疎遠になってしまった。久々に会ったけど気まずくて、私からは声をかけられなかった。
「随分印象が変わったよね」
私は高校になってから、眼鏡もコンタクトに変え、髪の毛は下ろして、わざわざ校則のない高校を選んで髪も染めた。そうしないと、私だけいつも浮いていたから。
「あまり無理しないでね」
君には分かってたんだね。でも、そんな風に優しくしないで。
私はずっと君に甘えてしまう。