十人十色、個性を大事に。
こんなことが叫ばれるようになった。でも、結局個性も何もないじゃないか。
出る杭は打たれる、なんて言うように、目立つ人ほどみんなに良くも悪くも使われていたり、変人扱いされている。
そんな風にしか考えられない私はおかしいのかな。
みんな同じ服を着て、同じメイクで、同じ曲を聞いて、流行りに乗れない人は置いていかれる。
私はいつも、取り残されてきた。
私が悪いのかな。
十人十色と言うのなら、一人くらい、私みたいに真っ黒な人がいてもおかしくないのに、カラフルな色彩にまざれない黒は認めないなんて、都合が良すぎる。
私は黒いことを理由に、今日も、明日も、一人でお昼を食べる。
この季節になると、ニュースで度々花畑の様子を写しては、いつ頃までが見頃とか、何種類咲いてるのかとか、とにかく花畑の情報を推している。
私は別に花が好きなわけでもないし、アウトドアが好きな訳でもないけど、こういう風に宣伝されると気になってくるものだ。
週末が空いていたので、この機会に最寄りの自然公園に出かけてみた。
花畑を見た瞬間、心が揺すられたような気がした。
その景色を見た感想を言うなれば、地上の楽園だ。
一面に、空のように広がる色とりどりの花々は、まるで私に微笑みかけているようで。
桃源郷に行けずとも、花は私を未知の世界に連れていってくれる、そんな気がした。
桜もとうに散りきって、葉は青々としている。あちこちに春の花が咲いている。
新芽の季節というのにぴったりだ。
河川敷のたんぽぽはすっかり綿毛に変わっている。
昔はよくこれを飛ばしていたものだ。まあ、それも私が小学校低学年くらいの話で、中学校に上がってからはその存在すら気にもとめていなかった気がする。
久々に一本抜いてみた。そして、風を待ってみた。
風は、綿毛をさらって行った。綿毛は風に乗って舞い上がり、青い空に無数の白いパラシュートが浮かんだ。
風に任せて、何処に行くのか。
私に少し教えて欲しい。
写真を撮るのが下手くそだ。
だからといって特に困るようなことはあまりない。せいぜい記念写真がぶれているくらい。
それに、私はあまり写真に興味がなく、触れずに生きてきた。
…のだが。
学校の長い廊下を歩く途中、写真部の展示が並んでいたので、あまり何も考えずに写真を眺めていた。
でもその中の一枚。満開の桜でもなく、鮮やかな色の鶯でもなく。深い青に満ちた夜空が、私の心に突き刺さった。特に星が好きなわけでもなかったのに。明るく輝く星の、瞬きの刹那をきり撮った写真に、私は夢中になってしまった。
結局私は、写真部に入ってしまった。親には怪訝な顔をされたが…。
私も、何かの刹那を切り取って、誰かの心を突き刺してみたい。
たった一瞬の瞬きを、永遠に残したい。
ここ最近、楽しいことが何も無い。
かといって自分から何かをするのは面倒臭いし、何をすればいいかも浮かばない。
ずっとこのまま生きていくのは正直辛いけど、かといって自分の命は捨てたくない。
惰性でスマホを眺めていたら、いつの間にか寝落ちしてしまったらしい。外は薄暗くなっていた。
また今日も何もしないまま終わってしまう。
今から焦り始めても遅い気もするけど。
ぼーっと外を見ていたら、上弦の月が沈みかけているのが見えた。
明日もいつもと同じかな、と思ってカーテンを閉めた。きっと、明日も私は空で輝く月をぼーっと見ることになるだろう。
生きる意味が見つかって、忙しなく過ごし始めたら、きっと月を眺める余裕もない。
…なら、今だけもう少し、眺めておこうかな。