もう一つの物語
(お題更新のため本稿を下書きとして保管)
2023.10.30 藍
暗がりの中で
やば、アラーム忘れた。今何時?
焦りで瞼を開け、幾度か瞬き。枕元のスマホを持ち上げると、土曜の午前4時を数分過ぎたところ。睡眠計測アプリを起動しないまま寝落ちてしまったと気づく。イベント週間は始まったばかり、明日から巻き返そう。アラーム設定、充電ケーブルを繋ぎ、睡眠計測開始。画面を伏せてひと息。
そっと上体を起こし隣へ視線を向ける。規則正しい寝息、伏せた睫毛の美しさ。何度見ても、飽きることも慣れることもなく、その都度新鮮にときめいてしまう。会う度〈好き〉が更新され、深く堕ちていくだけの底無し沼。
昨日は誰と寝たの?
明日は誰と寝るの?
気にしないと言えば嘘。正解を知る術は無く、聞こうとも思わない。今この数時間だけは私が独占する──私にとって〈推し〉である彼。個人的な繋がりを持つ今以上、何を望むことがあるだろう。私達の関係が切れるのは、彼から〈別れ〉を切り出すとき。次に会える日も直前までわからない、不確定事項だらけの歪な関係。彼を欲したのは私。
深夜の思考は良い方向へ行かないと知っている。
ヘッドボードに置いた、ルームサービスのミネラルウォーターを手に取る。ほとんど減っていない容器の蓋を開けて一口、飲み込むと知らず溜息が零れた。直後、もそりとシーツの擦れる音。起こしてしまったか。
「……いま何時」
「4時、くらい」
「よじ……? なんで起きてんのー」
「目、さめちゃった。お水飲む?」
「ちょーだい」
ボトルを差し向けると唇を尖らせ「飲ませて♡」素敵すぎる笑顔を寄越す。私が断れない、逆らえないと知って。それすら嬉しく感じてしまう、きっと末期症状。
ベッドに横たわったまま両腕を広げ「早くー」のんきに笑う最愛の推し。冷たい水を一口、含んだ。ガチ恋オタクの愛情に溺れてしまえ。
(了)
2023.10.29 藍 お題「暗がりの中で」
紅茶の香り
(お題更新のため本稿を下書きとして保管)
2023.10.28 藍
愛言葉
(お題更新のため本稿を下書きとして保管)
2023.10.27 藍
友達
(お題更新のため本稿を下書きとして保管)
2023.10.26 藍