彼はいつも曲を作るとき
スケッチブックに歌詞を書くんだけど
「今回のどう?」って時々見せてくれる
私は彼の考える歌詞が好きで
曲とかあまり詳しくないから
感想も対して参考にならないと思う
だから、直接伝えるのが恥ずかしくて
歌詞を書いてある裏のページに
邪魔にならないように
付箋に簡単なイラストと純粋に感じたことを
書いて貼り付けておくようにしている
次にスケッチブックを見せてもらったとき
前回の付箋がまだ貼られた状態だったから
気づいてないのかと思って自分で剥がしたの
もう見ないだろうし、裏面をメモ用紙に使えるかなと思って裏返してみたら
「ありがとう」って彼の字で書かれてたの
後で何で直接伝えないで
付箋の裏に書いたのか聞いたんだけど
「君がいつも付箋で伝えてくれるから、自分もそうした」「せっかく描いてくれたイラスト汚したくないし、君なら絶対裏も見ると思って」って
イラストなんて簡単なものしか描いてないのに
そんなふうに思ってくれててすごく嬉しかったし
ちゃんと裏返すって大事だなって改めて思った
〈裏返し〉
ねぇ、そこの鳥さん
彼にも貴方のように自由に飛べる翼をください
彼は病室という鳥かごの中にしかいることができないの
鳥のように美しい歌声は持っているわ
翼さえあれば
彼は貴方のような鳥のように
自由に旅立つことができるの
〈鳥のように〉
貴方の奏でる音楽はどれも素敵なものばかり
どの曲も貴方の言葉がリリックに込められている
私は貴方の音楽が大好き
ずっと聞いていたい
だから、
早く元気になって
私に貴方のリリックを聞かせて
〈君の奏でる音楽〉
彼の目が覚めるまでにやりたいこといっぱいあるよ
だって、彼ってば
御見舞に行くと
たまたま化粧をせずに行った日起きてるし、
手ぶらの日起きてるし、
オシャレしてないときに起きてるし、、、
あんまり可愛い姿見せれてないじゃんか
だから、彼の目が覚めるまでに
「似合ってる」って言ってくれた長い髪を整えたり
彼の好物を買ったり
おめかししたり
ほらね、やることたくさんあるの
だから、次に目が覚めるときは
とびっきり可愛い姿見せてあげるからね
〈目が覚めるまでに〉
もう何度目かわからないこの病室
彼が体調を崩したときは
必ずと言ってもいいほどこの病室だった
周りは建物ばかりで殺風景だけど
時々目覚める彼と
病室から見る夕日がとても綺麗な病室
〈病室〉