意味がないこと
角砂糖を口に放り込んだ
体温に溶かされて
じんわりと甘く滲んで
いっぱいいっぱいの愛が満ちて
あふれてあふれて
こぼれおちた
大粒の雨が次から次へ
一緒に落ちてゆく
大切な思い出が広がって
きらきらと反射して
大きな衝撃が走った
とくとくと注がれる奇異な眼差し
ガラガラと音を立てた灯火
割れたガラスが散らばった
接着剤には言の葉を
満たして満たして
元通り
蝕む私に気づかない
どく、どく、どく、どく
戻れない
すくおうとしたんだ
あなたとわたし
まぁ、お月様
今日は一段と輝いていらっしゃるのね
まんまるで、つやつやで
ぷかぷか漂うあなたはとっても素敵
あら、今日はお肌の調子がいいですって?
それは良いことだわ
わたしも今日は羽根の調子が良いのよ?
まってて、今あなたに見せてあげる
真っ白で綺麗でしょう?
あら、お月様
今日は氷菓子が溶けてしまったようなお顔をしているわ
そう、想い人にそっぽをむかれてしまったのね
思い詰める必要なんてないわ
あなたのような美しい方の魅力がわからないなんて
可哀想な方なのね
そうだわ、あなたのために歌を歌いましょう
わたしがあなただけを見つめられるように
サイリウムをお忘れにならないで?
もちろんお色は白一択よ
まぁ、お月様
そんなに小さくなってしまって
金平糖ほどの光になってしまっているわ
あら、目も合わせてくださらない
わたし、何か気に触るようなことをしてしまったかしら
そうだわ、わたしのこの白い羽根で
あっ、ええと、その
今日は少し、わたしも調子が悪くて
灰のような色になってしまっているのだけど
あなたの側にいて
抱きしめるくらい許してくださるわよね?
ねえ、お月様
今日は、どうして姿を見せてくださらないの?
ねぇ、お月様
わたしといる時間は楽しくなかったかしら
ねぇ、お月様
少しでかまわないから声を聞かせてほしいの
ねえ、お月様
あなたが褒めてくださった真っ白な羽根も
あなたからいただいた綺麗な輪の髪飾りも
髪も、瞳も、心も
ぜんぶぜんぶ
真っ黒に戻ってしまったの
堕ちてきたころの私に
あぁ、お月様
わたしの本当の姿をあなたは知ってしまったのね