『麦わら帽子』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
私にとってこの麦わら帽子は、大切なものなのです。祖母との思い出が詰まっています。幼い頃、私が気まぐれで農業を手伝うとき、祖母はいつも自分の麦わら帽子を私に被せてくれました。そう、この麦わら帽子です。見ての通り、使い古されてボロボロになった麦わら帽子は、幼い私には格好が悪いように思いました。でも、祖母は「やっぱり似合うね」と笑顔で言ってくれるのです。両親は共働きで殆ど家に居らず、祖父は早くに他界したしました。兄弟もいない。私には祖母しかいませんでした。だから、祖母がそうやって笑ってくれると私も嬉しかったのです。格好が悪いなんて思ったことに罪悪感があったくらいです。
そんな祖母が五年前に亡くなりました。老衰です。最期は住み慣れた自宅で過ごしたいという祖母の希望で終末期は私たち家族と過ごしました。そして穏やかに家族全員に看取られて亡くなりました。祖母の遺品を整理していると、あの麦わら帽子が出てきました。懐かしくて涙を流している私を見て、両親は私が持っているべきだと渡してくれました。
この麦わら帽子は今でも私の宝物です。この麦わら帽子を見ていると、昔のことが思い浮かぶのです。祖母の嬉しそうな笑顔が、あの私の全てだった日常が思い出されるのです。
いつまで経っても、私の大切な宝物なのです。
『麦わら帽子』
私の青春と言えば、あいみょんの「麦わらの帽子の君がー」っていうフレーズが鳴り響いていた。うん、マリーゴールドって歌の歌詞なんだけど。君を花に例えた素敵な歌だなって思った。多分、夏の歌なんだと思う。麦わら帽子といえば夏だし。とはいえ、夏に麦わら帽子を被る人なんてそう居ない。素敵な君に麦わら帽子を被せても、唾の広い帽子でも、ニット帽でもきっと素敵なんだろうなって思う。でも、夏!って感じるのはやっぱり麦わら帽子だなって思う。もうほぼ誰も被っちゃいないのに。
失ったもの。あの日の夜の蛍とか、みんなで集まった放課後とか、家の裏の駄菓子屋とか。想像するだけで、あの頃、あの季節を思い出させる。でも、もう今は無い。私はあの頃の蛍を、放課後を、駄菓子屋を知っている。だから思い出すことが出来る。きっと、麦わら帽子=夏もいつかの記憶なんだろう。たぶん、保育園かな。でも、将来のみんなが麦わら帽子って言葉を聞いても夏を想像できなくなるのはちょっと悲しいな。ブランコって春の季語だったっけ。
#麦わら帽子
生まれて初めてできた彼氏。
曖昧な関係になった人は前に何人かいた、
だから彼氏が出来たらこんな感じなんだろうなーって
想像はついてた。
だけど、全然違うの。
あってる時は毎秒ときめいてる訳じゃないし
エスコートしてくれる訳でもない、
「男らしい」と感じたことなんて数える程しかない。
だけどね、
君にならどんな話もできるの。
会いたい時に会いたいって言える。
話したくなったら電話ができる。
大好きって言ったら愛してるって返ってくる。
会えば会うほど好きになるし欲張りになる。
前はハグだけで十分だったのにもっと、もっとって
彼はまだ。1年後がちょうどいい。なんて悠長なことを言っている。
どうやら焦ってるのは私だけみたい笑
この話を周りにする度に本当に彼氏なの?
まるで中学生みたいな恋愛。
だなんて言われる。
それでもいいの。だってずっと一緒にいたら、いつかはするでしょ?
焦って先走る方がもったいない
もっと大事にしたいから
今を大切に、有意義に過ごそうと思う。
窓から見える銀世界。
その中にひときわ鮮やかに咲いたのは、ひとつの麦わら帽子。
少し歪な雪だるまの上に被せてあるそれは、悲しいほどに眩しく映った。
「これで良かったのかな、なーちゃん」
ぺしょりとこたつに突っ伏しながら独り言ちる。
私一人だけの家にはやけに響いて、いっそ窓を開けて雪に音を吸い取ってもらおうかと思った。
気付くと麦わら帽子に払ったばかりの雪がまた積もり始めている。
「なーちゃんはそのままにしといてって、言ってたけど……」
たまらずコタツを抜け出した時、プルルルルと無機質な音が家に響いた。
タイミングが良かったのか悪かったのか。
「……もしもし、伊藤です」
「あら~沙苗ちゃん!?帰ってきてたのぉ!」
「恵美おばさん、お世話になっております。あいにく家族は今出かけ」
「ね!最近どうなの!ちゃんと食べてる?仕事は順調?あ、彼氏はどうなの!」
麦わら帽子は紫外線をカットしてくれたり、
熱を反射してくれたりで、
熱中症対策になるらしい。
だから太陽の下で農作業中のおじさんも、新世界を航海する海賊王も、麦わら帽子を被ってるんだな!?
なるほど理にかなってる。
とはいえ自分が被るとなったら結構ハードルが高い。
どこが?と思うかもしれないが、
つば広の麦わら帽子を被る女子は美人なんやろな、っていう勝手なイメージがあるから、
白いワンピース着てな笑。
ハードル高いよ、勇気いるよ、麦わら帽子。
そもそも帽子というアイテムをコーディネートに取り入れてる人はお洒落上級者だよ。
むろん、それも自論だが。
だから、そうだな、熱中症対策なら日傘がいいな。
……て、日傘も、それはそれで上級者アイテムな気がするな苦笑。
【麦わら帽子】#38
『とある彼女』
彼女はいつも、夏に麦わら帽子を被っていた。
笑顔がとても素敵で、あの、白いワンピースと向日葵が似合う女性だった。
その人が、この世の人ではないのだと気付いたのは、知り合ってから少し経った頃だった。
「そういえば、ユリさんってどこらへんに住んでるんですか?」
「んー、今はもう無いけれど…向こうの方よ」
「今はもう無い?」
「そう。私、貴方と普通に話しているけど、言ってなかったことがあるのよね」
「なんですか?」
「私、……約、20年前に死んだの。
結構ニュースになってたんだけど、まだ君は生まれてないかもね」
彼女が言うのは20年前の、一家殺人についてだった。父、母、三人の子供が就寝中に殺された、無差別殺人。その被害者だと言う。
「…………そんな」
僕は正直、彼女に恋をしていた。だからショックだった。居ない人だとは思わなかった。
お題:《麦わら帽子》
一番初めに浮かぶのは、夏
暑い日差しの中、上を向く向日葵と同じ方を見る少女
その少女が被っているそれは風にさらわれそうになるが、
少女の細い右手がそれを阻止する
朝起きてラジオ体操に向かう。
今日もあの子は赤いリボンの麦わら帽子。
僕はいつもその子の斜め後ろで体操する。
この夏休みの体操が終わる頃までには
話しかけられると
いいな
ひまわり畑の真ん中に
麦わら帽子の影一つ
少女の小さな笑み一つ
3年前の真夏の日
昨日訪れた畑には
焼けて爛れた影一つ
ただ一つ小さな思い出
彼女はもうこの世にいない
......3年前、ここを焼き払って去っていった戦闘機のエンジン音を、私は一生忘れない。
【麦わら帽子】
私は夏になると、麦わら帽子を作る爺さんを思い出す。
そう、最後に会ったのは猛暑だった。
ジリジリと焼けつく暑さと蝉の声がうるさくて、私はいつものように爺さんの家に転がり込んだ。
昔ながらの平屋。
縁側にゴロンと横になって景色を眺めると、緑の茂った山と青い空のコントラストはなかなかのものだ。
「おや、また来たのかい」
家の持ち主がやってきた。
愛想のいい、腰の曲がった爺さんだ。
私は片手をあげ挨拶すると、ふと彼の頭に視線をやった。
この家の爺さんはよく麦わら帽子を被っている。それが私にはどうにも不思議でたまらなかった。
人が帽子をかぶるのは珍しくない。問題はそのデザインだ。
彼の帽子は鍔が広く、花柄のピンクのリボンがついていた。
「前から不思議に思うが、なぜ爺さんはその帽子をかぶるんだ? 花柄は女物なのだろう?」
私は、水を差し出してくれた爺さんに思わず尋ねた。
爺さんは少し驚いた仕草をしたが、すぐに帽子に手をやった。
「変かい? 俺は変とは思わないんじゃがね」
「爺さんが普通でも、私は変だと思うよ」
「ははは、おまえさんに変と言われる日が来るとは、驚きじゃなぁ」
爺さんは屈託なく笑うと、隣に腰掛けて帽子を脱いだ。
「この帽子はなぁ……婆さんのために編んだ帽子なんじゃよ」
話をまとめると、こうだ。
帽子屋を始めて一番最初に編んだのが、老婆さんのための麦わら帽子だったそう。
老婆さんが亡くなり形見となると、彼女を忘れたくないと持ち歩くようになったのだ。
「誰しも。自分の死より悲しいものがあるとするなら、誰かに忘れられることじゃないかと思ってなぁ」
爺さんが愛おしそうに麦わら帽子をなでる。
その言葉に、私は亡き親友を思い出した。
自害をした私の友。
自ら車の前に飛び出しての最後だった。
『消えたい』と、いう彼の最後の言葉は、『忘れて欲しい』という言葉によく似てる、と。
でももしかしたら、『忘れないで』という言葉の裏返しだったかも知れない。
「そうかも知れないね」
「ははは、おまえにわかってもらえるとは意外じゃな」
爺さんは呑気に笑い、また帽子を被った。
その帽子が、私はどうしようもなく羨ましく思えた。
「なぁ、爺さん。私にもひとつ帽子を編んでおくれよ。そいつとお揃いのやつでいい」
「おまえさんにかい?」
「変かい? 私は変とは思わないんだがね」
私の言葉に爺さんは、声をあげて笑っていた。
そして私の帽子が、彼の最後の作品となった。
それ以来、毎日のように小さな麦わら帽子を被る。
私のような『猫』が帽子をかぶるのはおかしいかい?
だが、私は変とは思わない。
帽子の中には私の思い出が、たくさん詰まっているからだ。
麦わら帽子のあの子は、今日も寂しそうに川を眺めている。
その子は、雪のように肌が白く、炭のように黒く染まった髪をしていて、真っ白で薄手のワンピースを着ていた。
年齢は10代といっていいだろう。
その子は、人からは透明人間扱いをされていて、いつもひとりぼっちだったと言う。
そのせいか君と僕は妙に相性があった。
彼女が嫌いな色は赤色で、嫌いなタイプは目がつり目になっている人、そして嫌いな場所は、神社と道路らしい。
そして、いつも帰るときには、「もう帰っちゃうの?寂しいよ、怖いよ、ねぇ明日も絶対来てくれるよね?、絶対に約束だよ」と言う。
しかし、君とだんだん仲良くなっていくたびに、周りの目がおかしくなる。
そんなある日、ある坊さんが僕にこう言った
「こりゃぁ、たくさんついとるな」って
ある日、出掛けていた家族3人のうち全員が交通事故でなくなったらしい。
夫婦ともに即死だったが、1人の女の子だけは、まだ生きていたらしく、苦しかったのかこう叫んでいた、「ねぇ、寂しいよ、こわいよ」と、その子を見るにはもう悲惨過ぎて見るに忍びなかったらしい。
真っ赤に染まったワンピース、真っ黒に染まった髪の毛、そして雪が透き通るように美しい白い肌
そして犯人の特徴は、つり目だった。らしい
涼しくなりましたか?
夏なので、、、
耳に触れる藁と髪
かさかさ ざあざあ さらさら
夏はこころもこんな音
転んでしまったからだろうか。膝に抱えた麦わら帽子はつばに解れているところがあって自分のすり傷よりももっと可哀想に見えた。私は泣き出した。誰もいない畦道だった。誰も助けには来なかった。やっぱり照りつける太陽だけが涙を乾かした。しっぽの生えた麦わら帽子を被り直してもう太陽の励ましなんていらないから、と言うように右足から走り始めた。誰もいない畦道だった。入道雲が青く見えた。私は走った。
お題「麦わら帽子」
夏のイメージのひとつに
麦わら帽子がある
イラストや歌の歌詞、写真にも出てくる
けれど私は被ったことがない
街中で被るのはもっぱら布地
幼少期ぐらいはと思っても
意外にも記憶にも記録にもない
理由を母に尋ねようにも
今は空の上
だからイメージの中のアイテムのひとつ
なんだか現実味のない
少し憧れもある夏の風物詩
麦わら帽子
私は、海の麒麟である海麟と申します。
私が王気を見出したあの人は麦わら帽子が似合う方でした。
麦わら帽子
夏の田舎、田んぼ道を歩いていると良く見かけていた。
日除けに良いのだろ。
しかも、ちょっとすずしそう⋯
麦わら帽子に憧れた。
真夏に向日葵畑に立つ、白いワンピースを着た少女が被る、あの麦わら帽子――ではなく、海賊の頂点を目指す少年が被る、あの麦わら帽子に。
昔から、男に混じって外で遊ぶのが好きだった。女の格好よりも男の格好をしてる方が楽だった。
ある日、海賊ごっこをした。公園の遊具を船に見立て、通りがかった動物をワニやサメに見立て、その辺に落ちているゴミを宝に見立てた。
船長役の子は麦わら帽子を被っていた。彼は、困っている友達をほっとけない、正義感の強い子だった。
そこへ、いじめっ子のガキ大将が公園を占領しようとやって来た。
船長はガキ大将をこの海賊団の宿敵だと言い、ガキ大将の前に立ちはだかった。宿敵のガキ大将は笑いながら船長を殴る。体格差は歴然。どう見ても勝ち目はなかった。
それでも船長は負けなかった。宿敵を倒そうと、この海賊団を守ろうと、力いっぱい戦った。
そして、宿敵はとうとう根負けし、海(公園)の平和は守られた。
あの時の、麦わら帽子の下で輝く、彼の笑顔が忘れられなかった。
私も、彼のようになりたかった。
一生懸命で、何にも負けない、麦わら帽子の似合う彼に憧れた。
いつか私も誰かを守れるかな。
少年のような格好で、麦わら帽子を被り、外へと歩き出した。
『麦わら帽子』
「はい、どうぞー」
にぱっと明るい笑顔で拳を突き出した姪っ子は珍しく機嫌がいい。つい最近姉が二人目の子を出産したためあまり構ってもらえなかったのが寂しかったのだろう。おやつや玩具を買っても見向きもせず、わんわんと大泣きしては暴れ回った。
これにはさすがに姉も参ってしまったようでしばらく俺と弟で預かることになったのだ。男所帯に幼い女の子を一人放り込むなんて、とは思ったがこれがまた可愛くて目に入れても痛くないとはこのことかと納得したほどだ。
俺も弟も夏休み中であることを言い訳に姪っ子を甘やかしまくった。可愛らしいパフェが人気の店やSNS映えする写真スポット、夏定番の海やプールに花火大会や夏祭りまで。姪っ子が喜びそうなところをピックアップして連れ回した。
最初こそ人見知りしていたが、今では大声で名前を呼んで抱きついてきてくれるようになったのだ。そして行きたい場所や食べたいものを百点満点の笑顔と上目遣いでおねだりしてくる立派なレディーに成長した。姪っ子が尊い。
だが楽しい時間ほどあっという間に過ぎていくものだ。気づけば夏休み最終日となり、姪っ子も姉夫婦の元へ帰ってしまう。寂しさのあまり姪っ子より先に咽び泣いて「帰らないでぇ!」と叫びちらした。姉にぶん殴られ姪っ子にヨシヨシされてまた泣いた。めっちゃ天使。
ついにやってきたお別れのとき、走り寄ってきた姪っ子の冒頭の「はい、どうぞー」である。
膝をついて目線を合わせてやると、突き出した拳を開いて可愛らしいヘアピンを2つ差し出した。「ありがとう」と屈託のない笑顔でいわれて、さらに俺と弟の髪にヘアピンをさした。
「これねお揃いなの!失くしちゃだめだよ!」
「「めっちゃ大事にする!!」」
夏がくる度に思い出す。ガチャガチャで引き当てたヘアピンは未だ捨てられず、ずっと俺たちの髪を飾りたててくれている。またいつか、姪っ子の手で飾りつけてほしいものだ。
仕事場に向かうため、ヘアピンをした上から麦わら帽子を被って歩く。いつも通りの道の端、小さな花束と見覚えのある缶ジュースが供えられていた。まだ新しいそれらをみて先を越されたなと独りごちる。
「まだまだ連れていってやりたいところあったのになぁ」
【題:麦わら帽子】
深く深く麦わら帽子を被って
深く深く息を吐いた
木にくっついたその宝石を
捕まえられたらいち早く見せて自慢する
夏の音 夏の声
今となっては終わりの青
麦わら帽子
雲の隙間に見える青空
ひまわり畑のなかを駆け回る君
追いつけないまま飛んでった麦わら帽子