『香水』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
香水
貴方は香水を嫌っていた。
私と同じシャンプーを、偶然使っていた。
だから、枕に寝転ぶ度思い出してしまうから、
かき消すようにまた、寝香水を振る。
**香りの錬金術師と時を越える香水**
古い街の片隅、細い路地の奥にひっそりと佇む店がありました。その店の名は「錬香の館」。その店主は、伝説の調香師であり錬金術師である老人、セオドール・ル・クロワ。彼の作る香水は、単なる香りではなく、人々の心に眠る感情や記憶を呼び起こし、時にはそれらを超越した力を与えると噂されていました。
ある日、一人の若い女性、エリスがその店を訪れます。彼女は、幼い頃に亡くなった母の記憶を呼び覚ます香水を求めていました。母が生前に愛用していた香水の香りをどうしても思い出せず、記憶の中でその香りがどんどん薄れていくことに心を痛めていたのです。
セオドールは彼女の依頼を受け、特別な香水を作ることにします。しかし、その香水には特殊な材料が必要でした。それは「時を越える花」と呼ばれる、存在しないはずの花。その花は、伝説では時空を超えて咲くと言われ、花を手にする者は過去や未来へと意識を飛ばせる力を得ると言われていました。
エリスとセオドールは、その花を求めて旅に出ます。道中、彼女はさまざまな時代に触れることになります。香水の香りを手掛かりに、彼女は自分の母が実際に生きた時代の断片を垣間見ることができました。そこには、母が隠していた秘密や、家族の過去に繋がる重大な出来事がありました。
二人は「時を越える花」を見つけ出し、セオドールはエリスの母の記憶を呼び覚ます香水を完成させます。しかし、その香水は単に記憶を蘇らせるだけでなく、エリスを母の若かりし頃へと誘い、彼女は母が選んだ運命の瞬間に立ち会うことになるのです。
そこでエリスは、母が家族を守るために犠牲にした愛や、未来に希望を託した決断を目の当たりにします。そして、その香水を使うことで、エリスは母が自分に伝えたかった最後のメッセージを理解し、時を超えて母と再び心を通わせることができました。
エリスはその香水を手に、母との絆を胸に秘めながら、未来へと歩み始めます。セオドールは再び「錬香の館」で静かな日々を過ごし、時を越えて巡り会うであろう次の客を待ち続けるのでした。
『香水』
あなたの優しい香水のような匂いも。
あなたの声も笑い方も。
いつもの癖も。覚えてるの。
ずっと見てきたから。
前に進みたいのに無理なの。
どうしてもあなたのことが出てきちゃう。
あなたのせいだ。
好きになんてならなければよかった。
出会わなければこんな寂しい気持ちにならなかった。
でもね出会わなければ、好きにならなければ、こんな気持ちになれなかった。
ありがとう。私の初恋の人。
お題『香水』
ここはある条件をクリアすると、誰でも魔法少女になれる世界の話。
魔法少女は、小学生からなることが出来るけど、なるには魔法界と人間界の境にある太い幹を持つ巨大な大木に住む神様からの審査を受けなくてはいけない。
小さい頃、いじわるな幼稚園の同級生に「あんたみたいに可愛くない子は魔法少女になんてなれないよ」と笑われて自信を無くしたけど、結果的に受かったのは私で、同級生は落ちた。
魔法少女に必要なのは、『人を思いやれる優しい心』なのだと神様に言われた。魔法少女になってから六年が経とうとしているけど、まだ分からないままだ。
魔法少女には変身アイテムがある。今は真ん中のボタンを押すと変身できるようになるカラフルなブローチを身に着けているが、最近、先輩の魔法少女から「香水もあるよ」と教えて貰った。
それで今、私は大好きな先輩と一緒に魔法少女だけが入ることができる魔法道具店にいる。
ここはいつも私が通う駄菓子屋さんみたいな魔法道具店と違い、内装が白くてきれいな香水や杖がたくさん並べられていた。先輩は
「道具の方が貴方を選んでくれるよ」
と言った。なんの変身アイテムを使うかは、道具の方が選ぶというのはブローチを買った時と同じみたい。
「うわぁ……」
しかし、香水はどれも可愛くおしゃれなデザインで、とても私が選ばれるとは思わなかった。なかには道具の方から試すまでもなく、「あんたにはまだ早いわよ」と語りかけてくるものまであるのだ。魔法少女をわりと長くやってるとそういうことがわかるのだ。
なんだか選ばれる気がしないなぁ、と思ったその時。
「ぼくだよ、ぼく!」
と語りかけてくる声が聞こえた。ちら、と見ると透明なはちみつのつぼみたいな小さな小瓶だった。蓋は小さな花の飾りがついてる。甘くてかわいい雰囲気がする香水瓶と、オレンジから赤、黄色にかけてグラデーションしている液体だった。
私はドキドキしながらその香水瓶を手に取り、一吹きした。それだけでもすこし大人になったみたいでドキドキするのに、一瞬にして変わった衣装は白と黄色を基調としたいつも着ているものよりすこし大人っぽいものだった。
「わぁ、かわいいー!」
先輩が歓声をあげ、店員さんも「相性バッチリですね」と言ってくれた。私はドキドキしながらも
「でも、高いんだろうな」
とこぼすと、店員さんが「貴方は選ばれたのでお安くします」と言ってくれた。意外といつも行く魔法道具店とおなじだった。
変身を解くと、さっそく会計に向かい、今まで依頼をこなしてきた分のマイルがたまっていたからそれで支払った。持っているマイルがギリギリ足りたので良かったと胸を撫で下ろす。
しかし、これから私、香水で変身できるのか。
そう思うと、自分がすこし大人になったみたいで気恥ずかしさを感じる。だけど、
「えへへ。これからよろしくねぇ」
なんて、アイテムが甘えた感じで語りかけてくるからなんだか気が抜けてしまって、買ったばかりの香水瓶を撫でてあげた。
子どもの頃
『香水』といえば
香りの良し悪しよりも
それをまとうことに
興味があった
『香水』イコール「大人」
と感じていた
ある時、
まとい方を練習した
みんなに
気付いてもらいたし
でも、控え目でいたい
合わせて、
エチケットを学んだ
それは、
大人へステップ!
嬉しくて
ワクワク、ドキドキ!
まー
香水
手首にしゅっとかける。鼻に近づけて匂いを嗅ぐ。
んー、なんか違う。
あの人の匂いではない。
時間が経つと匂いが変わると言うが、それでもなんか違う気がする。
自分でも馬鹿なことやってるとは思うけど、止められないのだ。
そして今日もあの人の匂いを探しに行く。
人によって匂いが変わるということも知らず。
香水
君がつけていた独特のあの香水
今思えばあの香水は
どこか懐かしい感じがした
君以外の傍にいた誰かか
僕の勘違いか
わからないけれども
どこかで嗅いだことのある匂い
嗚呼香水のせいで
思い出してしまったじゃないか
あの頃の君を
春は沈丁花の香水。
ミュゲやヒヤシンスもよい。
5 月になればローズ、梅雨近くはアイリスも合う。
夏はミントや柑橘系の香水。
蒸し暑い時の気分転換によくお世話になる。
秋はウード(沈香)。涼しくなってふと
落ち込む気持ちを持ち上げてくれる。
金木犀も好きだ。華やかな香りとともに
あのオレンジ色のたわわな花が脳裏に浮かぶ。
冬はバニラの香水。濃厚な焼菓子のように
寒い空気の中でも一瞬で暖かい気持ちになれる。
季節によって香水を使い分けると
何気ない生活にも潤いが出る。
今日はジューシーなオレンジの香りにしてみようか。
君との出会いは、ガーベラだった
君のつけているその香水に僕は、恋に落ちてしまったんだ
僕が君に何度話しかけても君は、見向きもしなかった…分かっていた君が僕なんかを好きになることなんて無いことは……
それでも僕は、君に話し続けた
あの日も君に話しかけた、すると君は笑った
僕は驚いた…けど、君の笑った顔を見てまた恋に落ちた
(やっぱり僕には、この子のしか居ない)と思った、あの日以来君から僕に話しかけてくれるようになった
そして僕が君に恋をした日から2年の年月がたった頃僕は君に告白をした
君からの返事は、「はい!」と目から涙を流したながらそう答えてくれた、思わず君を強く抱きしめた
その次の日から、君は香水を変えたそれはジャスミンの香りだった
なぜ香水を変えたのかは、分からないが君がつける香水は全て君を引き立てるための傍役に過ぎない
ある日突然君が「ねぇ、海に行かない?」と言ってきた「夕陽に浴びる海が見たくなっちゃった」と言った君は少し寂しそうだった
僕はまた笑った君の顔を見たかった、だから海に行くことにした
「ねえ!見てみて、海がオレンジに輝いてる」と笑顔で僕を見た「そうだね、また夕陽に染まる海見に行こ」と微笑みかけると君は「うん、約束」と微笑み返してくれた―――のに、あの日以降君が僕に微笑んでくれることも、笑顔を見せてくれることも減り、そして君は体調を崩すようになり日に日に衰弱していった
君の看病をし続けて、1ヶ月が過ぎた頃君を起こしに君の部屋に行くと冷たくなった君を見つけた
僕はまだ間に合うと思った、救急車を呼び病院に着いて先生が「残念ですが…息を引き取っています、多分ですが家で寝ている時にはもう……」と言われた
(僕には、君しかいなかったのにどうして―)
立ち直ることが出来ないまま君のお葬式が開かれ、お葬式が終わると僕はあの家に帰り君の部屋に向かった、そして君の机の上に何かのっているのを見つけた、それは君からの最初で最後の手紙だった
手紙にはこう書いてあった
私の運命の人へ
ごめんね…○○くんとずっと居たかった…けど…もう無理そう
私ね、本当は○○くんが話してくれる前から○○くんの事知ってたんだ、それでね○○くんがガーベラの香水をつけてるの知った日から私もガーベラの香水をつけるようになったの、そしたら○○くんが話してくれるようになって、あの日の事○○くんは『運命の出会いだった』って言ってたけど、本当は私が仕組んだ出会いだったの、ほんとの事言わなくてごめんね
これは私の勘だけど、1つだけ疑問に思ってることがあると思うんだけど、どうして香水をジャスミンに変えたのかっていうとジャスミンの花言葉が【あなたと一緒】だったからなの
でもね本当はもう1つ香水買ってて、それを使う前に私の――癌が転移が見つかったの、私小さい時に癌があったんだけど、手術をして取り除くことが出来たんだけど転移してることが最近分かったのそれで最後の日ぐらいはあの家で過ごしたかった
だから一緒に居れなくてごめん、一緒に夕陽の海見れなくてごめんね
最後に1つだけ、私からのプレゼント、私の引き出しの上から2番目に2つプレゼント入れてるから私と○○くんを出会わせてくれたあの香りとこれから築いていく為の香り
受け取って欲しいの、その香りの意味が分かるようになるまで
と書いてあった、君の言っていた引き出しを開けると、そこにはあのガーベラとローズの香水が入っていた
僕は君がつけるはずだったローズの香水つけている
前はそのローズの意味が分からなかった…でも今は分かる君がローズに込められたその言葉が…
あなたは分かりますか、そのローズに込められた言葉を――
マリリン·モンローがインタビューで記者からの
「寝る時は何を纏っているのですか?」
という質問に
「シャネルの5番よ」
と答えたのは有名な話
因みに私の夫は、加齢臭を纏って寝ている
『香り』
「ねぇ、なんでそんなもの飾ってるの?」
そう言って、僕はガラスケースの中の
古くて薄汚い香水瓶を指さした。
幼なじみの彼の家は、どちらかと言うと裕福な家庭で
家も新品同然にぴかぴかと輝いている
何より綺麗好きな彼の家で、香水瓶は周りから浮いていた
新しいものを買えばいいのに、なんて思っていると
「付けてみる?目を閉じててね」
と、彼は僕に微笑みかけて、ガラスケースの中から
香水瓶を優しく取り出した
「わ、わかった!付けてみる!!」
そう返事をして目を閉じる、一体どんな香りの
香水なのだろうか…と、内心緊張をしながら
シュッと吹きかけられたその匂いは、覚えがあった。
「………あれ?これって…」
思わず目を開けると、彼は悪戯げに笑っていた
「昔プレゼントしてくれたよね、思い出した?」
顔が熱くなっていくのを感じる
ずぅっと昔に、少ない小遣いを貯めて一生懸命悩んで
僕がプレゼントした爽やかな香水の香りだった。
「一番の親友からもらったプレゼントだ、
飾るに決まってるでしょ?」
お題【香水】
【香水】
貴方の残り香を追いかけて
何を言おうとしたか
頭が真っ白になる
甘くて 艶やかで
それでいて少し苦い
「香水」(一行詩)
香水一滴で別な女を演じる
◆
香水の匂いで男を身に付ける
◆
香水は嗅覚を騙す
◆
香水の匂いで騙して騙されて
映画『ラストマイル』見てきました。
『アンナチュラル』も『MIU404』も大好きドラマなので、また少し広がったこの世界に浸りつつ、最終的にモヤっとする部分も抱えて帰って来ましたね。
そして今回、初めて匂いを感じた。
イシハラちゃんやイブキって、ここまでずっと無臭な存在だったのが、あの物流倉庫や配送車を介して認識し直すことで、空気に色がついた感じ。
きっといい匂いの部類ではないんだろうけど、やっぱり好きなやつ。
【香水】
《 香水 》
あの時の香りを街中でふわりと感じると
つい振り返って探してしまう
そして古い古い記憶なのに
はっきり思い出すあの日のこと
香水は大人のものだからと
つけたことがないまま
大人の半分くらいまで来たけれど
勧められるままつけてみたら
やっぱり大人になった気がして
いくつになっても大人になれる不思議
「いい匂い……」
後ろを振り向くと見た事のある男の子がいた
すると男の子も振り向き「〇〇?」
そこにいたのは幼なじみの凛だった
別に会う約束をしていたのではなく偶然会ったのだ
「久しぶりだよーというか偶然だね」
これは偶然ではなく運命だった
題名「香水」
【香水】
「こんにちは」
玄関を開けると、見知らぬ男が立っていた。
「私、こういうものでございます」
差し出された名刺には、香水業者の社名があった。
「やっぱり、香水業者ですか。今時、香水持ってない人なんていないですよ。」
いつもの業者ならこれで引き下がる。
だが、この男は違った。
「お宅は、どちらの香水をお使いに?」
「えー、確か今はゴードン社」
男がここぞとばかりに、テンプレの羅列を始める。
「うちの商品は、ゴードン社より個人識別性の高いものに仕上がっております、また香料のブレンドはオリジナルのアレンジができますので、他人の識別香と被りません。今ご購入いただければ、ここでブレンドして差し上げます」
なるほど、セールスで生き残るだけの性能があるわけだ。
しかし、こちらもただで買うわけにはいかない。
「でも、お高いんでしょ?」
「今ならたったの16000円」
即決で購入を決めると、男は満足そうに帰っていった。今のより4割は安いぞ、これ。
第三次世界大戦で視覚兵器の暴発が起きて、今では全人類が視力を制限して暮らす。
そんな中で需要が高まったのがニオイ、つまり香水だ。
需要の高まりによって値段も釣り上がり、今や国家産業にする国もある。他人へのアピール、アイデンティティの確立、そして何より個人の識別。香水に課された役割は多い―――
ぽーん。
12時の時報が鳴った。12時?今日の待ち合わせは、確か1時に駅前だった。着替えをし、視覚制御のアイマスクをつけ、買ったばかりの香水をつけて急いで家を出た。
「ごめん柚乃、待った?」
私は20分遅刻したが、臨菜はその20分後に来た。
オーソドックスなバラの香りに何故か珈琲の香りを混ぜているのが臨菜が臨菜たる証拠である。
「ゼンゼンマッテナイヨ」
「…絶対待ったよね、ごめん」
まあ香りと最低限の視覚しか頼りにならん世界で、
こんなことはザラである。
「いいよ、行こっか」
今日は終戦記念日で、ちょうど50回目の終戦記念平和祭である。街には屋台がずらりと並び、夜には大規模な花火が上がる。
「にしても、そんなにめでたいかね?こういうのって、やるとしても戦勝国じゃない?」
臨菜が素朴な疑問を投げかける。
「世界が見れなくなった時点で、勝ちも負けもなくなったらしいよ」
あの戦争は歴史上最も凄惨だったと言われる。
視覚が奪われ戦争継続が不可能になったことは、むしろ救いだったと言う人も多い。世界の多くの国は勝ったわけでも負けたわけでもないが、民衆的には戦争が終わったことが祭りにするほど嬉しかった。
「それに、屋台ハシゴして飯食ってるやつの言うセリフじゃないぞ」
臨菜はわざとらしく核心を突かれたような顔をして、
「核心を突かれた!」と言った。
浅すぎだぞ、お前の核心。
その後しばらくは、2人で花火を眺めていた。
花火の音はしっかり聞こえるが、鮮やかさは戦前に遠く及ばないのだろう。いつか綺麗な花火を、私は見たい。
気がつけば、口に出してしまっていた。
「…私さ」
「視覚制限装置、取ってみたいんだよね」
チーズハットグを食べる臨菜の手が止まる。
「それまたどうして」
臨菜がいつになく真剣な眼差しだ。普段おちゃらけてはいるが、間違ったことはちゃんと止めてくれる子だ。視覚制限を外しては危ない。誰もが知る常識である。
「だって、香水だけでバイト代飛ぶんだよ。生活必需品のくせに」
「待ち合わせすら、ままならない」
「それに―」
「この花火だって、もっときれいに見えるはずなのに」
視覚制限装置は、厚い服の繊維の隙間から世界を見るのと似ているという。輪郭がうっすら見えて、強い光をちょっと通すくらい。
「臨菜の顔も、ちゃんと見てみたい。」
私は気づけば、世の中に対する不満と、幼馴染にしては若干重い気がするセリフを吐いていた。そもそも装置を外すなど、常識外れにも程がある。
「いいよ」
「私も、死ぬまで幼馴染の顔を見れないのは嫌」
死ぬまでだなんて、大げさな言葉が彼女から出たことが嬉しかった。
「それに、世界がどんなか気になるじゃん?大丈夫だよ、ちょっとくらい」
なんだこいつ、シリアスと適当を反復横跳びしやがって。
世界は驚くほど眩しかった。閉じようとする瞼を持ち上げ、隣を見る。
そこにいたのは透けるように白い肌に、流れるようなのロングヘアの女性。これが臨菜。
「…綺麗じゃん。」
「嬉しいこといってくれんじゃーん!」
先程までの深刻さはどこへやら、フランクフルトを頬張りながら、背中をバシバシ叩く臨菜。さては残念美人だな?
「柚乃も可愛いーーー!」
照れ隠しで無視する。
「意外と、なんともないもんだ」
直で世界を見ているが、異常はない。
異常といえば、臨菜のテンションくらいだ。
「見てあれ!花火めっちゃきれい!花火!」
臨菜のはしゃぎっぷりに、身の心配など忘れてしまう。
「凄くない!?花火ってこんな凄かったの!?ねぇ柚乃!」
部分的に視覚制限の必要がなくなったと発表されるのは、終戦50周年を過ぎた最初の朝のことである。
今はまだ、祭りばやしと花火の音が、月と花火の光が、私たちを包んでいる。臨菜が言った。
「そういえば柚乃、香水変えた?」
「遅いわ」
香水
それは無色のベール。
包まれても見た目に変化はない。
近づいて初めてわかる。
だからそう。
ベールに気づけるのは、
その人に心を許されてる証拠。
柔軟剤、シャンプー、制汗スプレー、
飲む口臭サプリ、そして香水の香り。
女性専用車両に初めて乗った時 オオ…となった事があった。
「戦いだな…」
何もつけていなかったわたしも、降りた時には鎧をつけた様な気がした…