『香水』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
香水
お姉ちゃんの部屋の棚に並んでいる
香水の瓶
私が触ろうとすると「あんたにはまだ早い」とぴしゃりと手を叩かれる
ぷっくりと頬を膨らませ私が不満を
露わにするとお姉ちゃんは
苦笑して「あんたが大人になったら
付けてあげる」
私は、その言葉を信じ大人になるのを
待ち望んでいた
そうして、大人になり初めての彼氏が
出来るとお姉ちゃんが私に
プレゼントをくれた。
初彼氏記念と書かれたカードと共に
プレゼントの包みを開けると
中には、ピンクの液体が入った小瓶が
入っていた。
「掛けてみて!」とお姉ちゃんがにっこりと
言うので私は、首筋にプシュッと
噴射口のボタンを押して首筋にピンクの
香水を掛けてみた。
鼻から妖艶な甘いローズの香りがした。
お姉ちゃんが「私とお揃い!」と私が持っているのと全く同じ瓶を掲げてにっこりと
笑っていた。
私もお姉ちゃんに笑い返した。
こうして、私は、お姉ちゃんと同じ
大人になった。
古い図書館の中庭フィトンチッド
知的な君の纏う香水
♯香水
私の好きな香水には哀しい名前がついている。
でもその香りをかげば、自分の胸の奥に確かに響くものがあるのだ。
ちょっと薬くさいこの香水。
包装紙のにおいにもちょっと似ていて、お香の様な雰囲気もある。
残念ながら「いい香りする」とはまだ言われていないけれど、本当の自分を出したい時に選ぶのは絶対にこれでなくてはならない。
つかみどころのない陰の薄さ。
嘆きと孤独と諦念の香り。
ああどうか廃盤になりませんように!
香水、ねぇ…。
香水って聞くと
匂いのキツすぎる知らないばあさんがよぎる。
だからあんまりいいイメージがないんだよなあ。
せめて彼氏彼女の匂いとかだったらいい話かけた
…かもしれない。
…自分の匂いは柔軟剤と汗の匂いがしてるかな。
私の高校の先輩は
フルーティーな香りの香水が似合う人だった。
ベビーフェイスで
明るくて笑顔で接し、思いやりがあって
誰とでもすぐに打ち解ける、
そんな人の鑑みたいな人。
私も先輩のようになりたくて必死だった。
でも、どんなに頑張っても
彼女のようにはなれなかった。
誰にでも向き不向きがあるように
人の性格って変えられないと
なんとなく思った。
そんな時、私はその先輩に相談した。
「どうしたら、先輩みたいになれますか?」
答えは一つだった。
「あなたにしか似合わない香水があるの。
その香水さえ見つけられれば、
きっとあなたは『自分らしさ』を見つけられる。
あなたにはあなたの良さがある。
それを忘れないで」
その日からさまざまな香水をテスターで試して
金木犀のような甘い懐かしい香りの香水を選んだ。
風に乗って運ばれた香りは
記憶の扉を開けた少しだけ
あなたを探した雑踏の中に
いるはずはない分かってる
閉じ込めていたわたしの心
愛を探していたわたしの瞳
まだ幼かった二人の出会い
誰かが囁く言葉は要らない
ただ真実をみたいそれだけ
欲望が溢れているこの街は
あなただけいないこの街は
『香水』
【香水】
好きな人と同じ香りになりたくて
香水を求める。
相手はきっと私のことなんて好きじゃないのに。
もっと言うと、
知らないかも。
私は、依存症?
香水の香りが鼻腔をくすぐる。それだけで振り返るは自然
“香水”
近所の薬局で買った香水。
関係ないのにどうしてか、貴方が思い浮かぶの。
優しくて、陽だまりみたいに暖かくて。
優しい、陽だまり、で君のことを思い出したよ。
初めて会ったのは、えっと、去年の秋頃、だったよね。
君に名前をつけたんだ。
月が綺麗だったから、“ツキ”なんて安直な名前だったけど。
名前を呼べば、すぐに傍に来てくれたね。
呼ばなくても、部屋に入れば足元に来てくれた。
体の上に乗って、一緒にお昼寝をしてくれた。
一緒に布団で寝てくれた。
本当はずっと、苦しかったんじゃないかな。
病気に蝕まれて、熱があって。鼻血をよく出してて。
本当にギリギリになるまで、気づいてやれなかった。
あんなに一緒にいたのに。
何もしてあげられなかった。
今年の四月。結局君は、いなくなっちゃった。
今でもふと、君の面影を追いかけるときがあるんだ。
掛け布団をちょっと持ち上げて「おいで」って言えば、君が入ってきて一緒に寝てくれるような気がして。
ほんとに今更だけど、君の身代わりになりたかった。
猫の身代わりになりたいだなんておかしいと思われるかな。でも、だって。
君はまだ1歳にもなってなかったろ。
いくらなんでも、短すぎるよ。
香水関係なくなっちゃったや。
貴方のせいだから。
貴方がこの前この香りが好きって言ったから
この香水をつけるしか無くなった。
貴方に出来れば全部好きって言って欲しいから
香水はずっとこのまま。
告白する勇気もないのに
貴方の隣に立つ準備だけは
完璧に仕上げてる。
いつかでいいから
この香りが移るまで近くに来てよ。
─────『香水』
香水
あなたに会うときに
必ずつけていた香水
会えなくなった今も
その香水をつけると
あの時間を思い出す…
心溶けるような、でも
決して叶わない想いと
いろんなが感情が
混ざり合っていた
香水
別れ際の握手 あなたは二度も
強く握ってくれた。
朝付けた手首の香 放ち 離れないで
香水
匂いは保存できないけど
再現ができる匂いが香水だと思う
視覚でも聴覚でもない情報って
簡単には残せない
でもその分
自分の記憶に
深く深く刻まれている気がする
満員電車の私は、必死にバランスを取るが、誰かに、身体を預けるような形で、支えられてしまう。
そんな車両では、あらゆる香りが漂っていた。
甘い匂いのがあれば、鼻にくる強い香水までがあった。
ああ、この電車はいつになったら到着してくれるんだろう?
私には、いつもの1時間が長く感じた
初めて買った香水は少し大人の香り。微かに甘くて柑橘の香り。
デートの時にすっとひと吹き。自分が大人の女性になった気持ちになれた。
あれから10年、実家で古ぼけた置物と化した香水を手に取った。まだ香りが残っていることに驚きながらすっとひと吹きしてみる。あの頃の幼くて、未熟で、でも真っ直ぐで一生懸命だった少女の後ろ姿が微かに見えた。
ノスタルジー
中学に入学する前に、私は初めて縮毛をした。同じ時期に君に恋をしていたから、あの匂いがすると、あのときの思いまでもが蘇る。甘いのに、苦い。伝わらないこの思いを、君に見せたら、ただ優しく拒まれただけだった。
『香水』
香水の匂いが嫌いだった
あの人工的な匂いが苦手で
そう言うとあなたは香水を付けないでいてくれた
でもあなたがいなくなった今
その香水の匂いを嗅がずにはいられない
あなたを忘れられなくて
【香水】
夜のネオンがひしめく街。
遠くから聞こえる不協和音のような雑踏の中に、一人の男がいた。彼は無機質な表情で、街路を歩いていた。濡れたアスファルトに映るネオンの光が、彼の足元でかすかに揺れる。
ビルの間を縫うように立ち込める湿った空気に、どこか馴染みのある香りが漂ってきた。オリエンタルな香りだ。それはスパイスの混じった甘い香りと、花のような香りが交じり合い、鼻腔をくすぐる。
香りを感じた瞬間、男の胸に微かな痛みが走った。
忘れ去ったはずの記憶が、薄闇の中から甦るようだった。だが、その記憶はぼんやりとしており、何も明確ではない。彼は足を止め、香りの源を探るように辺りを見回した。
その時、街灯の陰に女の姿を見つけた。彼女は、黒髪を長く垂らし、体を包むように和服をまとっていた。顔はぼんやりとしていて、表情は見えない。ただ、その場に立っているだけで、彼女の存在が街の喧騒から浮いているように感じられた。彼女が動くと、ふわりと香りが一層強まった。
男は、吸い寄せられるように彼女の元へと足を進めた。なぜか、彼女に近づくほど、胸の中にある喪失感が増していく。彼女は男に気づいていたのか、音もなくこちらを振り向いた。男の足が止まる。
「この香り…どこかで…」
男の問いかけに、彼女は何も答えなかった。彼女の目が彼を見つめている。まるで、男の内面を覗き込むように。その眼差しは、鋭くもなく、どこか儚い。彼女が一歩、男に近づいた。その瞬間、香りが一層濃くなり、男は思わず息を止めた。
気づけば、彼女はすぐ目の前に立っていた。彼女の瞳は、どこか哀しげでありながら、深い闇を宿しているようだった。彼女が静かに口を開いた。
「この香りが、あなたの記憶を呼び覚ましたのですね」
男は、彼女の言葉に応じることができなかった。頭の中が霞んでいる。彼女が再び一歩進むと、彼の視界は次第にぼやけ、世界が遠のいていく。
「…堕ちていく…」
その言葉が最後に男の耳に届いた時、彼はもう、意識を保つことができなかった。香りが彼の全てを包み込み、記憶の底に引きずり込んでいった。
翌朝、ネオンの輝きを失った街に、一人の男が倒れていた。目を開けた彼の鼻孔には、もうあの香りはなかった。しかし、その胸には、何か大切なものを失ったような感覚が残っていた。
彼は立ち上がり、何もなかったかのように街を歩き始めた。しかし、心の奥底では、あの香りと共に現れた女の影が、消えることなく残り続けていた。
香水
きつい人は苦手
ほのかに香ってるくらいがちょうど良い
甘い香り
爽やかな香り
香りは思っているより印象に影響するのかもしれない
【香水】
香水をつけたいという気持ちが僕にはよくわからない。香りの良いものなら身の回りに沢山ある。シャンプー、入浴剤、石鹸、柔軟剤……全部の匂いが身体に残るわけじゃないけど、匂いが強いものを常に纏っているというのは鼻が疲れそう。食事の邪魔になりそうだし……
そんな話をしたら、パートナーから
「君は体臭が薄いから誤魔化す必要もあまりないか。羨ましい」
なんて言われた。自分では正直よくわからないけど。
「もう少し匂いがしてもいいのにな」
なんて言いながら、僕の頭に鼻をくっつけるのは流石にやめていただきたい。