『終点』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
私の終点はきっとあの時
終点の先
今はどこを走ってるんだろう
足元のレールはもう無いかもしれない
この先に駅は無いかもしれない
先の見えない闇の中を行く
終点過ぎたなら、もう止まってもいいよね
——終点
人は絶対に死ぬ。どんなに延命しても今の医療技術では永遠の命は無理だ。
どれだけ足掻いても治らない病気もある。
後何十年何百年経てば永遠と生きられ、今現在治らないと言われる病気も治るかもしれない。
でもそれは架空の話。
今はのんびりのんびり時間の経過をみて命の終わりを待つしかない。
だがそれもいつか美しい思い出と言えるのかもしれない。
終点
もう、逃げ場はない。
これで、終わりだ。
オレが進んできた道は、
此処で途絶えていた。
これ以上進むことの出来ない、
終点だ。
こんな塵屑みたいな運命から、
何とか逃げ出そうと思って。
必死に走って来たけど、
ここまで、か。
肚を括って、目を閉じる。
最早、ジタバタするのは、
格好悪いから、と。
最後の最後迄、お得意の痩せ我慢。
その時。誰かの声がした。
最後迄諦めるな、
ここが終点なんて、誰が決めた?
と。
前が行き止まりでも、
地面の下や空の上には、
未だ道があるかも知れない。
オレは足元を見詰めた。
さっきの声の主に会う為に、
オレはもうちょっと、
見苦しく足掻いてみようか。
→短編・終点広場
ここは終点広場だ。
動けなくなった奴らの吹き溜まり。
あぁ、とうとうこんなところまで来てしまったのか。
さっきまで別のところにいたはずなんだがな。
広場は静まり返っている。敷石は割れ、中央の噴水は枯れている。花壇は手入れされず雑草すら生えない。さらに空には分厚い雲が低く垂れ込め、気分を鬱々させる。
ここでは誰もが口を閉じ、自分の殻に閉じこもる。
苔むした自意識が身体中にまとわりつく。
度を越して根腐れした承認欲求の腐臭。
方々で人を蹂躙する見猿、聞か猿、言わ猿轡。
つむじ風さながらの他人風に力なく漂泊する情緒。
俺も何処かに腰を下ろして、この広場の不特定多数となろう。
手短なベンチに座る。ベンチが低すぎて落ち着かない。
何も無い花壇で胡座をかく。湿気た土が気持ち悪い。
そこらに横たわる奴らに倣う。……誰かに踏まれたら最悪だ。
喉が渇く。コーヒーの苦味が欲しい。
尻の据わる場所を探し歩く俺の耳にくすくす笑い声が聞こえた。
「あなたはここに似合わないわね」
笑い声の主は、羽のもげた白鳥の彫刻に寄りかかる女だ。彼女の下半身はセメント的不信感で固められ、その濁った瞳には鬱屈が滲んでいる。
「ここは終わりの場所。動けない人の住処よ」
「知ってるよ。ここにたどり着いたってことは、俺も終わりだってことだ」
「じゃあ、それは何?」と、彼女は右手で俺の前を指差した。その白い指先を目で追った俺の前に、さっきまでなかったガラスの自動ドアが現れていた。
「これは……」
俺は、このドアを知っている。
「不満を抱く元気があるなら、ここの住人になるのはまだ早いわ」
突如現れた自動ドアの向こうには、昼間の喧騒と往来を行き交う人々。明らかに異質だ。それでも広場の景色と対照的な明るさに目が吸い寄せられ、離せない。
「早く行きなさい。消えちゃうわよ」
彼女の言う通り自動ドアが消え始めていた。ガラス向こうの風景も薄くなる。
背中にゾクリとしたものが駆け上がった。
嫌だ! あの景色を失いたくない! その一心で俺はドアに飛び込んだ。
背後から彼女の声がかすかに追ってきた。その声の中に羨望を感じたのは、気のせいだろうか?
「終点はね、人によっては起点にもなり得るの」
「あ、すみません」
往来に飛び出した男は、ぶつかりそうになった人に小さな声で謝罪した。
彼はその場で頭をひねった。なぜだか少し意識が飛んでいたような気がする。
その背後でテナントビルの自動ドアがゆっくりと閉まった。フロア案内板には事務所や歯医者、心療内科の名前が書かれている。
男は顔を下げてトボトボと歩き出した。心療内科の帰りはいつもそうだ。人と関わるのが億劫になる。
毎回エレベーターホールから出るところで躊躇してしまう。往来の風景に孤独感と焦燥感が募る。日々の生活を営む余裕のないことへの自己嫌悪。クリニックで湧き立った万能感は消え、他人への恐怖に支配される。
今日は特に足が竦んだ。今日こそ終わりだと思った。誰にも会いたくないと叫びそうになった。それでも往来に出ることができたのは、少しは改善に向かっている、と信じてもいいのだろうか?
帰路、彼は酷く喉が渇いていることに気がついた。自動販売機でコーヒーを買おうとしたが、ふとその手を止めた。
隣は喫茶店だ。自動販売機と喫茶店に何度も目を往復させる。
逡巡の後、彼は一つの勇気を奮い立たせた。
恐る恐る彼は喫茶店のドアを開けた。
テーマ; 終点
真夜中に起きてしまって眠れない時、散歩をする。
流石に真っ暗で危ないから、こういう時は決まった道を歩く。
片道30分くらいのところにあるコンビニでカフェオレを買って折り返すのがお決まりのパターン。
内照式のファザード看板は左側が点滅していて
田舎という訳でもないのに、それにしては駐車場が広くて
そして、やけに漫画の品揃えが良い
何の変哲もないコンビニ。
車を止めておくことも、漫画を買うこともないのだから、別のコンビニでもいいはずなのに。あと2、3分歩けば辿り着く所だっていくつかあるのに。
看板の点滅が消えていないかどうか確認するのはちょっとした癖になっちゃったんだけど、、ともかく、そこでなくたっていい筈なのに。
そろそろだ。
見えてきた、右手をチカチカさせて私を歓迎してくれている。今夜も元気そうでなによりだ。夜風が秋めいてきたから今日は暖かいカフェオレにしようかな?ちょっと気が早いかな?
私だけの終点はすぐそこ。
#終点
終点でバスを降りた。
昼ごはんを食べ、民宿へ入る。
夜、僕はそこで好きな人の、"好きな人"だった人の、首を絞めた。
きつく。ぐっと力を入れた。
僕は許せなかった。楽しい思い出が、苦しい気持ちに変わっていくのが許せなかった。
2週間前、僕は君から知らない男と寝た話を聞かされた。
結局、君も"そういう人"だったのだ。
一緒に行ったライブも北海道旅行も、よく行ったコンビニも、全ての楽しい思い出が自分の中で苦しいものに変わっていくのが分かった。
だから僕の片想いは僕が終わらせた。
終点
人生ってよく電車に例えられる。
着く場所それぞれに駅名があって、
その駅に着くために頑張ってるみたいな。
でも、その列車は唯一無二で、
一緒に乗っている人や見える景色、速さも違う。
でも突然、『終点』の二文字が見えてくる。
いや、着いてから気付くのかな。
意外とすぐ終わるのかも。
後悔はたくさんすると思う。
だけど、私が私らしくいられますように。
人生の終点はどこなのだろうと夜になると考えることが増えた気がする。
夜はどうしても様々なことを考えてしまう癖がある
この癖を早く辞めたいと最近考えている
終点。それは終わりであり、新たな始まりである。
手の中にある新たな切符が、再び歩き出す僕を心待ちにしていたかのように輝いていた。
逃避行の旅に出よう
あなたと一緒ならどこまでも
_終点
欠落を流れている光だけが夢見の悪い尾びれを尾びれたらしめている
『終点』
月並みだけど、人生を電車に例えたとして。
私はきっと途中下車もできずに、
真っ直ぐ終点に向かっていく。
買い物も、
会いに行く人も、
ただ気まぐれな寄り道もないまま、
終点までの片道切符を握りしめて、
だんだん客の減る快速電車で骸になる。
私は独りでただ終点の花畑を夢に見る。
たどり着くのは、きみと一緒に。
そう思ってのばした手が重なる。
終わりの始まりを、告げる音がした。
終点はセピア色 ポケットの内側
有効切れの切符と鍵だけが帰り道を示している
「終点は始点」
小学生の頃の話だ。
習い事のため、ある街へと通っていた。
週に一度。
同時の小学三、四年生にとって、ひとりで路面電車に乗って通うことは、大冒険。
降りる停留所のいくつか先が終点で、それに憧れを抱きつつも、行ってみる勇気は当時の私には、なかった。
それ以上行けない。
そのことがほんの少しだけ怖い気がしたのだ。
そのせいだろうか。
今でも終点というものは、特別で、冒険の香りがする、憧れの場所だった。
※
今回の帰省の目的のひとつは、子供の頃に行けなかった、路面電車の端まで乗ること。
この街のシンボルは変わらないのに、その周りはどんどん変わっていく。
育った街の景色を懐かしく感じるのに、それと同時に、もうこの街の住人ではないのだと思い知らされる。
大人になって気づいた。
終点と言うけれど、それは乗っている人の視点なのだ。
別の人から見たら、ここからが始まり。
変わっていない景色と、変わり過ぎてしまった景色。
今の私が目新しく感じるものも、月日が経てば懐かしく感じるのだろう。
────終点
終点。私がよく使う朝の電車は会社の最寄り駅までが終点である。わずか二駅で私は終点なので一駅は動画を見ても残り一駅は睡眠に集中する。
寝ぼけている私は一度、傘を置き忘れそうになった。、、と、言うか実際、ひっかけたままの傘に気づき、数秒で戻ったのだが。。駅員さんが私の傘を持っている。あのぅ、私の傘なんですが。置き忘れて急いで取りに来たのですが。と伝えると、すんなり返してくれると思いきや、「これは、私が拾得したのでまずは、報告をせねばなりません。なので、上まで来て頂けますか!」と。。ええっ??私の傘だと、本人が言っているのに!!意地悪か!!と。
仕方ないので、同行した。
すると、改札横で駅員同士で数秒話をしている。話が終わるやいなや、私が名乗り出た所、その駅員さんはにっこり笑顔で、「はいっ!」と渡してくれ、「手続きなんでね。」と。とりあえず傘が手元に戻り、会社にも遅刻もせずに済んだのだが、無愛想に私の傘をむんずと持ち、持論を展開しては本人などいないかのごとく、手続きをしていなくなった彼には今、こうして書いていても苛立ちが再燃するのである。
すんなり返してくれた駅員さん同様に、「手続きなんでね。」と、同行を促してくれたらあんなに呼吸も乱れずにすんだのに!!歯がゆいばかりである。
教訓。傘はお忘れずに!笑
「ねぇゲームしよ」
ふと君が言った。
んー?と君のもとに行き何をするのかと聞くと
画面に納得。
いいよと自分もゲームを開いた。
そしてステージを選ぶ画面で顔を見合わせる。
「ステージは?」
「そりゃあまずは」
「「終点!!」」
だよねと笑った2人は隣同士。
肩を並べて競い合った。
列車の旅というのは不思議だ。
肘をついて流れる景色をぼんやり眺めていると、様々な思いが湧き上がっては通り抜けていく。
これから向かう目的地への期待と不安、流れては去っていく景色への感嘆と興奮、そして故郷への郷愁――。
一人で列車に揺られていると尚更そんな事を感じる。
パートナーなり友人なりがいたらまた違ったものを感じるのだろう。そもそも仲間がいたら、彼等との会話や体験に夢中で考え事をする暇も無いのかも知れない。
·····いや、分からないな。
旅といえば一人旅がほとんどだった私には、誰かと共にする旅の感慨などというものは、想像の範囲を出ない。
よく人生を旅に例える事があるが、だとすれば私の人生は決して一人旅などでは無かった。むしろ多くの人に支えられ、多くの人と共に歩いた人生だった。
私が不意に旅に出ることを思い立つのは、一人になりたいからなのかもしれない。
列車は速度を落としていく。
そろそろ終点だ。
小さな港町だという。観光地でも何でもないそこには宿は一軒しか無い。時間と金には余裕があった。飽きるまでその宿で過ごして、町をぶらぶらして、私は私の旅を終わらせるつもりだ。
コンクリート造りのホームが見えてくる。
終点のその駅は無人駅だった。
列車が軋んだ金属音を響かせて止まる。
ホームに降り立つと冷たい風が頬を撫でて、私は思わず肩を竦める。
ちらちらと、細かな雪が降り始めていた。
END
「終点」
「時々、このまま終点まで行ってしまいたくなる」
電車の揺れに紛らわせて言ったつもりだった。
「椋、起きて。もう次で降りるよ」
しばらく乗っていた電車も人がまばらになり、数駅前から空っぽになった座席に座っていた。
大した時間は経っていないが、椋は眠ってしまっていたらしい。
夏油は、後輩の小さな肩を優しく揺らす。
……起きない。
「椋?大丈夫かい?」
そもそも椋は人前で無防備に眠れるような人間ではないのに、声をかけても起きないということは、相当疲れているのだろうか。
心配になり、夏油が顔を覗き込むも、その瞼はぴくりともしない。そう、不自然なほど全く動かない。
「……椋、起きてるね?」
「…ねてまぁす」
「起きてるじゃないか」
心配して損をした。
背もたれに体重をかけて座り直すと、右腕に重みがかかる。
「終点まで行っちゃおうよ、センパイ」
聞こえてたのか、と夏油は数十分前の自分に恥じる。
「ぼくは寝てる」
「起きてるけどね」
「センパイも寝てる」
「流石に無理があるかな」
「ふたりとも疲れて居眠りして、そのまま終点に着いちゃうんだよ」
椋は目を閉じたままだ。
あくまで寝ているというスタンスらしい。
「だめだよ、早く帰って報告書も出さないと」
「そんなのは後で考えようよぉ」
「行ってしまいたいなら、一度行っちゃおうよ。
それで、終点の景色を見てから、いっしょにかえろ」
椋の指は、夏油の袖を掴んで離さないつもりらしい。
この手綱があるなら、帰りは迷うことなく一本道だろう。
「…なら一度くらいは、いいか」
「でしょお?はい、げとーセンパイも寝ますよー!」
「はいはい」
夏油は右腕に寄り添う温もりを自らも掴んでから、目を閉じた。
【終点】
この旅の終点は、どこなのだろう。
ふと、そんなことを考えることが、ある。
目的を果たした時?
宝物を見つけた時?
私が、死んだ時? いや、それはない。
だって、私が死んでも、みんなは生きていくんだ。
虚弱体質な私とは、ちがう。
体質だけじゃない。全部、何もかも。
偶然でしか、ないんだ。でも、なんて素敵な偶然だろう。
みんなが旅の終点に辿り着いた時、たぶん私はそこにいない。
それでも、私の終点を、みんなは通るはずだ。
なら、みんなをちゃんと見送ろう。
みんなが、私に構わず、歩みを止めずにいられるように。
終点は、もう、そう遠くない。
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「終点」 2024. 8. 11