『目が覚めるまでに』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
目が覚めるまでに
僕を全肯定する世界とは心から決別しないといけない
幻だなんて分かりきってる
思い通りだなんてありえないのに
こんなにも暖かくて
夢で会える 夢だけで
本物はいらないんじゃないかってくらい
でも僕の知っている君じゃないから
僕があまりにも美化されすぎているから
それにも傷つく僕がいるから
そろそろゆっくり起きなきゃいけない
寝ぼけた目が完全に覚めるまでに
ご機嫌取りのお菓子を検索しよう
様々な状況にある人たちの
それぞれの苦悩に関して
「そういうもんだよ、仕方ない」
とか言っちゃえるような人間に
私は なりたくない
目が覚めるまでに、
夢の世界に別れを告げて。
どんなに甘い夢だとしても、
夢は夢でしかないのだと、
現実はこうではないのだと。
理解した上で、
現実に戻らなければならないから。
いつかまた、同じ夢を見られたら。
せめてそんなことを思いながら、
ゆっくりと、意識を覚醒させた。
寝苦しいからだから、一人でいたい。そして明日、もし晴れたらお出掛けしよう、そう思ってたのに、今、脱水症状で、まさかの病院の病室とお友達案件なのである。目が覚めるまでに、治ってくれ。水分不足はダメだ絶対、人生で初めて動けなくなった。皆様も気をつけてくださいませ。
目が覚めるまでに
あたたかい食卓。
今日の献立は
お母さんが好きな麻婆豆腐と、お兄ちゃんの好きなわかめと玉ねぎの味噌汁、お父さんの好きな海苔の佃煮に、私の好きなトマト。
「あ、お兄ちゃんそのトマトとらないで!」
「あ?別にいいだろ!この前お前が嫌いな肉の脂身食べてやったんだから!」
「肉の脂身はお兄ちゃんの好物じゃん!アンフェアだよアンフェア!不平等ー!」
「うっせぇうっせぇ!」
「ちょっと二人ともいい加減にしなさい!」
「あ!父さんが俺のトマト取りやがった」
「お兄ちゃんのじゃないですー私のトマトですー!」
「今はお父さんのトマトだぞ」
「三人とも、トマトごときでそんな争わなくてもいいじゃないの…」
「トマト『ごとき』って何よ『ごとき』って!」
「…(先にお風呂入っちゃお)」
「…。」
「(よし)」
「ん?おい俺が風呂先だぞ」
「私のほうが早かった」
「いーやそんなことないね」
「はあ?大体お兄ちゃんはいつも先にお風呂入ってんじゃん!」
「近所迷惑だぞー」
「あーうっせぇうっせぇ。じゃあ先入れば?
ホント、いつまでも子供でちゅねー」
「キモ何そのしゃべり方!子供なのはお兄ちゃんもでしょ!」
「俺は精神年齢が上なんですー」
「そんなに入りたくないなら私が先に入るわよ」
「「母さんは黙ってて!」」
「黙ってて?」
「「あ」」
「口の聞き方が違うんじゃないかしら?」
「「…すみません」」
お兄ちゃんはムカつくしうっさいし子供っぽいけど優しかったし
お母さんは厳しいけどご飯はすごく美味しかったし、何かやり遂げられた時にはすごく褒めてくれたし
お父さんは物静かだけど結構お茶目だったな。
反抗期になってからちょっと避けてたけど、
話すと面白くて楽しかった。
楽しかったんだ
すごく
すごく
楽しかった
ねえ、酷いよみんな
みんなして私のこと置いてっちゃって。
お母さんとお父さんは私とお兄ちゃんを庇うみたいに死んじゃって。
何とか生き残ったお兄ちゃんは
あんなにバカにしてた私のところへ来て死んじゃうし。
「馬鹿にしないの?」
って聞いたら
「んなわけあるかあ!」
って怒って、
痛くて私が泣いていたら
「大丈夫大丈夫」
ってニカッと笑いながらそう言って。
一番瀕死なのは
お兄ちゃんだったのにね。
「おいお前!俺のゲームどこやった?!」
「はー?あんたのゲームなんて私知らないんですけど!決めつけないでもらえます?」
「クソ、あともうちょいでクリアなのに」
「…」
「まじでどこいったんだ、」
「…」
「くっそ見つかんねえ
しゃーねぇしスマホゲームでもするか」
「…お兄ちゃん?あなたもうそろそろ定期
テストよね?」
「げ、」
「げ、って何よ。ゲームを取ったのはお母さんです。定期テスト前はゲームしない約束でしょう?」
「…」
「お兄ちゃんざまあ(笑)」
「くっそうぜぇ…」
「そのゲーム俺がやってもいいか?」
「んなわけねえだろクソオヤジ!」
「いやぁ丁度気になってたゲームなもんで」
「ぜってぇ触んなよ!触ったらぶちこ…」
「あー、お兄ちゃんがぶち殺すって言ったー」
「言ってねえよ!」
「言いかけたんだから同罪でしょ!」
分かってる
分かってるんだよ
これが夢だってこと
この『いつも通り』が
もう二度と叶わないんだってこと
でも
でも
あと少しだけ
少しだけでいい
この空間にいさせてください神様。
この夢から目が覚めるまでの
短い時間で構わないから。
2024/8/4(日)
お題「目が覚めるまで」
ブブッ
短く震えて、スマホがメッセージの着信を告げる。
無駄のない短い文章で告げられる、今日の待ち合わせ場所。
「クリシュナ、ね⋯⋯」
ちょうど一年前、彼と出会った店だ。
会社の同僚に教えてもらった、古びた雑居ビルの地下にある落ち着いた雰囲気のバー。
お酒は然ることながら、ちょっとした食事も頼めば出してくれる、しかも絶品ともなれば通わないはずがない。
週三日の勢いで通っていた私に声をかけてきたのは、この店の常連の男ケイだった。
話によるとケイとマスターは十年来の友人で、マスターのパートナーはケイの幼馴染という仲だという。
私はと言えば、三十を過ぎて二年近く、母親の「良い人いないの?」攻撃を避けるようになって久しく、最後に男と付き合っていたのは四年前。
しかも別れた理由が、いつの間にか自分が二股の浮気相手の方になっていたとか、笑うに笑えない。
『俺、今度結婚する。暫く会えないけど、待っていてくれるよな?』
一瞬何を言われたのか理解できなかった。
言われた言葉を口の中で小さく呟く、何度も何度も意味が理解できるまで。
そして、理解した瞬間、とびっきりの笑顔で相手の顔面にグーパンチをお見舞いしてやった。
結婚相手は取引先の社長の娘だとか何とかで、断れなくて、とか愛してるのはお前だけだ、とか言っていたけれどそんなのはどうでも良かった。
こんなくだらない男に五年もの時間を費やしていたのかと思うと、悔しくて情けなくて馬鹿らしくて泣きたくなった。
その点、ケイは分かりやすかった。
俗に言う遊び人で、誰にでも親切で、誰にでも優しくて、誰にでも愛を囁く。
だから初めから体だけの関係で、交わした約束は『一緒に朝を迎えないこと』。
同僚には言われた、馬鹿じゃないのか、と。
自分でもそう思う、いい歳して体だけの関係とか、それこそ本当に時間の無駄でしかない。
それでも、人肌が恋しいと思ってしまう。
嘘でもいいから、誰かに愛されたいと思ってしまう。
でも、もう傷付きたくないとも思う、ただのアラサー女の我儘でしかない。
そしてケイは、その我儘に付き合ってくれているだけだ。
「いらっしゃい」
カラカラン、と軽い金属音が鳴る扉を開けるとそこに広がるのは優しい空間。
年月を経た木が独特の輝きを放ち、静かに流れるJAZZの音がこの空間に溶け込んでいる。
カウンターに目的の人物が居ないのを確認して、端の方に腰掛ける。
「フォールン・エンジェルを」
「畏まりました」
最近入った若いバーテンダーに注文をして、一つ息を吐き出す。
いつからだろうか、彼と会うのがこんなにも楽しみになったのは。
話すのが楽しいのは初めからだった、それは覚えている。
身体を重ねるようになるまで、そんなに時間はかからなかった。
まぁ、半分自暴自棄になっていたというのもあるけれど。
遊び人だから、なのかどうかは分からないけれど、彼は酷く優しく抱いてくれる。
体の相性も悪くない、と言うよりも凄く良くて困るほど。
「何だ、顔赤いぞ?」
突然の背後からの声にびくりと肩が揺れた。
振り返らなくてもわかる、ケイだ。
「気のせいよ」
「そうか?キャロルを」
「畏まりました、ケイさん」
私の前にフォールン・エンジェルを置いた新顔のバーテンダーに、彼は慣れたように注文する。
あれは人たらしだ、と言っていた同僚の言葉を思い出す。
確かにそうなのだろう。
常連客の皆がケイに一言二言声をかけて行く、男も女も関係なく。
それに笑顔で答える彼は、実に楽しそうだ。
私もその中の一人に過ぎないのかと思うと、胸が締め付けられるように痛くなる。
この感情が何なのか分からないほど初心じゃない。
だから余計に自分が嫌になる。
この感情を無理やり箱の中に押し込めて、ただの女を演じる。
「はい、プレゼント」
「⋯⋯何の?」
「出会った記念の、というのは冗談で、お土産。出張でチョット海外にね。気に入ってくれると良いけど」
「ありがとう。開けても?」
「もちろん」
包みを開いて出てきたのは、青い石を中央に飾ったペンダント。
少しくすんではいるけれど、細工は素晴らしいし、何よりもデザインが私好みだった。
「アンティークだけど、好きだろ?こういうデザイン」
「えぇ、凄い⋯ステキ」
店の照明の下、キラキラと輝く石が目の前を通り過ぎる。
「着けてやる」
サラリと言って、私の後髪を左の肩に寄せ慣れた手つきでペンダントを着けてくれる。
髪を整えるのと同時に、周りに気付かれないよう、首筋を彼の指がなぞっていく。
「⋯⋯ありがとう、大切にするわ」
カクテルを飲み干して、店を出る。
二人並んで歩いていつものホテルに向かおうとしたら、腕を引かれた。
今日はコッチ、と言って連れていかれたのは、誰もが知るホテル。
導かれるまま部屋に入って、カーテンの閉まった窓辺で振り返ったケイはとても笑顔だった。
「え、なに?」
「前に言ってたろ。夜景の綺麗なホテルで、シャンパンに苺を浮かべてお祝いしたいって」
「言った、けど、何のお祝い?」
「俺たちが出会って、一年のお祝い、かな」
「キザ過ぎない?」
「そう? でも、嫌いじゃないだろ、こういうの」
「悔しいけど、好きだわ」
開けられたカーテンの向こうには、大小様々な光が溢れている。
そっと手に持たされた、苺の浮かんだシャンパンの泡の弾ける音。
「俺たちに」
「⋯⋯乾杯」
クイッとシャンパンを含むと、ほんのりと苺の香りが口の中に広がる。
私の様子をじっと見ていたケイは、自分の演出に満足したのか一つ頷くとシャンパンを一気に飲み干した。
どうして、こんなにも優しくするのだろう。
体だけの関係なのだから、こんなことしなくてもいいのに。
もっとドライでいてくれれば、こんな思いはしなくて済んだはずなのに。
目が覚めるといつも、ケイの温もりを探してしまう。
かつてした、約束を違えること無く、朝になればケイの姿は隣にはない。
既に冷たくなった、ケイの跡に指を這わせて虚しさにキツく目を閉じる。
そんな朝をこれからどれだけ迎えるのだろうか。
夢の中ならば言える。
ケイが好きだと、ケイを愛していると。
変なプライドに邪魔されず、臆病な自分に負けることなく、心の中をさらけ出して。
私の目が覚めるまでに、いなくなってしまう彼を引き留めたくて、でもできなくて。
今夜も私は眠りに落ちる。
ふわふわとした浮遊にも似た感覚に全身を支配され、時折降り注ぐキスの嵐に束の間の幸福を感じながら。
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(´-ι_-`) 【目が覚めるまでに】じゃなくて【目が覚める前に】だな(¯―¯٥)
「目が覚めるまでに」
彼の朝はいつもはやい。低血圧で起きるのに時間がかかる私とは違いアラームの音ひとつでサッと起きて朝の支度を始めるのだと言っていた記憶がある。事実私が起きる頃には部屋の換気や身支度など全て終わらせてニュースを見ていることがほとんどだった。
そんな彼が今は私の隣でぐっすりと眠っている。余程疲れているのか、私が起きる時間になってもぞもぞと動いても起きる気配がまるでない。あまりにも静かに眠り続けるものだから呼吸をしていないのではないかと不安になり口元に手を当て確認したが、その心配自体は不要だったみたいだ。
普段はキリッとしたみんなの頼れる存在である彼だが、眠っている時はいつもより少し幼い顔をしているように思う。髪型のせいもあるかもしれないが、それを見られるのは自分だけなのだとほんの少しの優越感に浸る朝は思ったより悪いものじゃない。
ただ間もなく時刻は昼を回る時間になる。流石の私もお腹が空く時間だし、彼にもやりたいことがあるだろう。なにより彼を起こさないと、がっちりと抱きしめられている私はベッドを出て何かをすることができないのだ。ここまですやすやと心地よさそうに眠る彼を起こすのは心が痛むが致し方ない。
ねぇ、起きて。もうお昼になっちゃうよ。
そう声をかければ普段なら動き出すはずなのに。今日ばかりはダメみたいだった。どうしたものかと見上げれば端正な顔が視界に入る。
そんな顔を見て、こんなに起きないならすこしくらい遊んでもバレないんじゃないか。と私の中で悪戯心がざわつきだす。
いつもは些細ないたずらをするだけで軽いため息をつくようなタイプだが今回ばかりは起きないお前が悪いと責任転嫁してしまえばいい。
そう思ってしまえば話ははやい。何をしようか、どこまでなら怒られないか…最悪起きたとしても言い訳できるものがいい。
ああそうだ、あれにしよう。
ふふ、と笑ってから手を彼の頬へ伸ばし親指で軽く撫でる。いたずらの前に起きられてはたまったものではないが、しようとした瞬間に起きられるよりは確認を入れた方がいい。
幸いにも今日の彼はこれくらいのことでは起きないらしい。
ああ、良かった。と一息つき、さていたずらの開始だと己の顔を近づける。いったいどんな反応をしてくれるのか、それともこれでも起きないのかは分からないが。まぁ私が楽しいからそれでいいのだとしよう。
ちゅ、と軽い音をたてて彼の唇から離れればなんだか悪戯心さえ沈んで虚しい気持ちが大きくなってくる。
朝からなにしてるのかと軽くため息をつき大人しく彼の腕の中へ戻り、もう一度眠りにつこうかと目を瞑った時
…もう満足したのか?
という声が上から聞こえてくるものだからあまりにもびっくりして思い切り上を見上げてしまった。
声をかけてきたのはそっちの癖に急に動いた私にびっくりしたのか、彼も目を見開いて見るからに驚いた顔をしている。
な、え、なんて言葉にならない声を出している私を見ながらまたとろんとした顔をする彼に起こしてしまったことを申し訳なく思う。
つ、かれてた、よね?起こしちゃってごめんね。私は起きるけどまだゆっくり寝てていいよ。お昼はどうする?軽い方がいいのかな。
なんて、あくまで平常心を装うとしながら言葉を紡ぐが彼は抱きしめている腕を離そうとしない。どうしたのかと思えば彼が口を開くのでなにか言うのかと思い静かに彼の声を待つ。だが何も言わずにそのまま口を閉ざしてしまった。
オレが目を覚ますまでに、ボスは何を考えているのだろうか。それとも夢でも見ているのか。
それはオレには知る由もない。
あの日から、2日が経ちレナは無事退院して、学校に通っている。少し足を引きずる時もあるが、事故前と大差のない生活が送れているとレナは言っていた。安心した僕は昼休みに、星井にもその話をした。
「…っていう感じでさ。レナ、大丈夫そうで良かったよ」
僕が話し終えると、何故か星井は俯いていた。
「どうした?星井」
具合でも悪いのかと思って、星井の顔を覗き込もうとしたら、いきなり星井が僕の腕を掴んだ。
「花本、少しお前に話がある」
僕はよく分からなくて、それでバスケ部の部長である星井の力には勝てなくて、そのまま立ち入り禁止の紙が貼ってある教室に入らされた。
「どういうつもりだ?星井」
「花本、お前はあの事件からずっと高橋さんの事しか考えてなかった。俺は、俺は……。」
「俺は?」
「お前の、ユウスケの一番になりたかった!」
衝撃的な事実を聞かされた。嘘だろ、そんなわけは無い。
こんな馬鹿げた話があってたまるか。星井は、いや。
アオイは、きっと夢を見ているんだ。こんなことを言うのだったら。僕の1番になりたいという独占欲に似た思いに至ったことは、今まで無かったのに今日はどうしてそういうんだ。
無論その一番というのが恋愛ではなく友情としてのなんだろうが、にしてもおかしい。この思いをどうにか、目が覚めるまでに、アオイから取っ払わないと。
アオイが、これ以上道を踏み外さないように──。
【 目が覚めるまでに 】
私のお母さんは目が覚めるまでに
結構時間がかかる、
朝起きてきたと思えば、半分寝ているし、
朝ご飯を食べている途中に寝ることなんて日常茶飯事だ。
「 母さん、起きて 」
そうやって、何時もお母さんを起こすのは私の役目
まぁ、私が起こしてもちゃんと起きないけど…
でも、こんなお母さんでも、尊敬する所はあるのだ。
帰ってきて疲れているはずなのに
当たり前のようにご飯とかの準備をする。
それに掃除とかも、全部完璧な所。
なのに朝はびっくりする程弱い。
神様が完璧な人間は作れないと言っていたのはこういうことか、
私のお母さんは、朝だけ弱い凄い人、
そんなお母さんが私は大好きだ。
※ 没 !
目が覚めるまでに
私の元へ来てください。
そして、ずっと傍に
いてくださいね。
目が覚めるまでに
日中、我慢していた感情が
夜になると溢れ出てくる。まわりと自分を比べてしんどくなって。そんな自分も嫌いになって。心配性だから、自分に自信が無いから他人の少しの言動も気になってしまう。
どうか、目が覚めるまでにはそんな自分も少しは好きになれていますように…
目が覚めるまでに
何度も何度も口に出したのに、もうその名前を思い出せずにいる。覚醒しだす脳みそを心で押さえつけながら、貴方の名前を忘れてしまわないように、必死の思いで手を伸ばした。だけれど今の私に残っているのは、もがいた後の腕の疲労と渇いた喉だけだった。確かに出逢ったはずなのに、その記憶さえも朝靄と共に消えていく。夜になればまた出逢えるはずだと蜘蛛の糸のように希望へ縋る。私にはもう、夢を見ることしか残されていなかった。
ねぇ、お願い
私の目が覚めるまでに、どうか私をさらって行って…
貴方の話す言葉がすべて愛の囁きに聞こえるうちに
どんな人混みにいようと貴方だけに光が差して見えるうちに
貴方への想いに何の曇りもないうちに
あばたがエクボに見えるうちに…
貴方が白馬に乗った王子様に見えるのは
貴方の香りが私を惹きつけて止まないのは
貴方以外の人が見えないのは
すべて神様がかけてくれた「恋の魔法」のせいだから
だから、お願い
私が魔法から目が覚めぬうちに…
私をあなたのものにしてちょうだい
『私の目が覚めるまでに』
【目が覚めるまでに】
目を瞑っている間、周囲で何かが起きていてもアタシは気がつけない。…もしかしたら数分前まで、誰かがアタシに触れられる近くまで来ていたかもしれない。
なんて悪い想像が浮かんでしまうくらい、ベタベタした暑さが部屋に漂う寝覚めの悪い朝。
痛みで目が覚める。足元の猫が寝返りに驚いて噛みついてきたらしい。いたい、と呟いて身じろげば猫はベッドから飛び退いた。気怠い腕でスマホの充電コードを手繰り寄せてみると、夜の3時だった。朝になれば出勤せねばならず、睡眠不足は命取りになる。
もう一度横になるが、頭は冴えてしまっていた。思い出したくもないクソ上司の言葉が頭を占領する。些末なことを咎められ、些細なミスで尋問され、暴言を浴びせられた。そんな映像が生々しい感情を伴って再生された。
到底眠れそうもなかった。起き上がり、キッチンへ向かうと、飴色の瓶を取り出した。足にフワフワとした感触があった。猫がついてきていた。
窓辺に椅子を持ってきて、暗い部屋で、コップに注いだウイスキーをゆっくりと飲み下した。猫も窓辺に横たわった。窓の外には暗い雑木林があった。月は見えなかった。喉の奥が熱くなり、頭がじりじり炙られる心地がした。
コップをシンクに置いて、もう一度寝床に潜った。猫は来ない。まだ窓辺にいるらしい。今度は眠りにつけそうだった。目が覚める前に、すべてなかったことになればいいのにとぼんやり思う。すべて、とは何を指すのか、と自問自答する間に意識は沈んでいった。
目が覚めるまでに。
目が覚めるまでに?
目覚めなくていいのに。
ずっと眠っていたいから。
そうでなかったら、
寝てる間に心臓が止まって欲しい。
もう現実なんて見たくないんだ。
ずっと夢の中でいい。
現実に疲れてしまった。
やっと居場所ができたと思ったのに。
その居場所は今では居づらくなってしまった。
居場所なんてない。
そんな優しい場所は私が入っては壊してしまう。
そんな優しい場所にいると「ここはお前のいるべき場所では無い」と言われているようで。
疲れてしまったんだ。
もうどうしようもなくて、疲れてしまった。
けれど、私が疲れたって。
何もしたくなくたって。
現実世界は回り続けてる。
だから、隠すんだ。
いつも通りに振舞って。
いつも通りに笑って。
この辛さや苦しさを悟られないように。
もうそれすら疲れてしまったけれど。
でも、やらなきゃもっと嫌われそうで。
怒られそうで、怖い。
だから、死んでしまいたい。
毎日のように死にたくなる。
一度「死にたい」と思ったら、どんどん溢れる。
どんどんとネガティブに考えて。
「私なんて」って。
もう、私なんて生きてる価値もないのに。
周りに迷惑をかけてばかりで。
猫を被らないと生きていけない。
死にたい。
もう、存在ごと消えてしまいたいのに。
私には死ぬ勇気なんてない。
私には生きる余裕なんてない。
だから、生きてる。
こんな迷惑の塊、生きてたって。
でも、死んだらもっと周りに迷惑だろう。
それに、もし、失敗したら?
死ぬのに失敗してしまったら?
余計に辛くなってしまうだけだ。
だから、それは私が我慢すればいいだけだ。
ずっと自分に言い聞かせてる。
「私より辛い人なんていっぱいいる。」
「まだまだ大丈夫だから。」
泣きたいけど、泣くのも我慢して。
誰にも話せないことだから。
何もかもを我慢するんだ。
生きなくてはいけないから。
「いい? 私が起きてくるまでに、部屋を片付けておくのよ。それから、洗濯もしておいて。そうそう、ねこのケージの掃除も忘れずにね。もちろん、私の宿題もやっておくのよ。わかった?」
お嬢様はいつものように言い残して寝室に行かれました。
なにがゴミかもわからないほどに散らかったお部屋を片付け、整理整頓して整えました。
毎日整えているのに、翌日には阿鼻叫喚の地獄絵図になっているのは何故なのでしょうか。
積み上がったお洗濯も済ませました。今日はいいお天気だったので、きっとよく乾くでしょう。
お嬢様は試着で袖を通したものまでお洗濯に回されるので、いつも大量の洗濯物が出ます。こんなに洗濯をして、却って生地は傷まないのでしょうか。
お嬢様の愛猫たちのお部屋の掃除も致しました。吐いてしまった子がいるらしく、ケージが汚れていたので、水拭きし、アルコール消毒致しました。
猫たちは元気でしたので、体調に問題はなさそうです。
ついでに猫じゃらしで小一時間ほど遊んでおきました。
最難関の宿題もなんとかやっつけました。お嬢様はプライドが高く、提出する宿題に間違いがあることが許せないのです。故に私は、お嬢様の答え合わせ用の解答を、正確に作り上げなくてはなりません。お嬢様も学年が上がってきて、私も解答づくりが一筋縄ではいかなくなりました。2時間ほど費やし、なんとか作り上げました。
お嬢様、あなたに申し付けられたことは全て終わらせましたよ。
どうか、そろそろ、目を覚ましていただけないでしょうか。
お嬢様。
(お題:目が覚めるまでに)
「『目』のネタなら、2回心当たりがあるわ。
4月6日の『君の目を見つめると』と、7月10日の『目が覚めると』。これで今年度3度目か」
目が覚めるまでに、全部終わってる。
3人目が覚めるまでに、酒酔い覚ましの料理を。
ところで「さめた目で見る」は「醒めた目で見る」とも書くらしいが、「覚めた」との違いは?
他には何だろう。某所在住物書きはスマホで天気予報を確認しながら、ぽつり呟いた。
目が覚めるような暑さではある。それが続くらしい。秋までに何度「暑い」と言うだろう。
「『目が覚めると』のハナシは、たしか去年『正気から目が覚めると』ってネタで書いたわな」
さすがにそれは今回無理か。物書きはガリガリ頭を掻いて、ため息を吐いた。
で……今回投稿分の物語の引き出しは?
――――――
「体温超えの気温」や「酷暑」、異次元の避暑対策が求められる昨今。いかがお過ごしでしょうか。
せっかく適切に冷ました夜の自室が
目が覚めるまでにガッツリ常温に戻ってしまって
暑さによる寝相の悪さで足をカラーボックスにぶつけた物書きが、こんなおはなしをご用意しました。
前回投稿分につながるおはなしです。
都内某所の某稲荷神社、深めの森の中にあるために少し涼しいその宿坊兼用一軒家に、
神社の近くで熱中症にかかった雪国出身者が、ひょいひょい、担がれ収容されてきました。
熱失神。Ⅰ度の軽症。
ぐったり目を閉じたままの雪のひとは、名前を藤森といい、神社のひととは顔なじみ。神主の娘さんが店主をしている茶っ葉屋さんのお得意様、常連なのです。
「随分、弱っていますね」
美しい髪の店主さん、細い片腕で大の大人を俵担ぎ。涼しい顔してそのまんま、ひょいひょい、ザ・古民家な廊下を歩いて奥のふすまへ。
ふすまには画用紙が1枚貼られていて、そこには桔梗色のクレヨンで、こんな文字が。
『びょうしつ
ねっちゅうしょう てあてちゅう』
「心魂の清い、貴重で善良な参拝者です。しばらく寝かせて、休ませてやりましょう」
部屋の真ん中あたりに整えられた敷布団に藤森を置いて、タオルケットをかけてやると、
店主さんの子供が尻尾振ってコンコンと……
「コンコンと」?
「ねっちゅーしょー、ねっちゅーしょー!」
くぅくくくっ!くわうぅっ!
店主さんの子供はふさふさ尻尾をビタンビタン、かわいい耳をペッタンコ。
「冷やさなきゃ!さまさなきゃ!」
小ちゃな小ちゃな舌でもって、藤森の頸動脈のあたりをベロンベロンに舐め倒します。
なんということでしょう。稲荷神社に住まう茶っ葉屋の美しい店主さんの正体は、人に化ける妙技を持つ不思議な狐だったのです!
そしてその子供も、コンコン、言葉を話す不思議な不思議な子狐だったのでした。
店主さんが細腕1本で大人を担げたのも、子狐がコンコン人語を話しているのも、全部全部、稲荷の狐の不思議なチカラのおかげだったのでした。
「あらあら。そんなに舐め倒しては、目が覚めるまでに首がビチャビチャになってしまいますよ」
「だいじょーぶだよ。これで、冷えるよ」
「塩分と水分補給用の、小鉢と飲み物を用意してきます。それまで一緒にネンネしてやりなさい」
いい子に、いい狐に待っているのですよ。
美しい稲荷のお母さん狐は、コンコン子狐を愛おしく撫でて撫でて、部屋から静かに出ていきました。
「ネンネしない!ねっちゅーしょ、手当てするっ」
すぅすぅ寝息をたてる藤森に寄り添う子狐は、尻尾振ってご機嫌に、首筋舐めて扇風機の風当てて、熱中症患者を看病するお医者さんごっこ。
藤森の目が覚めるまでに、長いことずーっと、小ちゃい舌でベロンベロンしておったとさ。
「目が覚めるまでに」
子どもが昼寝している間にどれだけ寝られるだろうか
午後になると本当に眠い