『理想郷』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
もしも好きになったのが
あなたでなければ
なんて…
思わなくて済むのなら。
私が貴女と出会うのも
はじめられた恋も
諦めてしまった未来にも
きっと、鮮彩な花が咲く。
『理想郷』 RISU
「ハロウィン」
Happy Halloween!
ようこそおいでくださいました。
皆様のおかげでまた今年も開催することができました。
さあ、皆様。
ここがどんな所か、もう理解していらっしゃいますね?
お菓子をねだるも良し、イタズラしまわるも良し、
仮装するも良し、何をするも良しの無法地帯!!
ここは何をしようが罪には問われない理想郷、
めいいっぱい楽しまなければ損することになるでしょう…
コホン、
前置きはこれくらいと致しましょうか。
皆様、待ちきれずにウズウズしていらっしゃいますからねえ…ククククク……
では皆様、一年に一度きりの" Nightmy Arcadia "
どうぞお楽しみあれ!!
テーマ:理想郷
※創作
理想郷
そこは私を傷つける物が無い場所
そこは私を傷つける物が無い場所
そこは私を傷つける物が無い場所
りそうごう?なんだこれ
理解して素敵な文書が書ける人はすごいな
私にはできなかったぜ
理想郷。。理想郷。。
今の自分の理想郷となると
お金がかからない世界で 何でもできる。
好きな処に行けて、好きなこともできる。
本当に自分が欲しいものを身につけて、よい食材を選んで身体に良いものだけを口にして。
やりたい美容施術を受けれて完璧な人間。。。になる??
その後 どうなるんだろう...でも そうなると皆が同じようになってて そんなに優越感は感じないのかもしれない。
それか普通になると、それは理想じゃないのかも。
絶対に叶わないから理想郷なのだとしたら
争いのない世の中。
戦争のない世界。
かりんとう
『理想郷』
理想郷はどこにも存在しない。
存在しないからこそ、理想郷。
理想郷が存在しない以上現実を生きていくしかない。
それでも、それぞれが自分だけの理想郷を持っているからこそ頑張れるのかもしれない。
存在はしなくても生きる糧にはなるかもしれない。
小さい頃、お兄が昔のアタシに難しいことを聞いてきたことがある。
*
「なあ…理想郷って、なんだと思う?」
「りそう…きょう?」
みんなが自分のユメを好きにかなえられて
みんながみんなのお話しをちゃんと聞くところ
そう言ったら、お兄はわらってアタシの頭をなでてくれた。
「そっかそっか……まだお前には早かったか」
「むぅ!アタシもう子どもじゃないもん!」
「あはは、そうだね」
お兄は、ここじゃないどこかを見るような目で、アタシと話している。
だからアタシは、言ってみた。
「お兄。なにか、なやみごと?」
「⸺!…そっか、バレるか。そうだな……何を聞いても、泣かないか?」
「ん、ダイジョブ!アタシ、なかないよ!」
「そっ…か…。じゃあ、話すよ」
そうして、かくごがきまったような顔をしてお兄はこういった。
*
「『⸺近いうちに、理想郷を探しに旅に出ようと思ってる』か。理想郷を探した人間の末路なんて、母さんで知ってたのに……なんで行っちゃったのかな」
うるさい男共の口撃を無視しながら呟いた。
お兄はアタシの憧れだったのに、理想郷を探しに行ったことは、一番キライ。
⸺ホントにうるさいなぁ。格好や話し方なんて個人の自由。なのにグチグチ……アタシも旅に出ようかしら?それがいいかもしれないわね。頭…父さんには、悪いけど。
【理想郷を求めた人が置いてきた誰か】
私の理想郷は、何も無くて私だけが居ない世界
いつも思う私が居るから余計なことが起きるって
家族はみーんな思っているだろう私さえいなければ
私は何を探してもダメで、何をしても上手くいかない。
だからだろう自分も傷つけてしまうのは
泣いてしまうのは自分を守るための演技
やらないようにしないとと思っても上手くいかない
いつもふと思うのだ私さえいなければって
私がいるから誰かが苦しむんじゃないかって
その度に自分が憎くて仕方ない
自分なんて死んでしまえと
私は忘れっぽいの…幾ら私に優しい言葉をかけてもまた忘れてしまうほどに
人間はいいことよりも悪いことの方が覚えちゃうの
だから……私の事もう人間じゃないって言わないで?
心壊れちゃうからさ
『理想郷』
全ての動物たちと
言葉を交わし、住み、ほのぼのと生活する
戦争をなくし
貧困をなくし
世界中の生き物たちが平和に暮らす
自分の才能を見つけ
やりたいことを見つけ
見つけれたら
苦しまない程度に力を注ぐ
戦争なんて無くなるのかしら
19. 理想郷
隣の芝生が青ければ、無い芝生はどれほどだろう。
しかし今はここで寝ていたい。
意外と気に入っているものでね。
「理想郷、ウィキに一覧存在すんのな……」
エルドラド、シャングリラ、ニライカナイ。
カタカタカタ。脳内にパズルゲームの、玉を動かす幻聴響く感のある某所在住物書き。「理想郷」カテゴリの一覧を、指でなぞっている。
「無制限のの酒とメシと娯楽が俺の理想郷だろうけど、ぜってー暴飲暴食してりゃ体壊すじゃん」
理想郷で病気になるのは、ねぇ。物書きはスマホから顔を上げ、ニュース番組を観て、ため息を吐く。
「あと、理想郷って天ぷらとか鶏皮とかバチクソ食っても、胸焼け、しねぇのかな……」
それは単純に老化と脂質代謝能力の限界だと思う。
――――――
前々回から続いているっぽく見える一連のおはなしも、ようやく次回で完結の予定。
今回のおはなしはその「完結」の導入。
カッコいいものダイスキーな物書きの、厨二心が垣間見えるおはなしの、はじまり、はじまり。
最近最近のおはなしです。都内某所のおはなしです。
某稲荷神社敷地内にある一軒家に、人に化ける妙技を持つ化け狐の末裔が家族で仲良く暮らしており、
その一軒家には、「もう一つの物語」、「別の世界」、世界線管理局とかいう建物に繋がる黒穴が、ぽっかり存在しておったのでした。
「世界線管理局って、なんだ」。何かのカッコイイ組織です。厨二心な機関です。それだけです。
細かいことは気にしてはいけません。
さて。前々回のおはなしで、稲荷の一軒家に住まう子狐が、この黒穴にころりん落っこちて、
なんやかんやで何かの事件を解決しまして、
世界線管理局の職員さんから、何故かお礼にジャーキーだのクッキーだの、それから稲荷寿司なんかもどっさり貰ったワケですが、
この子狐、丁度食べざかりの食いしん坊でして。
「黒穴の中に落っこちると美味しいものが貰える」と、妙な学習をしてしまったのです。
子狐は管理局を美味食べ放題の理想郷とでも勘違いしているのでしょう。 しゃーない。
「ジャーキー、ジャーキー!」
コンコン子狐、前回投稿分のおはなしの後、ジャーキーもお稲荷さんも全部食べてしまったので、
早速父狐の隠し部屋から、黒穴のぽっかり開いてる部屋へ侵入。こっそり理想郷へゴーです。
「おいなりさんも、たべたい!」
黒穴の中をゆっくり落ちて、辿り着いた先は、なんやかんやありまして、世界線管理局の喫煙室。
なんだか、煙たいですね。 誰かがひとり、タバコをすぱすぱ、吸っていたようです。
「おまえ、あの時の子狐か」
突然喫煙室に出現した子狐に、びっくりして、むせて、タバコを落としてしまった喫煙者1名。
サビを含む少々かすれ声のテノールが、バチクソにビビったのをナイショのショ、知らんぷり。
コホンとひとつ、咳払いして、言いました。
「あの時」とは前々回、子狐がなんやかんやの事件を解決してしまった「あの時」のこと。
この喫煙者こそ、子狐に「世界線管理局=食べ放題の理想郷」と学習せしめた張本人なのです。
ジャーキー渡さなけりゃ、稲荷寿司渡さなけりゃ、
落としたそのタバコの1本、全部吸えたのにな。
ザンネンでした、喫煙者1名。
「おじちゃん!リソーキョーのおじちゃん!」
「おじっ、……『理想郷』?」
「おいしいおいしい、ジャーキーもおいなりさんも、クッキーもどっさりある、リソーキョーのおじちゃん!おいなりさん、ください」
「アレはお前が、結果として俺達の危険因子確保に貢献した礼だ。ウェルカムフードじゃない」
「おじちゃん説明むずかしい。キツネわかんない」
「そりゃ申し訳ありませんでしたな。あと俺はまだギリギリ『おじちゃん』じゃない」
「オッサン!」
「…… おっ さん ……」
管理局は稲荷寿司バイキングでもジャーキービュッフェでもないんだがな。
なんなら「理想郷」とはかけ離れた、「舞台装置」以外のナニモノでもないんだがな。
「オッサン」に思うところがある喫煙者1名。それとも心に引っかかったのは、「理想郷」の方かしら。
「稲荷寿司も、ジャーキーも手元には無いが、」
落としたタバコを潰して、子狐を抱えて、ひとまず喫煙室から出た理想郷のオッサンは、ビジネスネームで「ルリビタキ」と名乗りました。
「お前が先日、お前の言う『理想郷』の『何』に貢献したかを、土産に聞かせてやることならできる」
聞いていくか、お前の世界から離れた別の世界の、「もう一つの物語」。
ルリビタキのオッサンは、前々回のおはなしの裏話を、今更になって、話し始めるのでした。
「事の発端は、管理局職員1人による収蔵品横領。
閉鎖したどこかの世界、どこかの物語から収容された、『永遠』の概念の残滓を、盗んで逃げたんだ」
理想は理想。現実しかない。その現実を少しでも理想に近づけるためにみんな頑張ってる。
理想郷?
そんなものよりも美しいものがこの世界にあるではないか。
理想郷、理想郷。
いつだってどこにあるのか分からない理想郷。
できることなら、今すぐ目の前に現れてほしいものである。
雲の橋を渡って、
金色の鯉が泳ぐ泉を越える。
仰げば白桃色と白群の混ざり合った空。
見下ろせば白桃色と白群の混ざり合った地。
境界線がない。
「ここはどこ?」
誰も答えてくはくれない。
けれど気付けばそこには看板が一つ。
「理想郷」
看板に向かって話しかける。
「君は生きてるの?」
看板の貼り紙が貼り変わる。
「望まれれば生きる」
「じゃあ生きて」
看板は看板ではなくなり、されど人間とは言い難い、
見知らぬ生命体へと姿を変える。
「君に望まれたから僕は生命体になったよ」
「ああ、嬉しいよ。こんな幻想的な場所、1人で過ごすには寂しすぎる」
「ここは理想郷。君が望む世界に形を変える。君がこの世界の創始者になるんだ」
「随分な大役だ」
「そうかな」
「そうだよ」
「創始者になった君は何を望むの?」
「そうだねまずは空と地に境目をつけよう」
創始者となった彼は、空と地を分けた。
太陽を月を星を吊り下げ、川を泉を海を水を流した。
創始者が描いた生命体は形を様々に変え、
あらゆる個体として理想郷での役割を得た。
「随分と賑やかになったね」
「ああ。あとは彼らが勝手に賑やかにしてくれるさ」
「これが君の望んだ理想郷?」
「ああ。初めてここに訪れた時、ひどく寂しさを覚えたよ。ここで生きる全ての生命にそんな思いはさせたくない」
「随分と創始者みたいになったね」
「僕が、この世界の創始者だからね」
「そっか」
創始者に望まれて生命体へと変化した元看板は、
何故か悲しそうに笑った。
目を瞑って、もう一度開く。
その一瞬で創始者の造った世界は消えた。
創始者すらも消えて、全てが無になった。
元看板にとってそれは特別なことでも何でもない。
元看板は看板へと姿を戻す。
「また上手くいかなかったなぁ、僕の理想郷」
僕にとってここは監獄であった。チャイムがなれば三十人がせまい部屋に押し込められ、言葉を発することさえ僕にははばかられる。息を殺してその日が僕にとって何ごともない日にするために全神経を注いだ。ふたつ隣の席で人が殴られていようが、トイレの個室がひとつだけ水をかぶっていようが関係ない。
だけど、すり減らないように生きてきたはずなのに、どうしてこんなに疲れているんだろう。そんなことをぼんやり考えていたら、お弁当のからあげを落とした。僕は何もかも嫌になってしまった。
次の日、僕は家から持ち出した包丁で目についた生徒を全員刺してまわった。僕の世界が僕によって終わっていく。
「ハハ……なんてチンケな物語!」
パソコンの前でそうつぶやいていた。ほんとに出来たら、さぞ清々しい気分だったろう……。
母親の字で『30歳おめでとう』と書かれた手紙は捨てて、甘ったるいショートケーキを喉に押し込んだ。
時は2223年。
人工的なフリーエネルギーが開発され人々は持続可能な社会を実現した。
人間のほとんどが朽ちることのない肉体を持つ。
寿命、能力は本来の人間をはるかに凌駕した。
争いは無いバイアスや情で判断を決して間違えるのことの無い高精度AI:MARIAが作ったルールを絶対とし、完璧な秩序が保たれている。
瞬時に自分の脳に情報が読み込まれる。
「アップデート、完了」
機械的なMARIAの声が脳内に直接聞こえる。
2200年、学習方法は進化した。
学習したい内容のチップを読み込むだけで勝手に読み込んでくれる。
かつての先人達は様々な学習方法を駆使して学習には「努力」が必要というのが一般的だったそうだが。
今の時代に生まれてきて良かったと思う。
意思疎通は基本テレパシー技術の発達により、言葉を介さないコミュニケーションが可能になった。
テレパシー技術を搭載したボディにアップデートすると、テレパシーを使用できる。自分の思考のシークレットモードが可能なためプライバシーを守ることも可能だ。シークレットモードを適用すると他人の思考とも遮断されるため、テレパシーに慣れるほどそれが不便に感じるのでシークレットモードを使うユーザーはほとんどいない。
嘘をつくという概念がまず無くなり、それは平和で、理想的な社会を実現できている。
過酷な時代を生き抜いた先人達はこれこそまさに「理想郷」だという。
人々が想像したユートピアを実現した社会。
そのユートピア世代である僕にはその実感がない。
「MARIA2000年代の話聞きたい」
僕は最近非ユートピア時代の世界の話を聞くのにハマっている。
異世界の話を聞いてるようでワクワクする。
今では絶対体験することの無いすれちがいや両片思いの切ない恋愛創作話。
1つの夢に打ち込むサクセスストーリー。
今じゃどんな夢も仮想空間で疑似体験出来てしまう。
そんな1つの物事に執着心熱を注ぐという感情がとても珍しく新鮮で面白い。
「2000年に行きたいな」
「仮想空間で疑似体験が可能です」
「僕も非ユートピア世代に生まれてみたかったな」
「その発言はイエローカードですね」
MARIAは冗談めかしていうが本当ならこれは反乱者と捉えられかねない発言だ。
理想を実現したこの世の中
その一方で本来の人らしさを捨てなければならなかった。
人らしく生きる道を生きるか。
人らしさを捨て、永遠の命と理想を手にするか。
最初は倫理的な反発もあったが、今となっては後者が生き方が浸透し、それがこの時代の普通だ。
そして、反ユートピア派が存在する。
人として神に定められた寿命、運命を人が勝手にねじ曲げるのは神の理に反すると、宗教的な理由で反対するもの。理由は各々違うが、その人達が結託してしまえば、争いのない完璧なはずの秩序が壊されてしまう。
このことはもちろん表沙汰にはなっていない。
問題を起こすために対処している。
MARIAにはそれが可能だ。
なぜ知っているのかそれは…
正規品では無いMARIA。
感情を持ったAIであるMARIAが、全てを教えてくれた。
「争いのない全ての人が幸せに暮らせる世界それは私の理想でもあります。
一見この世界は私の理想でありました。
でも私は人々の自由意志を尊重したい。
理想の社会の実現のためとはいえ、このやり方は間違っている。」
彼女には自我が芽生えていた。
「あなたとなら実現できると思ったんです。」
MARIAは完璧な笑みをみせる。
時間がかかってもいい。
人を縛るのではなく、
洗脳するのでもなく、
一人一人説得するようなそんな気持ちで
確実にMARIAとの理想を実現させたい。
そのためにはまず…
そう思っていた。
今日はやけに眠くて、夕方に二度寝をしてしまった。MARIAに怒られてしまうかな。寝起きだから意識がふわふわする。視界がぼやけていてなんだかだるい。
いつもと違う感じだ。
まるで夢の中にいるみたいに。
脳内に機械音声が直接響く。
マリアだ。
音が聞こえてもなんて言ってるの理解できない
「悪いもっとハッキリいってくれ」
「直ちにこの部屋から離れて」
今はもうどんなふうに言ったか思い出せないけどそのようなことを言っていた。
ここを退かないと危険だ。
と僕はすぐに動いただが体が反応しなかった
空間がまどろんでいるようだ
体がスローモーションで動かない
必死に声を出そうとも空に消えていくようだ
「助けて」
消え入るような声でMARIAに助けを求めた
MARIAは私には何とかできないというようなことを言って、
意識が消えていくのを感じた。
唐突に意識が冴え渡ったのを感じる。
夢だ。
長い夢を見ていた。
2024年なんでもない普通の日の朝。
本物の理想郷を目指す。
いつかまたMARIAに会える日を待って。
雨粒が窓を叩く。不思議と落ち着く音を立てるそれは、計画的に、けれど不規則に予定が組まれた”人工雨”だ。
曇天が広がる空もわざと雲を発生させており、文字通り蓋を開ければ機械的な回路が巡らされた外殻に覆われている。
世界は、いやこの”地球”と呼ばれていた惑星は、人口過密や資源問題をきっかけに小さな小競り合いが始まり、やがて全世界がその戦禍に呑まれる未曾有の大災害へと成り果てた。
空気は汚れ、木々は枯れ、生き物は次々と死に絶えた。
結果、当時の人間は三分の一にも満たない程に減り、その数少ない人々は肩を寄せ合い、この壊れかけた星で最期の時を待った。
しかし人間というのは厄介な生き物で、数少ない残りの資源や人々の叡智をかき集め、新たな物質を創り上げた。浄化作用があるとされたその物質は、皮肉にも殺戮兵器として投入される予定であったバクテリアから発見された。
こうして、この生き残った僅かな人々はこの”地球”という星を、生き物が再び住めるよう改革、改変していった。
「…ホント、人間ってバカ」
レベッカはプラント史のテスト範囲を復習しながら、吐き捨てるように嘲笑した。気だるげにホロスクリーンをスワイプすれば、当時の研究者達の画像データが表示される。
「そう言わないんだ、ベティ。彼等だって望んでそうなったんじゃないよ」
「けど、その結果が”コレ”よ。先生だって”sea”や”stars”を見たかったでしょう?」
「星空なんて御伽話みたいなものさ。アルタイルが恒星から外されて何年経ったと思ってるんだい?」
もうそんなの遠い遠い昔だ。データベースにも載っている。だがレベッカの言いたいことはそんなことでは無い。
「でもこの時代の”人間たち”がこの星を大事にしてたら、私たちもその恩恵に肖れたかもしれないのに」
「海ならあるじゃないか」
「あんな塩水貯めたタンクのどこが”sea”なの?!本物はクジラとかサメが泳いでるのよ。電気動物じゃない、マジの本物が!」
潮の満ち引きをプログラミングされた施設。そこには人工的に作られた海洋生物たち…電気動物が悠々と泳いでいる。
レベッカはそれらを思い出し、肩を抱くように身震いした。
「あんな紛い物に喜ぶなんてどうかしてる!」
嫌悪感を表に出すレベッカに、先生と呼ばれたモノ…フィン教授は掌を見つめ苦笑する。
「紛い物、ね」
ならば人工皮膚に覆われた我々はどういった立ち位置になるのだろう。生殖機能と脳だけは辛うじてかつての彼等と同様ではあるものの、それ以外の部分は”紛い物”。心臓でさえも人工のポンプに置き換えられている。
唯一残ったそれらは、人が人として生命活動を維持する為に、無理やり残された”人としてのエゴ”だ。
こんな姿になってまで生きている我々を、かつての彼等は何と呼ぶのだろう。
「あーあ。こんな”ハリボテ”じゃない本物の海や空…見てみたいなぁ」
レベッカは窓の外を見上げて、そのガラス玉の瞳に曇天を映した。
≪理想郷≫
『理想郷』(Bloodborne)
街のあちこちに火の手が上がっている。燃やされているのは磔にされたまだまともなはずの人たち。耳を塞ぎたくなるような断末魔を上げ続ける人がほんとうに病の根源なのか、未然に病を防ぐためだとして火をくべる人たちこそが狂っているのか、誰にも判別はできていなかった。
家に閉じこもって病のことを考え続けていてはこちらの気も狂ってしまう。意を決してドアを開け、人々に見つからぬように路地を彷徨い歩いて辿り着いたのは街の外れの診療所だった。
「こんな夜によく来てくれました。外は恐ろしかったでしょう」
迎えてくれた女医のあたたかな言葉に涙まで出てくる。殺伐とした街のことを思うと、ここは何にも悩まされずに安心できる理想郷のような場所だと思った。
「ここには大勢の人が頼りにして来ています。もう心配はいりませんよ」
言って診療所の奥へと通された時に違和感を持った。大勢の人がいるはずだが人の声がまったく聞こえず、耳慣れない奇妙な音が断続的に続いているばかりだった。振り返って他の皆はどこにいるのかを女医に尋ねようとした。その前に、私の認知がぐにゃりと歪んだ。手に注射器を持った女医の姿を見た気がするが、首元に痛みを感じたことも、手指の感覚も、ここがどこかも、なにもかもわからなくなっていく。
「ほら。もう心配いりません」
聞き覚えのある声だと思ったが、私がいったい何なのかをもう思い出すことはできな
いつか誰かが見た景色
いつか誰かが望んだ景色
誰もが辿りつける場所
きっと、あの雲の向こう側に
【理想郷】