『特別な夜』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
準備は整った。
真っ白なテーブルクロスに、キラキラのカトラリー。
硝子のグラスには煌めくシャンデリアの光。
残るひとつ。
メインディッシュはあなたの帰りを待つだけ。
遠くから帰宅を告げるチャイムの音。
今日は『特別な夜』にしよう。
私はそっと背中にナイフを隠し持って、あなたを出迎えた。
いつもこっちからじゃん、誘うの。
いつも会うところで会ったりとか、そういうの。
「いこーぜ」
なのに、そっちから?
いきなり来るんだ、こういう夜。
あんたがつらくない夜になればいい。
こっちの「とくべつ」なんて無視していつもどおりでいいよ。
2024/01/21 特別な夜
今日の夜はちょっと特別
少し高いお酒に
いつもは買わないハーゲンダッツ
いつもよりも早い帰宅だったから
ドラマもリアルタイムで見れる。
いつもより
ゆっくり過ごせて幸せ気分
次の特別な夜まで
アイスは我慢
─────『特別な夜』
少し贅沢をして、自分の好きなものをお腹いっぱい食べる。
温かいお風呂にアロマオイルを垂らし、ゆっくりと浸かる。
お風呂から上がって、ベッドに入り、電気を消してランプを灯し、その明かりの下で本を読む。
そして眠くなってきて、ランプを消して、代わりに家庭用のプラネタリウムのスイッチをオンにする。
満天の人工の星空の下で、良い気分で目を閉じる。
何でもない夜。でも、少しだけ、自分で特別にしてみる夜。
『特別な夜』
特別な夜_24
私は言われるがままに
彼から渡された薬を飲む。
「さぁ 飲め。教授のために。」
そんなことを言われようかと
既に覚悟は決めていたので 丁度良かった。
ごめんなさい 教授。
この実験結果は
レポート出せなさそうです。
上を向き 強引に喉に通すと
カプセルが流れる音が
外にまで聞こえた。
が 何もなかった。
正確に言えば 実験は失敗だった。
だが やはりどの薬にも
個人差はあるようだった。
彼は少々キレ気味に 研究室を後にした。
少し眠気を感じて仮眠をすることにした。
辺りはまだ暗く 肩にはブランケットが…
ん?私はこれを掛けた記憶はない。
『あぁ 起きたかい? 僕の助手よ。
その顔…
何か飲まされたんじゃあないだろうね?』
心地よい教授の声が 私の頭を駆けた。
そして案の定 全てお見通しだった。
『おいで。』
なんだ…。
貴方はどこまで
私のことを見透かしているの?
貴方は申し訳ない顔をして
私にキスをした。
それから
今にもう一度したくなるような声で言う。
『君は研究者である以前に
僕の助手だ。
こんな簡単に人を信じても良いと
教えていないはずだが?』
また眠気がした。
その瀬戸際 彼は間違いなく言った。
『恋情を引き起こせとは言ったが
アイツ 分量を間違えたな。
まぁ良いさ。
おやすみなさい 僕の可愛い助手。』
特別な夜
特別な夜はとくになにかするってわけではない。
何もしなくても、この人と過ごしたいって思っている
人と過ごすだけで特別な夜になる。
特別な夜
特別な夜は、いつもと違う夜。
多分、眠る時だって孤独感を感じることの無い夜…。
恋人や、友達、家族と過ごす夜。
人生生きてるウチは、人と人。
夜って好きだよ
だって僕に寄り添ってくれるんだ
毎日必ず僕の前に現れて
話を聞いてくれるんだ
だけど
僕がいくら泣いても
いくら話しかけても
答えてくれることはないんだ。
星を見ると元気が出るんだ
みんなこれ見て頑張ってるのかなって
でも、
夜しかいないんだ
昼間に出会えたことがないんだ
会いたいけど
会えないんだ
【特別な夜】
何が楽しいのかもわからない宴会を終えて、終電に飛び乗って自宅へと戻れば。消して出かけたはずの部屋の電気が何故か煌々と点いていた。
「あ、おかえり。遅くまでお疲れ様」
にこやかに笑った君がひらひらと手を振っている。想定外の姿に思わず目を瞬かせた。
「来るなんて言ってなかったじゃん」
「うん、言ってない。でもなんか疲れてそうだなぁって思ったから、勝手に来ちゃった」
何だよ、それ。力が抜けてその場にしゃがみ込んだ。相変わらず君には敵わない。
「せめてソファに座ろうよ、ね?」
よしよしと頭を撫でてくれる君の手の温もりが心地よくて、張り詰めていた神経がゆっくりと和らいでいく。――君がいる。それだけでくだらない日常だったはずの夜が、特別な夜に変わるんだ。
静かな夜に
頼りなく照らす街頭
丸いガラスの中
キラキラ光る
まるで…
スノードーム
ゆっくり のびてく
影がふたつだけ。
繋いで
寄り添って…
抱き寄せて
その唇に…
そっと ひとつに重なる…。
あまい髪の匂い
やわらかい
優しさに触れて
離して漏れた
吐息の音…。
この幸せを
手放すこと怖くなるから…
記念日でもない
こんな夜も
愛してる…
そういって
君のこと抱きしめる。
- 特別な夜に… -
あのひとと過ごす
特別な夜は
もう
二度とないという
その寂しさが
今夜も
綿雪のように
心に
冷たく降ってくる
しんしん
しんしん
夜更けとともに
降り積もる
# 特別な夜
特別な夜。
君といる時はいつだって特別だ。
朝だって昼だって、夜だけじゃない。
だけどいちばん特別なのは、
私の誕生日のディナーだ。
彼が不慣れで面白いけど、
かっこよくエスコートしてくれるから。
だから私はこの夜が可愛らしくて特別。
そして今年のディナーも、特別な夜だった。
#『特別な夜』
No.23
今日は久しぶりに夜中に目が覚めた。学園祭やスピーチコンテストの時以来だ。時間は1時17分。いつもなら寝ている時間だ。なんでこんな早くに起きてしまったのか考えてみるとよく分かる。きっと明日…いや今日が大学入試の一次試験の試験日一日目だからだ。今日と明日の試験結果によって第一志望の大学に入れるか決まってくる。そんな大事な日なんだから当然緊張してしっかりと眠れるはずもない。さすがにこの時間から起きているのはこのあとの試験に響くと思い、もう一度布団に入り寝ようとした。しかし、まったく眠ることができない。眠ろうと思えば思うほどに眠ることができなくなる。
「あ、やばい、きっとこのままじゃ寝不足で試験に臨むことになる。最悪だ」と布団にくるまり少し焦りを感じていると、ブーブーとスマホが振動した。アラームはさすがにこんな早い時間にかけていないはずだけどなんだろうと気になり、どうせなら見てみるかと布団から出てスマホを取り、通知を見ると中学時代からずっとの親友からラインが来ていた。
【なあ、今日の試験って制服だっけ、私服だっけ?】
とどうでもいいというか昨日先生から説明のあった内容についての質問が来ていた。見てしまったものは返そうと
【今日は制服で行けって担任言ってたぞ】
と返信する。すると、
【早っ!なんでこんな時間に起きてんの?いつも寝てるじゃん】
とお互い様だろと思うような返信が返ってきた。全く眠れそうにもないのでちょっと付き合ってやろうと返信をする。
【なんか緊張して眠れなくて。】
と送った。すると、電話の発信音が聞こえ、画面が切り替わった。どうやらその親友が断りなく電話を掛けてきたようだった。電話に出ると開口一番、
「お前国立志望だもんな。しかも東京の大学。今日テストあるもんな」
と言ってきた。そう言えばこの親友は地元の私立大学志望だから今日の試験は受けないのかと思い出す。
「そうだな。今日で行けるかどうか決まっちゃうかも知れない」
一応このテストの配点は圧縮されるので最悪な結果でも、ある程度は戦える。だけれどもその時点で他の受験生とは大きな差がついてしまう。
「そりゃ緊張もするよな。だけどお前なら大丈夫だよ。」
その親友は気楽な感じでそう言ってきた。その態度に少しイラッとしてしまい、
「なんでそんなことが言えるんだよ」
少し精神が不安定な状態になってしまっていた俺はなぜか強い口調でそんなことを言ってしまった。すると、
「俺はお前が必死に勉強してるの見てきたから分かる。」
と親友が言った。そして続けて、
「努力は裏切らないって何より言ってたのはお前だろ?お前は努力してきた。それが何よりの証拠だよ。だから大丈夫。」
その言葉は中学高校と一緒に過ごしたその親友の言葉だからこそ俺の心に強く響いた。そうだ俺ならきっと大丈夫。俺は一言、
「ありがとな。お陰で気が楽になったよ。おやすみ」
と言った。
「ああ、おやすみ」
という返事を聞きそのまま電話を切った。電話を切ると、またスマホの画面はラインの画面に戻り、俺の返信が一番下に表示されていたままになっている。ブーブーとまた振動すると、その下に新しく、
【ファイト一発!】
とその親友からの返信がきた。一発で試験が終わるわけじゃないんだけどなと考えながら布団に入ると、先程までの眠れなかった感覚はどこかに行き、不思議と安心感が湧き出てきた。それに加えて緊張はなくなり、なんとかなるさと少し楽観的な考えさえ湧いてきた。そこまで長い時間ではなかったが、この夜は俺が大学生になったときにも、大人になっても思い出す。そう確信するほどにこの夜は俺にとって最悪な夜から、特別な夜になった。そう思うくらいあいつの言葉は力を秘めていた。時間は1時58分。俺はアラームがオンになっていることを確認し、目を閉じる。明日の試験に挑むため。親友の言葉を胸に秘めて。
特別な夜
クリスマスイブの日の夜
快晴の日の満月
誕生日の日の夜
試験の合格発表がある日の前夜
大切な人との待ちに待った食事会の前夜
明日プロポーズをすると決めた夜
しんしんと降りしきる雪を見上げながら
はぁーっと白い息をついて。
辺り一面銀世界の中に私ひとり。
暗い空の中にもキラキラと光輝く星々が空一面に見える。
それでもこの世界に今だけは、私ひとりだけ。
これはうれしさなのか、もの寂しさなのか。
気がつくと冷たい地面に大の字になって寝ていた。
・・・つべたい。
暗い空が眼前を埋め尽くし、冷たい空気が顔を冷やす。
深呼吸のように思いっきり息を吸い込んだ後、吐き出す。
あぁ。冬が きた。
特別な夜
はぁ、とひとつため息を零す。今日も修行を終える頃には森の生き物たちはすっかりと寝静まっていた。そんな中、ぽつんと光る小さな小屋を目指して重たい足を動かした。
「ただいま戻りました。って、何これ!」
帰宅するとすぐに、普段とは違ったいい香りが鼻をくすぐった。目線をテーブルに移せば、一際目を引く鶏の丸焼きに、香ばしい匂いのガーリックトーストや、生ハムの乗ったサラダ、僕の大好きなミネストローネまで用意されている。
「ああ、おかえり。今日もご苦労さん」
キッチンから珍しくエプロン姿で出てきた師匠は、普段の鬼のような形相がどこへいったのか、柔らかい笑みを浮かべている。
「あの、これって……」
「これすごいだろ? 今日はお前がここに来て五年になるからな。普段はこんな盛大にやったりしないが、今日くらい良いと思ってね」
話しながら目の前に来た師匠は、やはり何もかもがまだまだ大きい。その大きくて優しい手で頭を撫でられると、修行中に張っていた糸がふっと解けるようだった。
「大きくなったな」
「まだまだです」
「ははっ、わかってるじゃないか。さあ、冷めないうちに早く食べようか。まだ肉団子とエビフライがあるんだ。運ぶのを手伝ってくれ」
「はいっ!」
一生忘れられない特別な夜は始まったばかりだ。
満天の 星空仰ぎ 息を飲む
光線放つ 流星の嵐
#特別な夜
特別な夜
今日、中秋の名月なんだって
……え?いやいや、あの中秋の名月だよ!?
普通の満月とは違うんだよ?
かの夏目漱石でさえ、こんな特別な夜に
「月が綺麗ですね」
なんてキザに言えないって!
「月きれいすぎない?」
くらいフランクになっちゃうって!
あーもーごめん!通話切らないでーー……
……んー、そうだよ
君と見たいからかけたんだよ、悪い?
…………
……分かってるって
話しかけただけだもん
冗談だって
え、ほんとに本気にしちゃったの?
……なわけないじゃんー!
これからの未来を歩く私が、
……君と月見るわけないじゃん……
…………ごめんね
……うん、楽しんでくる!
だから、……おやすみなさい
すきだよ。
あは、冗談
『特別な夜』
「ねぇ、お母さん」
「うん?」
こうやって布団を横に並べて寝るのも、もう当分ないのかもしれないと思うと胸がギュッとなる。
灯りを消した部屋の天井を私は見つめた。
「お父さんと結婚する時さ、どんな感じだった……?」
「何よいきなり」
「いや、聞いたことなかったなと思って」
さっきまで冷たかった布団がやっと体温で温まってきた。
「どんな感じって言われてもね」
「ほら……緊張したとか、眠れなかったとかさ、怖かったとか逃げたくなったとか……」
私がそう言うと母が吹き出して笑った。
「何で笑うのよ」
「だって前向きな気持ちが1つもないじゃない」
「まぁそうだよね。お母さん、私と違ってめちゃくちゃ前向きだもん」
「そう。だから結婚する前の晩も、自分でもびっくりするぐらいぐっすり眠ったわよ」
押入れに仕舞ってある母の若い頃の写真を思い浮かべてみる。
「なんか想像つく」
「でしょ? で、ちなみにさっきのは胡桃の今の心境?」
「うーん……緊張とか眠れそうにないとかはそうなんだけど、逃げたいかと言われると分かんない」
「まぁ感情なんてそうハッキリと言葉に出来ないものよ」
「何でお母さんは怖いと思わなかったの? 私なんて結婚するのは彼よりむしろ私の希望だったのに、今になって少し考えちゃってるっていうのに……」
少し間があったあと、母が口を開いた。
「人はね、知らないものが怖いのよ。知らないから最悪の想像をするの。最良の想像をすればいいのに大抵はそうならない。これは私もそう。でも一度知ってしまえば、実際は案外大したことないって思えたりするものなのよ」
「そういうもの?」
「そういうもの」
母のこういうはっきりとした物言いは、いつも不安ばかりを募らせる私の気持ちを落ち着かせてくれる。
「ねぇ……」
「うん」
いつの頃からかできていた天井の染みを眺めながら私は言う。
「あのさ。私、生まれてきて良かった……」
「どうしたのよ突然」
昔、母に放った一言が頭をよぎる。
「そう思えるまで時間がかかったけど、やっと言えそうな気がした。あの時言った言葉は無かったことにはならないと思うけどさ……」
「ううん。あなたが今そう思っているだけで十分」
天井の染みが滲んでいく。
そんな私に気づいた母からお叱りが飛んでくる。
「ちょっと。明日、目が腫れたらどうするの」
「うん、分かってる。明日のためにすごく準備してきたのに全部台無しになっちゃう」
「分かってるなら早く寝なさい」
私はいつまで経っても母の前では子供のままだ。
「……おやすみ」
「うん。おやすみ」
こっちに向いた母の背中を見るように、私は体の向きを変えた。
羽毛布団に丸まった母の背は、昔はもっと大きく見えていたような気がする。それだけ私が大きくなったんだろう。
『生まれてこなければ良かった』
あの時私はこう言った。
母を責め立てるつもりで、母に向かって。
その時の罪悪感は、今でもまだ胸のしこりとして残ったままだ。
ゆっくり上下する母の背中からは、母がもう眠っているかどうか分からない。
ずっと言いたくて、言えなくて、でも言わなきゃいけなかった言葉があった。
「産んでくれてありがとう」
私は小さくそう呟いた。
特別な夜になる。
誰もの視線を集め、歓声を浴びて、拍手の海に溺れるのだと。
だけどそう思っていたのは私だけだった。
すでにこの夜の主役は決まった。決まってしまった。
主役の座は他の女のものになったのだ。
嫉妬に狂い歪みそうな頬を引き上げる。最後の矜持としてそれを許さない。
特別な夜
どれが一番特別でもない 色々な夜がある 例えば当時の仲間たちと 公園で 語り合った 夜 どこか特別なところにたどり着いたような気もするし やっぱり 思っていたのとは違うと思った記憶もある あなたと 話がつきなかった夜もある 流れと共にくだけ散って 跡形もないような夜 全てが特別な夜