『時を告げる』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
時を告げる
化物として数千年の命が約束された私は、時間の概念などとうに手放していた。
当然、まともに生活していける条件は何も揃っていないため、こぎたない姿で街を彷徨っていたところを物好きな人間に拾われて、このだだっ広い館で働かせてもらっているのだ。
23時30分。膨大な部屋の掃除を終え、ついに最後の部屋、主人の部屋のドアの前でノックをした。
主はとうの昔にいなくなったというのに、叩き込まれた所作は抜けない。
失礼いたします、と入室し、部屋の明かりを付ける。
目の前には大きなウォルナットの机。見慣れた光景である。
しかし、今日はやけに部屋の明かりが目に刺さる気がして、消した。その代わり、古くはあるが大切に使われていたであろう、テーブルランプの紐を引く。
ぽっと暖色の灯りに照らされた机上には、私の未練が転がっている。主人が消えてから少しずつ片付けてはいたものの、いつまでも仕舞えないもの。
そう、主人の懐中時計である。
私は懐かしい懐中時計を手に取った。しばらく時間を忘れて、まじまじと観察しながら主人がいた頃の回想に耽った。
繊細な銀色の小さな鎖が、橙色のランプに照らされて鈍く光る。
そろそろ磨かなければ。と席を立った時、かちりと鳴る時計。
まさか、動くはずがない。とうの昔に止まっているはずだ。何より主人はもう、数百年は帰ってきていない上に、止まったまま修理をした覚えもない。それが動く?
針は0時を指している。そして、悠久の時を生きる私は思い出した。
今日は主人が消えた日、命日であった。
刻一刻と迫る夜明けが
とても怖い
_時を告げる
ふと気がついたときには、もう。
あれから変わってしまったらしい。
お題:時を告げる
時を告げる
教室はもうすでにざわついていて入りにくい。唯一の親友ともクラスは離れてしまい、私の緊張は極限まで達していた。
勇気を絞って教室に入り、自分の席を確認する。なるべく緊張がバレないように動揺を隠すことだけを考えていた。やっとのことで席に座るが、緊張で周りを見ることは出来ない。今日の提出物や予定表を見て時間を潰すことにした。
5分ほど後に肩くらいの髪の子が隣に座ったのが分かった。でも目線を隣に向けたり、話しかける勇気はなく、気になる気持ちを抑えて担任を待った。
入学式を終え、自己紹介をして分かったのは、隣の子は私よりも暗そうだということだ。細いメガネがよりその雰囲気を作っている。でも悪い子ではなさそうだったので、授業が終わった後話しかけてみた。私は初対面の場合、変な勇気が出て話しかけてしまう癖がある。だから明日には多分挙動不審になってしまうが、しょうがない。
「あの、高橋です。これからよろしくお願いします。」
なるべく明るく話すが、緊張で早口になり意味はなかった。
「あ、うん、よろしくお願いします」
軽くお辞儀される。
これは自分の挨拶が悪いわと思いながら、
「じゃあ、また明日」
と恥ずかしさのあまりそそくさと教室を出た。
暗いけど、雰囲気が柔らかくて、髪がサラサラで、名前が可愛い女の子。(あと、そのうち知るのだがこの子の笑顔はとびきり可愛かった。)
この先仲良くなれるかな、明日どんな話しよう。
緊張と恥ずかしさと期待と不安で心臓はバクバク音を立てている。その音がこれからの始まりを告げているような気がした。
さあ、終わりの時が来た。
響き渡る終末の鐘の音を聴け。
祈りなど届かない。救いの手は及ばない。
悪い夢のように、世界は音を立てて崩れてゆく。
アポカリプティックサウンド。
「ヨハネの黙示録」に記された、7人の天使達が吹くラッパの音のような、不気味な怪音が街中に鳴り響く。
世界の至るところで発生しており、終末の刻を告げているとも言われ、未だに説明のつかない現象のひとつだ。
思えば、この世界が存在すること自体が不可解でしかないのに、この世界の終わりなんて、誰の理解も追いつくはずがない。
案外、ある日サクッとこの世界は終わるのかもしれないな。
天使達がラッパを吹きながら天から降りてきて、「うわ、可愛いー」なんて言ってる間に、まさに驚天動地の天変地異が、目の前で繰り広げられるのかもしれない。
映画の中だけの光景だと思っていたものが、合成でもCGでもなくリアルとして、この目に焼き付けられるのかもしれない。
例えば、彼女にフラレたとか、上司に怒鳴られたとか、財布を失くしたとか、手術をしますとか、もーどーでもいいね。
もし、世界の終わりが来るのなら。
最近肩こりが酷くて、毎朝腰痛もツライんだけど、もーどーでもいいや。
ある日サクッと終わるかもしれない世界で生きているんだから。
それよりも、やりたいことをやろう。
人を愛して愛されよう。美味いもんを食おう。
時計はいつだって時を告げる。
それは、楽しいことの始まりだったり、ツライことの終わりだったり、何かが変わる瞬間を教えてくれる。
そのひとつひとつを確認しながら、いつ終わりが来ても後悔しない生き方を選びたい。
あ もう直ぐ
い 本当ひかない?
あ もちろん
い なーんにもないよ、私
あ 大丈夫、僕もない
い ふふふ
あ ほら
い ありがとう
あ …こちらこそ
『時を告げる』
命は時を刻む。死は時を告げる。
命のない世界に、時は刻まれない。
死のない世界に、季節はない。
時を告げる
サインが表示される
もうすぐ、旅立ち
の時が来る
行ってきまーす
😍😍
太古の時代、貝殻は通貨であった。
彼らは貝をお金として使い、物々交換していたそうだ。
お金や経済に関係する漢字に『貝』が付いているのは、その名残である.
そんな話をどこで聞いたのか。
ウチの幼い娘が、貝殻のお金しか使えないお店をオープンした。
「貝殻のお金専門のお店です。
お母さん、なにか買っていきませんか~」
天使のような笑顔で私に微笑む娘。
思わず商品全部を買い占めたくなる。
ウチの娘は商売上手だ。
問題は貝のお金は持ってないってこと。
味噌汁のあさりの貝殻でいけるかな?
「開店サービスで貝殻のお金を一枚プレゼントです」
「あら素敵」
娘がおもちゃの貝殻をくれる。
このお店はサービスが行き届いているらしい。
リピート確定だ。
「店員さん、商品を見せてもらいますね」
「どうぞ~」
「あら~、品ぞろえが豊富……」
商品のラインナップはバリエーション豊かだ。
鉛筆、絵本、髪飾り、手帳、アニメのDVD、造花、夫の漫画……
娘が家を探検して拾った宝物の数々だ。
より取り見取りだけど、買うものは厳選しないといけない。
娘自身のお気に入りの物を買うと癇癪《かんしゃく》を起されるのだ。
例えば人形を買おうものなら、ギャン泣きである。
売らなければいいのに、と思うのだけど、多分自慢したいだけなんだろう。
どれが買っていい物か……
それを見極めるのは経験が必要だ。
母親としての実力が今試される……!
と、商品を眺めていると、あるものに目が留まる。
貝をデフォルメしたおもちゃだ。
小物入れとしても使えそうな印象を受ける。
でも、こんなおもちゃ、我が家では見たことが無い。
「あの……、店員さん……
これは?」
「お目が高い。
これは、当店いちおしです」
「どういうものですか?」
「宝石が入ってます」
「宝石?」
少し間をおいて、『ああ真珠の事か』と合点する。
娘は貝の中に宝石が出来ることも知っているらしい。
なんて賢いんだ!
とはいえ本物が入っている訳じゃないだろうけど……
でも娘が『宝石』というくらいだ。
正直興味がある。
「店員さん、中を見てもいいですか?」
「どうぞ~」
私は貝のおもちゃを手に取って、中を開ける。
なかに入っていたのは……
「真珠が入ってます~」
中に入っていたのは、白く輝く丸い球。
真珠のイヤリングである。
そのきらめきから、私は目を離せなかった。
私は真贋を見極めることはできない。
けれど、私の魂が本物だと言っていた。
冷静になれ、自分!
私は頭を振って、無理やり自分を落ち着かせる。
いくらなんでも本物の訳が無い。
幼い娘が本物を持ってくるなんて不可能だ。
あるとすれば――イミテーション!
あれなら本物と見分けつかないし、もしかしたら100均ショップで売ってたかもしれない。
「おー本物の真珠が入ってますね」
だけど私は娘に話を合わせる。
さすがにここで偽物と指摘するほど、野暮ではない。
これはごっこ遊び、相手に嫌な思いをさせてはいけないのだ
「お母さん分かるの?
凄い~」
「お母さんですから」
「おお~
これが鑑定書です~」
鑑定書?
結構本格的だな……
娘が脇から出してきた鑑定書を受け取って目を通す。
そこに書かれていたのは……
「あの、店員さん。
これ、本物ですか?」
「そうですよ~」
娘から渡された鑑定書。
それは明らかにおもちゃの範疇を超えていた。
すさまじく格式ばった文言で、この真珠を本物と証明すると書いてある。
会社の名前も書いてあるし、印も押してある。
あ、ここの文字が凹凸がになってる。
偽造防止用のエンボス加工ってやつだ
……これ、マジで本物?
「おお、凄い……」
「気に入りましたか~」
「はい、おいくらですか?」
「貝殻のお金、3枚です」
私は手の平を見る
そこにあるのは、最初に娘からもらった貝殻一枚だけ……
どうしよう、イミテーションだと分かってても、手に入らないとわかるとがっくりくる。
あと二枚かー。
なんとか増やせないかな……
通貨偽造に手を染めるしか……
ひそかに落ち込んでいると、後ろから手が伸びて私の目の前に貝殻が置かれる。
驚いて振り向くと、そこに夫がいた。
「店員さん、お父さんもお金を出します。
これで足りますか?」
「足りないけど、サービスで値下げします。
今日、お母さんの誕生日だし」
「え?」
「「お母さん、誕生日おめでとう」」
どこに持っていたのか、娘と夫がクラッカーを鳴らす。
今日、私の誕生日だったか。
すっかり忘れてた。
「てことは……?」
「この真珠のイヤリングは誕生日プレゼントです」
「おお、おおー」
感動のあまり、語彙が消失した。
夢じゃないよね?
私がフリーズしている間に、夫はイヤリングを取って私の耳につけてくる。
真珠の重さを耳が感じ、これが現実だと教えてくれる。
「二人ともありがとう」
私は感謝の気持ちを述べる。
自分でも忘れていた誕生日を、家族が祝ってくれるなんてこんなに嬉しい事は無い。
人生で最高の誕生日だった
「とても嬉しいわ。
でも一つだけ言わせて」
私はうれし泣きの涙をぬぐってから、二人に言う。
「これ、お金どうしたの?」
「宝くじ当たりまして」
「私、それで貝料理が食べたかったわ」
「……今夜、お父さんの奢りで食べに行きましょう」
おあとがよろしいようで
時を告げる
こんなに綺麗な場所であなたと踊る。
そんな夢みたいな夜も、もう少しで終わりね。
醜い姿はとても見せられないから、
言われたとおり帰らなくちゃ行けないの。
午前0時の時を告げる鐘が鳴る前に。
如何して気付いてやれなかったんだ。
お前はこの世界を、必死で生き抜いてきたのに。
誰よりも優しくて、健気で、愛に溢れていて。その根底にある想いは只一つ。『皆が幸せに天寿を全うする』。それだけだった。
なのに、こうも世界は、人間を残酷な運命に閉じ込めてしまうのだ。
それに気付いた時には遅かった。
引かれた境界線は、越えたくても越えられなくて。お前はいつも通りの笑みで此方を見つめている。
まるで、「また会えますよ」と言いたげに。
そうかもしれない。屹度俺等はまた巡り会える。その時は、その時こそは、お前のSOSを、ちゃんと聞き届けるから。ちゃんと、絶対、手を差し伸べるから。
お前は人の死を見過ぎた。見過ぎて、絶望した。俺等はずっと、お前に護られていた。
手遅れな手は、虚空を切る。
「…また、もう一度、会いましょうね」
*タイムオーバー
*人生 を 再スタート しますか ?
▼ YES
NO
*人生 を リスタート します。
時が告げられる。
また、絶望の幕が開ける。
「初めまして」
「…あ"?誰だお前」
#時を告げる
貴方は必ず戻ると言った
しかし必ず戻る保証は
一体どこにあったのでしょう?
苦しく、辛い時間は
長く、永遠に感じられるほどですね
それは貴方も同じでしょう
それでも貴方は私を見捨てたのでしょう?
きっとそうに違いない
そうに違いないと思いたい
もうサヨナラを告げたいの
最後の演奏だった。おそらく人生で。
音楽が好きというだけで入ったこの部活も気付けば3年、環境が変わりまた3年。
6年間も走り切ってしまった。
“音楽が好き”の本質は、音楽を自分の表現に落とし込みたいという願望だということに気付けた。
それに気付いた時、自分の技術が表現を圧倒的に下回っていることにも気付いてしまった。
技術だけじゃない。周りにいる演奏者達は皆自分の音楽を持っている。
私にはなかった。あったのかもしれないけど、もう私には何も聴こえてこない。
スランプというには余りにも浅い経験値、楽しめなくなった音。
もう私の中に音楽のかけらは一片足りとも残っていなかった。
他の楽器の音に溶け込んで無くなる私の音。
掻き消されて聞こえないまま、金色を纏った部隊達が終わりの一音を掲げる。
ありがとう音楽、私のいなくなった舞台で音楽よ永遠なれ。
時を告げるチャイムが鳴る。
張り詰めていた空気が和らいだ。
ああ、後何回このチャイムを聞けばいいのだろう。
永遠に続くような、学校生活。
こんなはずじゃ、なかったのに。
台風一過
少し気温が下がる。
でもまだ暑い。
なのにコンビニで肉まんを見て食べたいと思った。
もうすぐ秋がくることを、わたしの内側が告げている。
「時を告げる」
時を告げる
古時計がボーンボーンと静かな家に鈍く響く。
廊下からこっちの部屋にまでしっかりと聞こえるその音は
正午の知らせをきちんと届けに来る。
私が生まれるもっと前から動いているのに今でも
数分のズレも無く時間を知らせるのは大したものだ。
古時計を見に廊下を歩く。
昔廊下を歩いている時にちょうど鳴り出したせいで
びっくりして最初は古時計のことが嫌いだった。
大人になった今やっと古時計の趣がわかってきた。
ゆっくりと動く振り子、絡繰り仕掛けで動く音、
鈍くなる時報。
こんな時計を考えた人はさぞ天才だったのだろう。
古時計を優しく撫でる。
いつもありがとう。次の時報も期待しているよ。
さっき正午の時報を聞いたからかお腹が空いてきた。
冷蔵庫に何かあったかな...
お腹を擦りながら台所へ向かった。
語り部シルヴァ
『時を告げる』
帰省すると
防災スピーカーから
懐かしいオルゴール調の『夕焼け小焼け』が流れていた。
子供の頃
近くの駐車場や学校の校庭で"かけ十"や"サッカー"、"かくれんぼ"、"ドロ刑"などをしていても
『夕焼け小焼け』が聞こえてくると
皆、慌てて遊びを止めて、「またねー」と走って家に帰った。
『ドボルザークの家路』が聞こえてくると
布団で横になりながら、早く寝ないと怒られると思った。
夏休み、母の実家に帰省して
従姉弟と朝の散歩中に『故郷』が聞こえてくると
なんだか、いつもと違う今日一日がこれから始まるというワクワク感が込み上げてきた。
子供の頃は、
チャイムが鳴ったら、帰ってきなさいという家庭のルール
チャイムが鳴ったら、もう夜遅いから子どもはもう寝てないといけない時間という習慣
チャイムが鳴ったら、今日が始まるイメージ
という大雑把な括りの中で生きていたので
時を告げるチャイムのおかげで
時計を読めなくても、腕時計を持っていなくても
時を知ることができたんだなと思った。
今、住んでいる地域でも、チャイムが鳴っているらしいが
どんなメロディーなのかは
十年以上住んでいるが知らないし、聴こえてきた記憶もない。
大人になり、時間に追われ
携帯電話でいつでも、時間を知ることができるから
時を告げるメロディを頼ることもなくなったからだろう。
また、自分の興味のある音にしか関心が向かず
不必要なノイズとして脳が勝手に処理をしてかき消しているのかもしれない。
もう一度、
耳を澄まして、
今いる地域での時を告げるチャイムに
耳を傾けてみようと思った。
私が今
君に気持ちを伝えたら
君はあの子のものに
ならないのだろうか
【時を告げる】
神官の祝福を受け俺はいま旅立つ
教会の鐘の音が冒険の時を告げている
目を覚ますと時刻は8時を回っていた
大音量のアラームが時を告げている
なんだ夢か…くそっ
その時メッセージの通知音が鳴った
今日の授業が休講になったようだ
頭をかきながらしばし考える
よしっ
いざ行かん、冒険の旅へ!
呟いて再び布団へ潜り込む
鐘の音が冒険の時を告げる
夏休みに幼稚園からの親友と東京に遊びに行った。
会ったときは空はまだ明るくて青かったのに、いつの間にか真っ暗になっていた。
時計を見ると19:30。そろそろ帰ろうと電車に乗り、くだらない話をする。あっという間に最寄り駅。空の黒さと夜の駅の雰囲気が別れの時を告げていた。夏休みが終わって学校が始まると、またしばらくは会えなくなってしまう。家は近いけれど、予定が合わずに中々会うことが出来ない。親友が名残惜しそうに「次はいつ会えるかな?」と言っている。それがなんだか、愛おしくて、寂しくて…
残り少ない時間を噛み締めながら帰路に着いた。