『夜の海』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
疲れたーって仕事終わり
君と合流してコンビニでチョコレートと花火
パンプスのまま浜辺にくりだして
溶けかけたチョコを口に入れながら
手元をカラフルに描いてく
そのうちはしゃぎ疲れて
スーツなのに砂浜に横になって
一緒に空を見上げて
今の流れ星じゃない!?なんて笑って
甘酸っぱい夜の海、わたしの夏の思い出
目を閉じると今でも鮮明に
波の音が聞こえてくる
#夜の海
冬がきた。
私は以前恋人と訪れた港に来ていた。あの時も季節は真冬で、凍えそうに寒かったのを覚えている。
なぜ夜中に海を見に来たのか?
ここが観光名所だからというのもあるが、実際は少し気分が落ちていたからに他ならない。
たまにあるのだ、特に理由もなく落ち込む期が。
あたりを見回すと、2組ほどのカップルが散歩していた。ひとりなのは私だけ。少しだけ居心地悪く感じたものの、今は他人に嫉妬している場合ではないと頭を振る。余計な感情に惑わされず、自分を見つめなくては。
ザザン……ザザン……
時折波が堤防を打つ音が聞こえる。
子守唄のようなそれは、ベンチに腰掛けた私の瞼を下へ下へと引っ張った。
「先生?」
あの子の声が聞こえる。
「先生!」
こんな時間、こんな場所にいるわけがないのに。
「先生、起きてください」
肩に何かが触れた気がして目を開けると、そこはいつもの彼の部屋で、目の前の彼が膨れっ面をしていた。
「先生、私が勉強してる間に寝ちゃうなんてひどいですよ!」
「ああ、ごめんなさい。どれくらい寝てましたか?」
「10分は経ってないと思いますけど」
「すみません。ワークは終わりましたか?」
「はい」
彼が差し出した問題集を受け取る。彼の言う通り、すべての回答欄がきちんと埋められていた。
「うん、流石です。歴史はますます得意になれそうですね」
「ふふん♪」
私が褒めると素直に喜んでくれる彼。こっちまで嬉しくなる。
「ところで先生、そろそろ本当に起きないと、風邪ひいちゃいますよ」
「え?」
「先生、早く会いたいです。先生、……」
まだ何か言われたような気がしたけれど、うまく聞き取れなかった。深い海の底からすくい上げられる感覚。彼が遠ざかっていく。
待って、まだ彼と話していたいんだ。
まだあの子のそばにいたいんだ。
待って……
「おい!!!」
鼓膜を通り越して心臓をぶっ叩くような野太い声で目が覚めた。一気に脈が跳ね上がる。
「おいあんた、こんなところで寝てたら死ぬぞ!」
「へ、ああ、すみません。ありがとうございます」
「おう、気をつけろよ!」
威勢のいいおじさんからはほんのりアルコールの匂いがした。恐らく飲み仲間であろう人達と一緒に去って行く。
私は凝り固まった体を伸ばして立ち上がり、駐車場へと足を向けた。
途中、持ってきていた貝殻を真っ黒な海へ放る。元はここで拾ったものだから、ゴミとは言わないでほしい。
車の中はすでに冷え切っていた。温かい飲み物を買って正解だった。
私はコーンポタージュを缶の半分くらい飲んでから、ポケットのスマホに手を伸ばした。
無性にあの子と話したい気分だった。
テーマ「夜の海」
─── 夜の海 ───
とても静かだ
ここには誰もいない
いるのは私と水の中で眠る生き物たちだけ
音は大きくないけど少し迷惑かな
ごめんね
ここが1番の練習場所なんだ
誰にも見られないし邪魔されないから
水面の上で箒にまたがり
そっと口の中で言葉を紡いだ
パッと空が明るくなる
月でもない星でもない
夜の花を空に咲かせることが
今の私に与えられた課題
【お釈迦】
夜の海に垂らされた釣り糸は
まるで蜘蛛の糸のようで
僕はだんだん減るロウソクみたいだ
よせてはかえす 波の音
眠気を誘う あたたかさ
月あかりに照らされ
ぼんやりうかぶ なやみごと
ざぶーん
ざぶーん
すいこまれてった
ながされてった
夜の海
#夜の海🌉
作品No.137【2024/08/15 テーマ:夜の海】
歩道橋からは、遠く海が見える。闇色の、夜の海だ。本当は、青く輝く晴れた昼間の海の色の方がすきだけれど。
夜の海は、ひたすら暗い。昼の眩しさが嘘のようだ。
あの海がおそろしいと思うのは、夜だからなのか、それとも、海自体がおそろしいのか。
少なくとも、夜に海に寄ろうとは思えなかった。
「月明かり 夜の砂浜 誘う君」
「夜の海って、なんかよくね?」
「そうかなぁ。私は怖いけど」
「えー。もっと近くに行こうよ」
「だめだめ。絶対行かないから」
臨海学校の最後の夜は、ビーチが見える場所でのバーベキュー。
「危ないから夜の海には絶対入らないように!」と言われているし、そもそも私は海がそれほど好きではないのだ。
波はあまりにも強引で、どこか別の世界へ連れて行かれそうで……
「そんなこと言うなって」
私の手を引いて海の方へ行こうとする幼馴染。
「嫌だってば!」
「……そんな嫌かよ」
不機嫌さを隠そうともせず、への字に口を結んでいる。
いや、不機嫌になりたいのはこっちだよ。
旅行初日からの言動のおかしさを指摘してやると、彼は頭を抱えだした。
「マジか……」
「ほんと、どうしたの」
「いや、だって……俺ら、付き合って、もう一カ月じゃんか」
「うん。それが?」
「だ、だから、そろそろいいかなーあ、なんて……」
「だから、なにが?」
「な、なにがって、その……」
「……」
「……な、なんでもねーよ!」
勢いよく顔を逸らしてるけど、薄暗いなかでもわかるほど真っ赤なのがわかる。
キスしたいなら、はっきりそう言えばいいのに。
────夜の海
満月が反射して
海に浮かぶ満月がゆらゆら
夜の海はとても切ない
船置き場辺りの海は棒で掻き回すと
微生物が光り輝いてとても綺麗なんだ☝️
こんなに寒い夜
耳をマフラーにうずめて
缶コーヒーの温かさを手に
暗い海をじっと見つめる
寄せる波音だけ聴いて
世界にひとり
「夜の海」
#483
よく夜の海を見る。
ただぼーっとして、星を見ながら悲しみに浸る。
そんな時間が好きだ。
ただ真っ黒な海と無数に広がる星空、波の音。
悲しみに寄り添ってくれてる感じがする。
少しだけ楽になったかな。
帰るか。
夜の海
僕が音楽を始めた理由はごく一般的だ。
ベートーヴェンの月光に惚れたから。
知っての通り月光はピアノソナタであるから、僕が一番最初に触れた楽器はピアノである。しかし始めたもののグランドピアノで弾けるのは先生の家のみ。日本の狭い家にはグランドピアノなど置けないのだ。
そんなある日、先生から友達を紹介してもらった。
今でこそ彼が偉大な人だとわかるが、当時は夜中に爆音を掻き鳴らすヤンキーのような見た目に腰を抜かした。
だが、彼の話した言葉の全てを僕は忘れていない。
何よりヴァイオリンを始めるきっかけは彼にあったからだ。
彼の名はエリック・フィッシャー。
世界三大コンクールの1つ、エリザベート王妃国際音楽コンクールで審査員を逃げた男だ。しかし間違いなく歴史に名を残すであろうヴァイオリニスト。
僕の師であり、人生の大半を共に過ごした友人で自称ベートーヴェンの子孫だ。なんともまあ、ふざけた人である。
「エリック!!」
「どうした」
「どうしたじゃない。何度言えばわかるんだ。日本では靴を脱いでから家に上がるんだ」
彼の足にはピカピカに磨かれた茶色の革靴がある。
「ふむ。私も尋ねるが、ケイは裸足でヴァイオリンを弾くのかい? そんなわけないだろう?」
確かにヴァイオリンを裸足で弾くことはない。
だが、それで土足を許すわけにもいかないのだ。
自分の意見を決して曲げない男には僕が折れるしかない。だから、どうでもいい布をエリックに投げた。
「せめて靴の裏を拭いてくれ」
「失礼した」
そう言うと泥の一つも残さぬよう丁寧に拭き上げるのだから憎めないやつである。
僕がヴァイオリンのメンテナンスを始めると、エリックは自身のヴァイオリンを取り出した。彼は一目僕に向けると、弓を激しく動かした。
ベートーヴェンの月光、第3楽章。
僕と彼を繋いだ曲であり、ヴァイオリンに惚れた曲である。
彼の奏でる月光は華がある。
夜の海を眩しいくらいに照らす月が見えるほど。
海の底まで照らす月光に僕は憧れた。
「さあ、ケイ。レッスンを始めよう」
彼と僕はヴァイオリンでしか語り合えないのだ。
“夜の海”
付き合って、とおもむろに言われてそっけないふりをして頷いた俺は、そのまま彼女に手を引かれ夜の海まで自転車を走らせていた。
日が落ちてもなお、茹だるように暑い。海沿いまで走らせてやっと風を感じるようになったが、それでも暑いものは暑い。こめかみや背中を汗が伝っていく感触が気持ち悪い。俺はなんでこんなに必死にペダルを漕いでいるんだっけ?現実から目を逸らすように俯いた視界の先に、自分の腹に回された彼女の腕を見つけた。じわりと更に暑さが増したみたいだった。
彼女はあれから一言も喋らない。顔を合わせれば憎まれ口の応酬となるのが常の俺達がこれほど長い時間無言を貫いているのは多分出会ってから初めてのことだ。
なんで俺を誘ったのか、なんで海なのか、なんで喋らないのか、聞きたいことは山程あった。重たいと、疲れたと、なんで後ろに座ってるんだと言ってやりたいことも山程ある。だけど一言でも口にしてしまったら何かが終わってしまう気がして、何も言えずにただひたすらペダルを漕いでいた。
やっとたどり着いた目的地で自転車を降りる。一足先に降りていた彼女が浜辺への階段を降りていくのにただ黙ってついていく。日中は家族連れや学生でごった返す浜辺も夜は流石にほとんど人影はなかった。
人のいない浜辺に、俺達二人の足音と波の音ばかりが響いていた。湿気で跳ねる癖っ毛を必死に撫でつけている俺とは裏腹に彼女は肩まで伸びたストレートヘアを惜しげもなく海風に靡かせていた。そろそろ聴いても許されるだろうか。こわごわ口を開くと、見透かした様に彼女が振り向いた。
「……好きなの」
「……えっ、と……」
「私ね、夜の海好きなの」
だからずっと来てみたかったのよ。あっけらかんと彼女が笑った。こっちの気も知らないで。モヤモヤとした気持ちを踏み潰す様に俺は大きく一歩を踏み込んだ。やっぱり彼女は見透かしていたみたいににんまり笑う。
「ね、期待した?」
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尻切れトンボ(恒例)
夜の海
母方の兄が漁師をしていて、夏休みになるとおじさんの家に泊まり、漁を手伝うのが子供の頃の日課だった。
夜半、船に乗り込み、波が船に当たる音だけが響く。
おじさんは、船上で夜の海の体験話をポツリポツリと聴かせてくれた。海の上での出来事。怖い話をしてくれるけど、不思議と怖くなかった。
おじさんは海の上の全ての出来事を受け入れて仕事をしている感じがしたから。自分も怖がらず取り組めた。
高校生くらいになると、部活も忙しく、手伝える回数が減り大人になると全く行く機会がなくなってしまった。今、夜の海を想像すると、恐怖しか残っていない。
海に引き寄せられるように、誰もいない駅で降りていた。
夜の海は、果てしなく深い色が広がっていて、冷たい潮風と共に心地よい音を運んでくる。
裸足で浜辺を歩く。誘われるようにして海へと入っていった足は、冷たい水に拐われていくようだった。
つう、と頬を伝った涙は皮肉にも暖かくて、余計な思い出まで連れてくる。……ちがう。余計な思い出、なんて意地を張れるほど今の私は強くない。
淡くて、儚くて、手繰り寄せたら消えてしまいそうな思い出をそっと胸に抱いて、夜の海でひとり、泣いていた。
なんで私より先に死んでんだよ、ばか。
私が生きる意味またなくなっちゃったじゃんか。
私の自殺阻止しといて、最後まで責任もってよ。
どうせなら一緒に死にたかった。
夜の海に吸い込まれていく。
前のときとちがうのは、こんなにも涙が溢れるということ。
大嫌いだ、ばか。
でも、ありがとう。
最後の涙は冷たい夜の海に溶けていった。
─夜の海─ #34
「夜の海」
くらげを見てみたい。きっときれいだ。
夜の海
二人並んで語り合う
なんでも話せたあの頃
悩んでは泣いて
最後は笑って
なんでも手に入れられる
気がしていた
懐かしい夜の海
暑さも過ぎて
冷えた空気が
磯の香連れて
肺を潤す
古サンダルの
足音だけが
ざくざく響く
夜の海
等間隔で佇む灯り
拡散してゆく
霧の中
八
水面に映る月を手の椀にすくって
かあさまに見せるんだと
裸足で砂を蹴る
「夜の海」
月明かりを映した水面は静かに波打つ。
並んで歩く二人の髪が、潮風に揺れて。
微かな声に、指を絡めた。
たまには1人になりたくて、思いつくまま歩いて向かった先は海だった。
深夜0時、人気のない海。
それは辺りがひっそりと闇色に染まり、穏やかな静寂と緩やかな波の音だけが存在する場所だった。
昼間は仲間達が楽しげに遊び、騒がしかった海も今ではすっかり別の顔だ。
…まるで、普段の俺と今の俺のようだ……
皆がいる前では明るくて馬鹿なことを言ったりする俺だが、それは所詮表の顔でしかなくて、本来の俺は今のように虚無なのだ。
これは、相棒にすら見せたことのない素顔。
昔から快活な「俺」を演じすぎていたのかもしれない…
今の俺を見たら、あいつは一体どんな顔をするのだろうか。
気まずそうな顔をするのか、はたまた悲しそうな顔をするのか…
…いや、多分もっと複雑な表情で俺を気遣うのだろうな。
徐に、履き古したブーツと靴下を脱ぎ、裸足で砂浜を歩いてみる。
さく、さく。
砂粒の感触は思いのほかひんやりとしていて、優しい。
その優しさに甘えたくなって、どふ、と仰向けに倒れてみた。
髪に砂粒が絡むが、そんなことは気にならない。ただ、今のゆったりとした「無」に浸りたい…それだけだった。
新月の夜、闇色に染まる世界で耳に心地よく響く波の音と優しい砂粒の感触だけが俺の素顔を見ている…
今だけ、今だけは、仮面を外した素顔の俺でいさせてくれ。
日が昇る前にはいつもの俺に戻るから。
そしてまた、仮面を被り直すから。
いずれ来る、俺と化け物の終わりの時まで…俺は「俺」を演じ続けるから。
だからお願いだ。
今だけは、夜よ、明けないでくれ。