『声が聞こえる』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
#19 【声が聞こえる】
1歳の誕生日に、自分で売り場で選んだぬいぐるみ。
1歳?早くない?って思うでしょ。
1歳だよ。間違いない。
好きなものを選んでいいよって言われて、大きなタヌキのぬいぐるみを選んだ。
上に兄弟はいなかったから、いつもその子を抱いて、お話してた。
ちゃんとおはなししてたんだよ。
悲しいことがあった時も、慰めてくれたし、寝る前には今日一日あったことを話したりしたんだ。
でも、いつからかな。
ぬいぐるみの声が聞こえなくなっちゃって。
まだあるんだけどね。
もう昔みたいに、呼んでくれないんだ。
寂しいよ。
【声が聞こえる】
かつてあなたと来たこの場所。どことなく声が聞こえるの。聞こえるはずもない声。それは私の胸の中から聞こえる。
あーあ。胸が苦しくなってきた。
声が聞こえる。
私の頭の中で、しっかりと。
けれどそれは、耳を通して響くものではなく。
「疲れた」「寝たい」「優しくされたい」
「…あの時にああすればよかった」
「何故もっと頑張れなかったのか」
「そうすれば」「きっと」
「私はまだ夢を追いかけ続けることができた」
夢路を諦めて早7年。もう7年も経つのに。
気づけば聞こえてくる自分の本当の心の声。
そもそもこんな心の声が聞こえてくるのは、
その夢路の代わりとなる人生の拠所を見つけることが
できていないからに他ならない。
若き自分が、「当たり前の幸せ」と呼ばれるものを、
それが得られる資格を全て捨てる覚悟をした上で
望んだ未来だった。
そう簡単に代わりが見つかるはずもない。
いつかこの挫折も笑い話にできる日が来るのだろうか。
そう思いながら、頭の中に響く声を抑えつけて
今日も私は生きていく。
扉を閉めて、床に寝転ぶ。
畳まれた布団に頭を乗せて、ようやく一息がつけた。
スマホの電源を入れて、イヤホンを取り出す。
扉の向こうからは声が聞こえる。
同居人が見ている、アニメだかドラマだかの声。
思わず溜息が溢れる。
イヤホンを耳に押し込んで、そそくさと再生リストをタップする。
歌声が聞こえる。
耳奥に押し込んだイヤホンが、外の音を遮断して、鼓膜に歌声を伝えてくれる。
…うん、だいぶ気持ちが落ち着いた。
輝く照明をぼうっと見つめながら、歌声を聴く。
聴こえたメロディが唇からポロッと零れる。
合成音声の歌声。
合成音声の声。
どうも肉声は苦手だった。
人の声は、情報が多い。
強い感情、僅かな抑揚、声量…
人の声はいつだって、微妙な変化に富んでいて、セリフ以上の何かが含まれている。
それが、疲れるのだ。
普通に、日常的に話すのなら気にならないし、むしろ、そういう機微があれば、空気も感情も読みやすくてありがたい。
でも、休みの日、何もしたくない時、一人で趣味を楽しみたい時に、そんなにたくさんの情報量があるものを聴くのは、私には、大変だった。
同居人は、人の声が好きだという。
今見ている番組も、主演の声が“癒されボイス”で“推せる声”らしい。
それに、感情がすぐ声に出るため、推しである主演の役者の解釈のためには、声を聞くのが一番良いとかなんとか…
同居人は私にも勧めてくれたが、私には情報量が多すぎて煩いだけだった。
私の耳がおかしいのか?
私の脳がおかしいのか?
否、私にとってその声は“癒されボイス”ではなかった、それだけの話だ。
そして、そんな声を同居人は好きだっただけ。
だから、私は別に気にしていない。
人の声を聞きたくない気分の時は、私がそっと離れればいい。
同居人も、私の琴線に触れていないと分かった時からは、私の退室をそっとしておいてくれている。
さて、この話を他の人にすると、大抵こんな声が聞こえる。
「それって不満たまらない?我慢じゃん」
「合成音声より肉声の方がいいに決まってんじゃん。同居人さん可哀想」
「そんなの関係冷え込みそー」
そういう声は、感情がキツすぎる。
強くてねちゃねちゃした感情に包まれた、嫌味ったらしい声で、それで私はますます肉声が嫌になる。
だって、そういう役が出てきた時や、そういう役者が役を演じた時、肉声ならこのネチャネチャがセリフと一緒に飛んでくるんだろう?
合成音声も、抑揚や感情は籠るけど、ここまで雑音じみていない。
合成音声たちは、作者が意図した感情以外の感情は含めない。
それが私には楽で、心地よい。
それだけの話だ。
鼓膜に合成音声の歌声が突き刺さる。
口から溢れる自分の声が聞こえて、慌てて口を噤む。
向こうの部屋の邪魔になってはいけない。
私が合成音声の淡白な感情を聴き流し、聴き惚れながら楽しむ間、同居人はあちらで、少しの感情も変化も抑揚も見逃すまいと耳を澄ませているはずなのだから。
人の好きなことには、共感できなくても、理解と尊重は示すべきだ。
分からなくてもいいから、否定しないこと。
私はそういう人が好きだし、そうありたいから。
自分で何度も確認し、扉の向こうに意識を傾ける。
合成音声の声が聞こえる。
扉一枚挟んだ向こうに、真剣に耳を傾ける同居人の気配を感じる。
休日の昼下がりは、ゆっくりと過ぎてゆく。
高熱がずっと続いている…
混沌とした意識を彷徨いながら酸素マスクを曇らせる。
夜明け前までもたないだろう…
命が燃え尽きるまでもう時間がないのを感じる。
君からのLINEは来ているのだろうか…
確かめることさえできない…
そんなことが頭をよぎる。
カーテンの間から見える星空が泣く。
違う。
わたしの目に涙が溜まって歪んで見えてるだけ。
ああ、なんか明るい…
花畑が見える…
白とピンクのコスモス?
今の季節らしい…
きれいだなあ…
花畑を進んでいくといつの間にか夜景になっている。
花もチョコレートコスモスと青いダリア…
風が吹いたのか、ぶわっと花びらが舞い上がった。
花吹雪の向こうに、川と小さな船着き場と木のボートが見えた。
時間よ止まれ
まだ大事にしたいものがあるんだ。
そう思うのにわたしの足は裸足で赤と青の花を踏み散らして歩き、船着き場に向かうのを止めない。
秋に恋がれていた。
まだ秋らしい秋を迎えていない。
涼しくなったらこの熱も下がって体が楽になるかもと…
声が聞こえる…
誰の声かもわからない。
あの人かもしれない…
でもわたしの足は進むのを止めない…
90作突破記念
「声が聞こえる」
7/15 20作 7/27 30作 8/4 40作 8/14 50作
8/23 60作 9/3 70作 9/13 80作
突破記念の続き。
これまでのタイトルを並べて繋げたもの。
内容は続いていない。
インターバル的なもの。
秋雨や
爆ぜるポケベル
溝深し
象の足裏
千匹の蟻
「声が聞こえる」
今日も聞こえる
揺れる水槽の中で
生まれる前のこと
宇宙が生まれてからこれまでのこと
海から陸へ上がったこと
空を飛んだ感動
愛する人がいたこと
虫を潰した日のこと
知らない誰か紡いだ記憶
瞼を塞いでいても 流れだす脳内のフィルム
それでも微かに感じた
繋がれてるこの糸が
ただ一つの光だと
お出かけして
食べて
喜んで
お腹を撫でて
私は丸まって 揺蕩って 祈って
ずっと夢の中だけれど
ほら、今日も
声が聞こえる
声が聞こえる
アナタに逢いたい
だからもう一度目を開けて
何もなかったように
笑いかけて、
お願い
作品No.175【2024/09/22 テーマ:声が聞こえる】
声が聞こえる。私の内から、誰かの声が。
それは、まだナニモノでもないナニカ。実体をもたぬモノの声。
——ワタシを生み出せ!
と、叫んでいる。私に、命じている。
この声に従っていいのだろうか。私が、生み出してもいいのだろうか。
声はまだ聞こえている。こだまして、響いている。
✦声が聞こえる✦
学校は休んだ。今日はプチ鬱。
僕は部屋にこもって勉強していた。
すると誰も居ないはずのドアの向こうから
声が聞こえた。
『ゆいとーいるか?』
そいつはドアを勝手に開けて入って来た。
耳には普通のピアスと安全ピン🧷が付いていて黒髪。
体型も顔も整ってて普通にイケメンでピシッとスーツを着ている。
若い高校生くらいの男性だった。
「はっ誰?」
『俺は天音。お前のイマジナリーフレンドってやつ』
「は?知らねーよそんなの!ってか不法侵入だ!警察行くぞ!?」
『まあまあそんな威嚇しないの。俺は君の頭から来るんだから。』
そんな感じで天音を名乗る奴は頻繁に来るようになったしいつでもどこでも出てくる。
今では兄のような存在だ。存在か?
まあいいや。
って書いてる今も背後から声が聞こえた。
『なんだよそれー。』
「別にかんけーねーし。」
『声が聞こえる』(創作)
放課後の誰もいない教室
開かれた窓にカーテンが揺れ
外からは部活動の声が聞こえる
わたしはこのありふれた風景が好きだ
毎日見ている教室は
卒業してしまえば思い出の中にしか
見られなくなる
このありふれた風景が
青春の1頁を飾ることになるなんて
大人になるまで誰も知らない
過ぎ行く時を超え
わたしの青春は今もなお
部活動の声が聞こえる教室のまま
声が聞こえる
自分の本当の声が聞こえた気がした
その子は、
いつからか目立たないように
ここにいることがわからないようにして
身を潜めて生活していた
周りはその子の声を聞こうとしなかった
周りは聞いてもらうことだけを評価した
周りはその子の声を聞くことを拒んだ
だから私もその子の声を無視した
そうしているうちに私もその子の声が聞こえなくなっていた
その子の声に一度も耳を傾けないまま
だからその子は声を出すことを辞めた
気づけばその子は主張のない意志のない考えもない子と勝手に評価されていた
もう一度、私はその子の声を聞きたがった
今まで無視し続けた私に今更声を上げろなんて
なかなか簡単じゃない
だけど私がその子と向き合う形を示してから
その子は少しずつだけど
小さな声で、そっと話をし始めたんだ
少しずつ、少しずつ
私もその子の声が聞こえるようになった
私の中の本当の音
声が聞こえる。
目が見える。
話が出来る。
このアプリを楽しむことが出来る。
それはなんて、幸せな事なのだろう。
END
「声が聞こえる」
あの夜のあの声が
鼓膜を通して脳に刻まれ残っている
俺にだけ聞こえる
「嘘を着る貴方の皮を剥ぎたくなった」
聞こえた声は恐ろしく熱を帯びていた
俺は酷く冷えきっていた
熱を感じない程に
扉の向こうから、彼女の声が聞こえる。
あの日、突然の交通事故で死んでしまったはずなのに。
間違いなくそれは、彼女の声だった。
少し悲しげな、優しい声。
僕は、扉を開けた。
留守番電話の応答メッセージ。
こんなところに君の声が残っていた。
声だけでなく、この部屋には君を思い出させるものがたくさん残っている。
二人で買った家具やインテリアは、君の好みで選んだものがほとんどだから。
ソファに体を沈め、あの頃を想う。
二人並んで座って、少し悲しいホラー映画を観たね。
怖がりながら泣いていた君が可愛かった。
主人公がヒロインと死別するシーンで、僕の手をギュッと握りしめてくれた君。
僕が泣いていたのは、映画のせいばかりじゃなかったんだよ。
こんなサヨナラがあるとは思わなかった。
映画の中だけの、演出された展開だと思っていた。
もう一度、僕の手を取って、あの笑顔を見せてくれないかな。
もっと君の声が聞きたいよ。
ずっと君のそばで眠りたいよ。
何故僕は、ここにいるんだろう。
あの日僕は、突然の交通事故で死んでしまったはずなのに。
彼女の声が聞こえる。
誰かと笑い合っている。
幸せそうに、僕のいない世界で。
【声が聞こえる】
誰をいないはずなのに
怒鳴られているわけじゃないのに
耳を塞ぎたくなるような胸がざわつく声
だってこんなにも優しい声を
今まで聴いたことが無かったから
染み付いちゃって
焼き付いちゃって
孤独で居たい僕は引き剥がしたかったのに
それは形が無いから触れなくって
いつの間にか僕の一部になってしまっていた
2024-09-22
どれだけざわついてても
賑わっていても
多くある会話にかき消されてしまったとしても
遠くてあまり関わりのない君が、
珍しく私の名前を呼んだ声だけは
はっきり聞こえるんだ。
#声が聞こえる
騒然とした街に華やかな鐘が鳴り響く。
とたんに街ゆく人々は地面に膝をつけて
天に祈りを捧げた。
静寂が訪れる。
美しい海が隣接するここパレイドゥーマでは、
月に一度だけこの鐘が鳴る。
桜の樹の下には死体が埋まっているなんてよく言うけれど、美しい海には一体何が隠されているんだろう。
ほら耳を澄ましてみて。
声が聞こえるでしょ。
また鐘が鳴って
街はいつものように動き始めるのだった。
声が聞こえる。
私は母が大好きだった。
どんな時も笑顔で「おかえり」と言ってくれた。
何よりも私を信じてくれる人だった。
今も時々、真っ暗な中を迎えに来
てくれ「おかえり」と笑ってくれる夢
を見る。
明日はお彼岸の最終日…遅くなったけ
どお墓参りに行くからね。
「声が聞こえる」
いつか見た事があるような気がするこの景色
僕の記憶には無いでも、確信できる
ここに来たことがある。
「綺麗だねぇ」
え!?今確かに声が聞こえた気がした、
それは聞いたことのある透き通るように淡い声
僕は涙を流し言った
「どこにいるの?また君に、、会いたい」
時々君の声が聞こえるんだよ。