『声が枯れるまで』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
「⸺っぁ……ケホッ…っ」
思う様に、声が出ない。
声が枯れるほど、唱えて…泣いていたんだろう。
そのことに気づいて、虚しくなった。
私は、なんで生き延びたんだろう……って。
生きているのが、助けられたからなのは、分かってる。
けど、私の中の命を…私の大切を………捨ててしまった。
痛い苦しい辛い悲しい嫌だ嫌だ嫌だ。
なんでどうして私だけなの独りはやだよやだなのいやなのに………誰も、いないんだ。
魔法が使えたら。
身を守る魔法が使えたら。
敵を倒す魔法が使えたら。
誰かを癒やす魔法が使えたら。
……時間が戻る魔法が使えたら、良かったのに。
使えない、使えない、使えない。
⸺あぁ…そうだ。夢を見よう。私の大切があって、みんな幸せで、それで、ちょっとの困難を乗り越えられて……どんな魔法も使える夢。
そうだよ、夢を見ればいいんだよ。
夢を見て、創ればいいんだよ。
声が出ない?そんなの気合で出せばいい。
ただ一言、言えればいいんだよ。
それを言えば、夢を創って……夢を見れるから。
「…っ、おや…すみ、なさい……せか…ぃ…」
唱えたら、目の前が暗くなって、私の意識はボタンを押したみたいに、パチリと消えた。
【夢の始まりは、彼女だけが知っている】
この仕事長くやってるとね
声が枯れる瞬間って分かるんだよね
喉の奥でピリッと
あ、やっちゃったって
つまり、
酔っぱらいが限界を知ってるようなもんだよね
昔、師匠はこう言った
明日のことなど考えるな
声が枯れるまで歌え
そうしないと客席に届かないぞ
いや、枯れたらあかんやろ
だけど踏みとどまっては
情熱のなにやらは届かないのだろうな
そう、私は理性で動く
感動も、情熱も計算だ
それも技術
年数を重ねる毎に老練になり
冒険から遠ざかる
でもね、たまにライブを見に行って
若い歌手がとにかく暑苦しいほどの想いを
声の限りに歌うのをみて
技術や計算度外視に心を動かされる
この子は
天才じゃないだろう
秀才でもないだろう
でもだからこその剥き出しの想いは
私の心に痛いほど届いた
『声が枯れるまで』
「
あのですね、私の喉は一度も枯れたことがないんですよ。いや、嘘かも。覚えてないくらいの幼女時代に何度も潰していたかも。ま知らないんですけどもとにかく、私は覚えている限り一度も喉を枯らしたことがないんですよ!
……うるさい? ああすみません。あなたがどうにも麗しくて美しくて仕方ないもので。いやはや信じられなさそうな目をしていますな、さすが。私このような性格をしていますゆえ、よく嘘を疑われるものです。
しかしです貴方。すごく素敵な黒髪です。素敵なかんばせ、素敵なお身体。ああすみません下品でしたかね。
それから出で立ち、貴方の先程までの歌声も。
え?喉が枯れてしまって声がもう出ないのですか? 確かに先程の歌声はすごく細く儚いものでした……!私の大きな声とは大違い。そこに惹かれたのですがね。ああ失敬私語などいりませんな。
もし良ければ、私のためにまたこの岬で歌ってはくれませんか? 報酬はそうですね、この声が枯れるまで、あなたのために尽くすとお誓い致しましょう。
」
→答えのない問い
声が枯れるまで泣いて
本当に僕の声が枯れたら
ちょっとばっかり、
あなたの笑顔を曇らせることはできますか?
急に別れたいと言われた僕は
そんなことを思わずにいられないのです。
これは未練でしょうか?
それとも怨嗟でしょうか?
テーマ; 声が枯れるまで
「喉の酷使、アルコールによる影響、除湿機不使用による喉の乾燥、風邪による炎症。あと加齢。
まぁまぁ、声が枯れる理由は多いらしいな」
ガンとかポリープとかでも声が枯れることはあるのか。某所在住物書きはネットの情報を確認しながら、そもそもの声枯れの原因を探した。
風邪ネタに飲酒、季節的な保湿物語にカラオケも書けそうではある。問題は「実際に」書けるかだ。
「声枯れねぇ」
そういや、最近そもそも会話する機会自体減った気がする。物書きはここ数年の会話回数を想起する。
「声って、出さねぇと声帯が衰えるらしいな」
そういえば最近、声がたまに、かすれる。
加齢か。あるいは声帯筋肉の老化かもしれない。
「……まめまめまめまめまー……」
声が完全に枯れる前に、ボイトレか何かで筋力を回復したいが、どうだろう。
――――――
最近最近の都内某所、某職場の本店近くに、酒とおでんが絶品の「蕎麦処 蛇上分店」なる店がある。
深夜に手押し屋台での営業もしているという噂だが、さだかではない。酒ならなんでも飲む店主が、周囲の職場に生きる複数名の昼休憩を支えている。
店主は物静かだが、バイトがやんちゃで元気。
らっしゃいあせェ!8番卓天蕎麦2入りましたァ!
声が枯れるまではいかないが、張り上げている。
店主の静かさとバイトの元気のギャップが、名物といえば名物と言えなくもない飲食店であった。
さて。
「イヤガラシーな五夜十嵐の件から、約1ヶ月だ」
そんな蕎麦処、5番卓のテーブルで、大盛りの肉蕎麦などすすっている宇曽野という男。
「地味な嫌がらせを食らったようだが、あれから、どうだ。何事もなく仕事できてるか」
向かい側で真剣に考え事をしている親友、藤森に向かって、届いているんだか聞こえていないんだか分からぬ言葉を、それでも投げている。
「……」
パッ、ぱっ。 鶏ネギの温かいつけ蕎麦の、つけダレに七味を振りながら、藤森はどこか上の空。
勿論視線はタレを向いているのだ。
見えていないに違いない。
辛味好きでもないのに少々「振り過ぎ」ている。
まぁ、そういうのを食いたくなるときも、こいつにだってあるのだろう。宇曽野は見て見ぬフリ。
「一応総務には、五夜十嵐がこれ以上妙な真似をしないよう、言いつけてもらった」
経緯説明しながら肉を食う宇曽野と、
唇を真一文字に結び、時折七味を振る藤森。
「ただ、専務が妙な情報を仕入れたらしくてな」
藤森のつけダレを見なかったことにする宇曽野と、
宇曽野の声がおそらく届いていない藤森。
ぴたり。藤森の七味が止まった。
考えがまとまったらしい。
「うん」
数度、小さく頷いた藤森は、忘我のまま箸入れから箸を取り出し、蕎麦をつけダレにくぐらせて、
ちゅるり、真っ赤なつけダレから蕎麦を引き上げて空気を含みながらすすった。
「……っ!! が、ぐッ!げほ!ゲホッ!!」
喉をつかみ口をおさえて、ひとしきり咳き込んで――いや、むせたのであろう。
藤森はそれが収まってから、コップの水を一気に喉へ流し込み、卓上から2杯目を注いだ。
「無事か?藤森」
「だぶッ、たぶん、ぶじだどおもうが、げほッ!」
「つけダレ、変えてもらうか?」
「めいわぐが、かかる、だいじょうぶ、……っぐ」
「すいません。つけダレのおかわりを」
「うぞの、うその。いらない。だいじょうぶ」
ゲホゲホ、けほけほ。唐辛子が喉の「ひどいところ」にくっついたらしく、藤森は大惨事。
つけダレおかわりの名目で、バイトが情けをかけて宇曽野のオーダーに追加50円で応じている。
声が枯れるまでの量を藤森が投下する前に、気付かせてやった方が良かっただろうか。
宇曽野は赤い赤い方のつけダレから鶏肉とネギを救出しながら、藤森のコップに3杯目の水を注ぐ。
「何を考えていた?」
「ちょっと、きのうの、でぎごとを」
「昨日?」
なにやらまた、ひと騒動あったらしい。
七味を適度に払って、宇曽野は辛口の鶏肉を舌にのせた――なかなかピリピリしていた美味い。
勿論、適度な量まで七味を落とせばの話である。
フリータイムで
声が枯れるまで歌おう
同じ曲を何度も予約
他所からも聞こえる歌声
負けないように
声を張り上げる
梅昆布茶を飲みながら
帰りにのど飴買おうね
✴️187✴️声が枯れるまで
私はこれといった特別な趣味はない、
唯一歌を歌うのが好きだ、上手いわけではないけど、
カラオケは一人でも行く、まさに声が枯れるまで歌い
気持ちをすっきりさせる、今日あたりひさびさにいこうかな!
「声が枯れるまで」
荒れる波間の岩の上、人魚は唄う
海の男を恋に狂わす魔性の人魚
されど、求めるはあの人ただ一人の呼び声
人魚はこいねがう
波に揺られる大船の甲板に立つあの人へ
とどけ、とどけと声が枯れるまで
吹き荒ぶ風は美しき歌声をさらい
あの人の耳へはとどかない
【お題:声が枯れるまで 20241021】
「それでね、薫くんがね、今度一緒に⋯⋯」
「ごめんね、悠斗くん。叶美が泣いてるの。私行かなくちゃ」
「⋯⋯うん、わかったよママ。僕、ひとりで遊んでいるね」
「悠斗くんがいいお兄ちゃんで助かるわ」
本当のママは、僕が2歳の時にお空に行ってしまったんだってパパが言っていた。
でも僕は、本当のママの事はあまり覚えていない。
本当のママの顔は知っている、前にパパが写真をくれたから。
だけど、本当のママの声も手の温かさも僕は覚えていないんだ。
今のママは僕が4歳の時におうちに来た。
パパが新しいママだよって教えてくれた。
本当のママがいなくなってからパパはずっと大変そうだったんだ。
おばあちゃんやお手伝いさんが来てたけど、それでも大変だったと思う。
だから僕はいつもいい子にしてた、そうすればパパが喜んでくれるから。
寂しいとか、パパと遊びたいとか言わないと決めていた。
だって、パパが困った顔をしちゃうから。
パパと今のママとの赤ちゃんができて、パパも今のママも凄く嬉しそうだった。
もちろん僕も嬉しかったよ。
だって妹ができるんだ、お兄ちゃんになるんだからね。
今のママのお腹が大きくなると、お家には今のママのママが来てくれるようになった。
今のママのママは、僕のことはあんまり好きじゃないみたいだった。
ちょっと叩かれたり、ご飯を無しにされたりしたし、幼稚園の送り迎えでは本当のママの悪口を言われたりした。
僕がすごく悲しくなって泣いたりすると、今のママのママはいつも言うんだ。
『泥棒猫の子が』
って。
うーん、泥棒猫って何だろう?僕はパパと本当のママの子供なんだけど?
妹が生まれると、パパも、今のママも、今のママのママもとても嬉しそうだった。
僕もすごく嬉しかったけど、パパがいない時には、僕は妹には触っちゃダメだって言われた。
泥棒菌が移るからって、今のママのママに言われたんだ。
泥棒菌ってなんだろうね?
僕にはよく分からないけど、きっと妹には良くないものなんだと思う。
だから僕は、妹に触らないことにしたんだ。
「⋯⋯あれ?写真がない」
パパから貰った本当のママの写真がなくなった。
なくさないようにって、宝箱の中に入れておいたのに。
本の間とか、おもちゃを置いてある場所とか、鞄の中とか探したけど見つからない。
カーペットの下とかクッションの隙間とか、探しても見つからなくて。
「どうしよう⋯⋯、あ、もしかして⋯⋯」
昨日公園で薫くんと遊んだ時に、落としたのかも。
持って行った記憶はないけれど。
でも、昨日はお手伝いさんがいたから公園に行けたけど、今日はお手伝いさんはお休みの日だから、公園に連れて行ってもらえない。
「ママ⋯⋯」
ママは妹と一緒にお昼寝中だった。
どうしようかなって、少しだけ考えて、僕はひとりで公園に行くことにしたんだ。
大丈夫、公園までの道は覚えているよ。
車が危ないから、道の端っこを歩くんだ。
道路を渡る時は手を挙げて、車が来ないかきちんと確認するんだ。
ほら、ちゃんとひとりで公園に来れたよ。
「ないなぁ」
どこに行っちゃったのかな、本当のママの写真。
おかしいな、大事に大事にしまっておいたはずなのに。
パパに言ったら怒られるかな、せっかくあげたのにって。
ごめんなさい、パパ。
僕、いい子でいようと思って、たくさん頑張ったんだけど、いい子じゃないみたい。
泥棒猫の子だからかな?
ごめんなさい、本当のママ。
僕のせいで本当のママが悪く言われるの。
僕、もっともっと頑張って、いい子でいるね。
だからいつか、僕のことをぎゅってしてくれる?
ねぇ本当のママ、ママはどこにいるの?
ママって大きな声で呼んだら、会いにきてくれる?
それなら、僕、声が枯れるまでママのこと呼ぶよ。
ねぇ、本当のママ、今のママは僕のこと嫌いかな?
だってね、一度もぎゅってしてくれないんだ。
ねぇ、本当のママ、パパは僕のこといらなくなったのかな?
僕ね、もう少ししたらおうちじゃない所に行くんだって。
同じ歳の友達がたくさんいる所だって。
でも、パパや今のママは居ないんだって。
パパは僕のためだよって言うけれど、どうしてパパと一緒じゃダメなんだろう?
ねぇ、本当のママ。
僕、ちょっと⋯⋯ううん、とっても寂しいんだ。
だから早く、ぎゅってしてちょうだい。
━━━━━━━━━
(´-ι_-`) 子供って意外と大人のこと見ているなぁ、と思って。そして我慢しているな、とも思って。因みに写真を盗んだ犯人は、今のママのママです。
学生に 戻る数時間 好きなもの
語ってはしゃぐ 金曜深夜
テーマ 声が枯れるまで
__________________
少年は歌っていた
私は聞いていた
僕は歌った
少女は泣いている
私は聞いた
なぜ歌うのか
僕は言った
歌いたいから
私は不思議と頷いた
静かに聞き続けた
僕は声が枯れるまで歌った
でも愉しかった
私は泣いた
少年の歌を聞けたから
僕は見た
少女の雨を
私は言った
僕は聞いた
歌は温もりを与える夢である
声が枯れるまで夢を見続けるの
「愛」の一文字が
「哀」に成り代わり
愛猫は哀猫と化す
ぼくは一ぴき きみは一ぴき
夜空の星と 同じ数だけ鳴くよ
しゃがれた声になっても鳴くよ
夜空の星と 同じ数を数えて
ぼくはきみは 枯れた声で泣く
ぼくは一ぴき きみは一ぴき
愛猫は哀猫 二ひきの寂しがりや
昔の記憶を突然、思い出して私は泣いた。泣きすぎて声が掠れている。
悲しい、寂しい、虚しい。
誰も理解してくれないもどかしさと後悔しか残らない感情にどこか怒りを覚える。
でも君の笑顔を見ると、安心とどこ芽生える幸せの懐かしい記憶が蘇る。
ふっと気がつくと知らぬ間に君が優しく抱きしめていた。
声を掠らせながら、聞こえているか分からないけれど、ありがとうと私は呟いた。
ライブに行って自由になれたあの日。何度も何度も聴いていたアルバムの曲を、拳をあげて声が枯れそうになるくらい一緒に歌った。あの時の感覚をいつかまたライブで取り戻したい。
声が枯れるまで
声が枯れるまで泣いた
地震で大好きだったあなたを失ってしまったから。
あの時ちゃんと逃げれていれば、今頃はあなたと楽しい日々を送っていたかもしれないと思うと悔しくて仕方なかった。
そして改めて地震の怖さを知った。地震によっていつも通りの日常が一瞬で奪われるって事、当たり前だった事が当たり前じゃなくなるって事。地震であなたを失ってから痛いほど実感してるよ。
でも大丈夫だよ!私は希望を捨てずにあなたの分までしっかり生きるからね!
能登半島地震で犠牲となられた方々へ
心よりご冥福をお祈りいたします
声が枯れるまで君の名を呼ぶ
君は聞こえないふり
近くに来ても距離をとる
自由気ままに過ごす君
たまにくれる芋虫
愛情表現の距離感よ
声が枯れるまで
カラオケとかいかないからそこまで声を酷使することないな。声を出すような仕事でもないし。
今日は通販で買った椅子が届くし銀行にいって金を引き出しにいかないとだしついでにスイカのポイントチャージしに駅にいかなきゃで忙しい。
特に銀行まで金を引き出しにいかないといけないのがかったるい。最近なんかクレカ使えないことがあるから現金も持ってないと不安だ。
こっちのカードに問題があるのか店のカードリーダーに問題があるのか知らないけど最近クレカが使えない時がある。
別にカードが利用停止されてるとかではない。読み取りに問題があるんだろうな。どっちに問題があるのかわからないけどもうクレカは信用できない。
だからペイペイとかのキャッシュレスに移行したいけどペイペイって専用のクレカ作らないとチャージがめんどくさそうなんだよな。使ったことないからイメージだけど。
かといって現金じゃ金を引き出しにいくのがめんどくさい。なのでキャッシュレスにしたいけどペイペイとかモバイルスイカとかなにがいいのかわからない。どうしたもんかね。
僕の思いが君に届くまで、僕の声が枯れて、言葉も枯れ果てて届かなくなってしまうまで、全力で歌う。僕の想いが、痛みが、苦しみが、叫びが届くその時まで。僕は僕の心を歌い続ける。
作者のつぶやき:
お久しぶりです。何とか生活も安定したので毎日はできないかもしれませんが、少しずつ書いていこうかなと思います。一つでも気に入っていただける作品があれば嬉しいです。というわけで、リハビリの一本目。
「祭りが明けて」
今日は一日できるだけ声を出さないようにしようと思いながら、バスから降りる。
幸いなことに、家を出てからここまで会話をする必要はなかった。
学校前のバス停から校舎へ続く並木道は、色付いてきている。
ぼんやりと眺めがら歩いていると、ふいに名を呼ばれ、肩を叩かれた。
文化祭の準備期間、なんだかんだで話す機会が増えたクラスメイトだ。
ぺこり、とお辞儀をして応える。
「いやー、文化祭が終わったら一気に寒くなったな!」
そう言う彼の声は掠れている。
あぁ、私だけじゃなかったんだ。
昨日は、一日中呼び込みしたり、ライブで盛り上がったり、後夜祭で歌ったり……楽しかった。
その時間も、そのあと残った疲れも、この人と共有している。なんだかまだ夢を見ているみたい。
彼は自分の声のことをまったく気にしていないようで、私の隣の位置をキープしながら、ひっきりなしに話しかけてくる。
「なーんか、今日リアクション薄過ぎねぇ?具合悪い?」
覗き込まれ、心臓が飛び出そうになった。
思わず顔を背ける。
「それとも、俺のこと嫌い?」
いや、ちょっと待って。なぜ顔を近づけてくる?
近い!近いって!
「……ちが……こえ、あんま……でなくて……」
蚊の鳴くような声になってしまった。恥ずかしい。
「良かったぁ。せっかく仲良くなれたのに、嫌われたかと思った」
どくどくと、自分の心臓の音がうるさい。
期待しちゃダメ。
この人は、ただ、クラスメイトと仲良くなりたいだけ。
クラスの中心人物で、誰に対しても優しい彼のことを、ずっと密かに見ているだけだった。
彼は私と話したかったと言っていたけど、こうして気軽に話す関係になりたかったのは、私の方だ。
文化祭の準備で話すようになったけど、気がついたらそれ以上のことを望んでしまっていた。
それくらいは自覚している。
「片付け終わったあとの打ち上げ、来るよね?」
こくり。頷くと、彼は嬉しそうに笑った。
────声が枯れるまで
声が枯れるまで
この名を呼んでほしいと願う。
貴方のその声が枯れるまで。
貴方のその綺麗な声が枯れてでも。
わたしが何十年の時を共にしたこの名を、呼んでほしいと願う。
1番最初に忘れられるという、その声を忘れぬように。
わたしの1番大切な音で、わたしの1番大切な言葉を。
掠れたそれが、貴方の本来の声だと錯覚するまで。
ずっと、ずっと。限りなく。