『ジャングルジム』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
青い塗装が剥げた、錆だらけのジャングルジム。
灰を浮かべた低い空に近付いて、
見渡した町は思ったよりも小さくて、
それが、あの頃の僕の世界の全てだった。
「もう潮時か」
子供の頃よく遊んでいた公園からジャングルジムが撤去されたそうだ。
その公園は、通学路とは反対方向にある。
高校生になってからというもの、その公園の前を通ることが減ってしまったから知らなかった。
「遊具を撤去する公園って、増えてるらしいよ。とくにジャングルジム」
「へー。なんでだろ」
「危ないからじゃない?」
「そんなん、今さらじゃね?」
「あんたも何回も落ちて怪我してたしねぇ……」
幼馴染がニヤニヤと笑いながら俺を見ている。
小学生の頃から高校生になった今も、一緒に登下校しているが、彼氏彼女の関係ではない。まだ……
話題にのぼったからと、少し遠回りして懐かしい公園に寄り道。
「あー、本当にないね」
子供の頃、広かったと思っていた公園は、それほどでもなくて、それは俺たちがそれなりに大きくなったから。
でも、体は大きくなっても、それ以外が成長しているかどうかはわからないよな、などと思ったりする。
「一番上に登ったとき、自分最強だと思ったなー」
「そのあと落ちてビービー泣いてたけどね」
「うるせー。忘れろ。そういうお前は、怖がって一番上に登って来なかったじゃねーか」
「だって、危険だってわかってるのに、行こうとは思わないもん」
「……ほんと、変な子供だったよな、お前」
「でも、ずっと友達でいてくれてるあんたも変だよ」
あの頃からずっと一緒にいる俺たちだが、三年後どうなっているかわからない。
この公園の遊具のように、ある日突然俺の隣から居なくなったりとか……そう、彼氏が出来たり……
それだけは勘弁してほしい。
「そろそろ友達は卒業したいんだけどな……」
思わず呟いてしまった一言。
どういう意味かとしつこく聞いてくる。
あぁ、もう潮時か。この気持ちを隠しておくことは出来そうもない。
────ジャングルジム
「気をつけて下さいよ」
昇っていく背中に声をかけた。
「大丈夫だよ」
彼はそう答えてどんどん上へと向かう。スーツのままジャングルジムを昇っていく姿はなんだかちぐはぐな感じがした。
「こんなに低かったかなぁ?」
「貴方が大きくなったんでしょう。身長何センチあると思ってるんです」
見上げてそう言った私に、彼はゆっくり振り返る。
「あははっ、そうか」
月を背にくしゃりと笑うその顔は、いつもより少し幼く見えた。
帰り道、たまたま通りがかった無人の公園。
街灯の灯りに照らされたジャングルジムに、彼は引き寄せられるように歩き出した。
「子供の頃はよく昇って遊んだなぁ」
そう言って彼は錆びたパイプを懐かしそうになぞる。
「妹もよく昇っては頭をぶつけたり落ちて膝を擦りむいたりしてましたね」
「君は?」
「私もまぁ、よく落っこちました」
「だよな。私もだよ」
そんな他愛ない話をしていたら、急に「昇ってみよう」なんて言い出した。呆気に取られた私に彼はジャケットを押し付けて、「よっ」などと言ってパイプに足を掛ける。
私はと言えば、半分呆れ、半分心配しながら昇っていく彼を見上げるだけだった。
「到着」
てっぺんに辿り着いた彼が声を上げる。
「景色はどうですか?」
パイプに寄りかかって尋ねた私に、彼は「あんまり変わらないね」と答えた。
それはそうだろう。身長190センチを超えるいい大人が使うものじゃない。飽きてすぐに降りてくるかと思ったが、彼はてっぺんのパイプに座るとそのまま月を見上げた。
「·····」
煌々と輝く月を背に、ジャングルジムのてっぺんに佇む彼の長身は妙に絵になった。
「君も来ればいいのに」
「遠慮しときます」
「じゃあ、落っこちたら頼むよ」
「いい大人なんだから落ちないようにしなさい」
隣に並ぶのはいつでも出来る。
今はこの、多分レアであろう構図をしっかりと目に焼き付けておきたい。
私の気持ちを知ってか知らずか、彼はしばらく月を見上げたまま動かなかった。
END
「ジャングルジム」
ジャングルジム
「よく遊んでました。テッペンまで行くの誰が一番速いか勝負ね!って。」
「小さい学生の頃はテッペンからの景色が最高でしたねぇ…懐かしいです。今登ってもそんな感嘆しないだろうに(笑)」
「確かに(笑)」
…
……
………
頭のなかのどっかでこんな会話を交わした。
ジャングルジム
ジャングルジムと聞いて思い出すのは、小学校の校庭で高い鬼をした記憶。
別にあの頃に戻りたいとは思わないけど、私の中で綺麗な記憶として残っている。遊ぶのをやめて、ジャングルジムの上に登って、なぜかみんなで自分の一人称について話していた。放課後の空か、昼休みのの空が、きらきらと光っていた気がする。
今の自分よりずっと活発で、陽キャだった。今思うととても羨ましい。痩せてたし。
何年も前の自分は、確かに今の自分と同一人物なのに、何故か違う人間な気がする。
あの時の私は何を考えていたんだろう、じゃなくて、君は何を考えているの、って二人称になってしまう。
小学生なんて、悩みなんか無いと思ってしまうけど、絶対そんな事はなくて、でも、大人になる程、子どもの悩みを思い出せなくなる。それが嫌だったから、最近は日記のような何かを書くように心掛けてるんだけど、小学生の君の悩みはもう思い出せない。いつか君と話したい。夢の中でも良いから。あーあ、こう思うならタイムカプセルとか作っとけば良かった。
ジャングルジム。
一度は夢を持って登った公園の遊具。きっとあの日見た、観ていた景色を、もう一度感じられると、信じていた。
夜の公園は自由だ。子供も居ない、大人もいない。ただ私と、私の気を許した君だけが居て、爪を噛むような退屈な日々を忘れさせてくれる。
音楽を聴き、通りすがる犬に嫌悪か好感を抱き、隣を走るあなたの匂いが気になる。散歩なのかランニングなのか、とりあえず過ぎるこの時間が好きで、目的地を目指す。あの日の思い出の遊具。
ジャングルでも無いし、退屈なジムでもない。そそられる魅力は無いし、吸い寄せられる力も無い。そんなはずの、あのジャングルジムに、夢をみてる自分がいる。
肌が啜り泣く様な悪寒と、不安定な足場がマッチして、歳の残酷さを知る。あぁ、と。怖いのかと。
あの日感じた自由という高揚感が、今では足元の見えない只々不安定な忌み嫌う空虚にしか見えない。
ブランコなら良いのか。滑り台はどうだ。
他人とでも漕げる舟なら、もっと心地良いのか。
知りたくはない。
運動がニガテで
高所恐怖症な
わたし。
ジャングルジムは
なるべく
やりたくなかった。
一応は
登れるけど
下が見れない。
なんだか
吸い込まれて
落ちちゃいそうなんだもん。
そして
降りるのは
もっと
怖い。
大人になって
好きな運動を選んで
ニガテな運動を避けて
過ごせるって
超!
最高だ!
#ジャングルジム
ジャングルジム
夕陽を浴びて、ひとりジャングルジムの天辺に腰掛け夕暮れの空を見つめている男の子に出会った、それが4歳の息子でした。
なぜか、胸が締め付けられるような、懐かしい自分に出会った様な、まさに昨日の夜の逆行だった。ここにもまた、20年ほど時を遡り逆行転生を見た女がいました。
なぜだか女は、その子がそこでそうして空を見上げている気持ちに共鳴出来たのでした、理由は分かりすぎています、自分も同じことをしたから。高い場所で、空を見上げるのは少しでもお母さんに近づきたいから。
誰も迎えに来ないと分かっている公園で
その時、自分には高く大きく見えたジャングルジムの天辺で、自分には広く広く見えた自分のいる場所から見える天。
井の中の蛙はまだ大海を知らず、静かな夕陽に母の面影を描いていた、天は高く澄んでいた。
そうだ、私はこの子の根っ子になりたい、そう思った、けれど逆だった、それから30数年私を大地に立たせ根っ子になったのは、夕焼けの男の子それが息子との縁でした。
早いもので、あれから30数年の時が経ち、今ようやく、息子が自分の子を抱いてジャングルジムで遊ばせる姿を見て、あのジャングルジムの天辺で夕焼け空に、実母の顔を思い描いていたであろう男の子に言えるのです。
「頑張ったね、ありがとう」そしてあの子が描いていたお母さんの顔の人に、「あなたの、目に手になれましたか?選んでくれてありがとう」と言えるのです。
神様、時間をありがとう
令和6年9月23日
心幸
ジャングルジム
小学校の校庭に、登り棒や鉄棒、ブランコや回転遊具…色々なもので遊んでいたけれど、ジャングルジムが、結構好きだった…
迷路の感じ、ちょっとした秘密基地みたいだし、てっぺんから見る景色は、小さな私には、迚も魅力的だった…普段は、見上げる様な上級生も、見下ろす感じが、何となくカッコよく思えた…
あれから何年も経って、久しぶりに母校を訪ねたら、もう沢山あった記憶の遊具は、随時減っていた…校庭にあった鉄棒も新しくなっていたけれど、意外と小さくて、吃驚した…子供の頃は、大きく感じていたのに…
ジャングルジムのあった場所が、何となく刹那く…
小さい頃、高さへの恐怖に勝てず
外側から頂上まで登ることが出来なかった
あの時から自分の限界に
さっさと見切りをつけていたのかもしれない
それなりに大きくなってから挑戦してみた
登れた
というかそんなに高くなくなってしまっていた
時間が経てば難なく越えられる壁だった
でもあの時恐怖に打ち勝ち、乗り越えた壁は
今とは全く別の景色だっただろう
 ̄[ジャングルジム]
ただいまといってきますの
いの一番にランドセル投げ駆ける少年
「ジャングルジム」
人はなぜジャングルジムに登るのか
そこにジャングルジムがあるから
「ジャングルジム」その3
町中が僕の遊び場だったなぁ
コンクリートジャングルの檻
「ジャングルジム」その2
ジャングルジムの中で座るのが心地よかったこと。
ジャングルジムから落ちてケガをしたこと。
ジャングルジムで友達と遊んだこと。
このお題が出るまで忘れていた。
私も随分歳をとったらしい。
幼い頃、私はジャングルジムという遊具が大好きで、公園へ行くと必ずそれで遊んでいました。
ただ単純に、登ったり降りたり。ただそれだけの動作を繰り返して、私は何時間もジャングルジムに費やしていました。
頂点から見える景色が、お気に入りでした。
ジャングルジムの頂点は私を、広い広い世界の王者になったような気分にさせてくれたのです。
大人になってから、ふとそのことを思い出してまた登ってみたのですが、どうやら、幼い頃に思っていたより、この世界は窮屈だったようです。
『ジャングルジム』
【残像】
車で公園の前を通りかかった。
大きくは無いが、子どもたちが不自由なく走り回れるくらいの公園。
子どもたちの声がキャッキャッと響いている。
「……」
ジャングルジムを楽しそうに登っている子を見つけたとき、僕の脳裏にはあの日の記憶が流れていた。
小学3年生の時のことだ。
同級生が死んだ。
ジャングルジムからの落下による死だった。
あの日、僕はその子と一緒に遊んでいた。
まだそこまで親しいわけではなくて、ぎこちないおしゃべりをしたり、遊具で遊んだりしていた。
それで、ジャングルジムで一緒に競争したのだ。
どちらが速く頂上に辿り着けるか。
僕がリードしていた。
「ねー、たっくん速いよー」
下から声が聞こえて、僕はあの子を見下ろした。
ぎこちなく僕を呼ぶあの子の顔。
笑っていた。
負けじと上に登って、手をかけようとしたときだった。
「あっ、」
あの子は手を滑らせて、そのまま落ちた。
しばらく動かなかった。
あのとき汗はよく覚えている。
だらあっとうざったらしい汗が頬を伝った。
頭は真っ白に冷えてしまって、
何も考えられなかった。
子どもたちははしゃぎまわっている。
いいなあ。
僕は、あの時から公園に通うのを辞めた。
トラウマになっててしまったからだ。
どうしても足が公園に向かなかった。
「やったー!私が一位!」
ジャングルジムの頂上にある星を女の子がタッチした。
その時、僕はまた思い出した。
救急車と警察が来た。
僕は事情聴取を受けた。
どんなふうに女の子が落ちたか。
当時の公園には防犯カメラがついていなくて、他に遊んでいる子もいなかった。
完全に僕とあの子しかいなかったので、僕しか事情を知らなかったのだ。
「手を滑らせて、落ちました。」
僕はこう答えた。
嘘はついていない。
嘘は、ついていない。
「(僕がこの子の手を蹴ったら)手を滑らせて、落ちました。」
でも、隠していることはある。
結局、この件は事故死ということになり、公園の遊具は全て撤去されることになった。
でも、これは事故じゃない。
あの子は、事故死ではない。
僕が殺した。
僕はあの子が嫌いたった。
いつもテストで100点を取っていて、自慢してくるのだ。
うざかった。
憎かった。
だから、あの時とっさにあの子の手を蹴った。
そしたら、落ちてそのまま動かなかった。
それだけだ。
僕は、嘘はついていない。
誰も真実は知らない。
僕はあの記憶を反芻していた。
彼女が落ちるときのスローモーション。
そこに映り込む僕の青いスニーカー。
君の残像。
Day1 ジャングルジム
「ジャングルジム、か。」
昔よく夕日が沈むまで遊んだ気がする
大人になったら思い出せなくなるあの日々
赤くなった空
眩しすぎる太陽
カラフルな公園
暑いけど心地いい風
見つからないヒグラシの鳴き声
どこかの家の晩御飯の匂い
そしてジャングルジムのてっぺんで微笑む初恋のあの子
もう、しっかり思い出せないや
【じゃんぐるのじむ】
私は今、ものすごく後悔している。あんな奴を、上司だと思ってしまったことを。
何処かで腹抱えて大笑いしているか、上から目線で含み笑いでこの状況を記録しているかのどっちかしか思い浮かばないもん。
あぁクソ、今回は絶対後者だ。そうに違いない。だってそうじゃなきゃ、こんな妙な場所に来る筈がねぇ。
一度心を落ち着かせる為に、目の前にある建物の看板を見る。
〈ジャングルジム〜皆で育てよう野生の筋肉〜〉
だぁっクッソ何だよ野生の筋肉って、一体何なんだよ!?
てか周りめっちゃ超自然なのになんでビルが一棟だけ建ってんだよ電気とか水とか、どうしてんだよ!?!?!?
……はぁ、落ち着け脳内、落ち着け私。こういう時は、少しだけ記憶を遡って思い出そうじゃないか。
今日は確か、余所行きの私繋がりの人たちとの飲み会があって、それが終わって…そう。酔い醒ましに公園に寄り道したんだ。その公園のジャングルジムの方を見た時、内側に子供の影が見えた気がして、近寄って……中の空間に、入っ、たら……⸺ここにいた。
おーけー、現状の再確認は完了だ。
さて、どうする私。ジャングルの方、は間違いなく迷う。断じて私が方向音痴だからとかでは無い。無いからな!!!
うーん………よし。ビル、というかジムだな、うん。ジム行くかぁ!
「⸺君ィ!入会希望者かい?そうだろ?そうだろう!!」
なんか、すごい…筋肉をお持ちの、男性が出迎えてくれた。すごくイイ感じの人だと思うんだけど、暑いし息苦しいし圧迫感あるし何より……筋肉キャラって、見た目的に苦手なんだよね。筋肉がついてるならせめて、上裸で来ないで。上の服着てほしい、割と切実に。
「はっはぁ…君ィ、イイ身体してるじゃないか。ここへは仕上げか?仕上げに来たんだろう!そうだろう!」
………嫌な予感がして、自分の姿が見える鏡を探す。
あぁ、さいあくだ。すっごい綺麗な逆三角の筋肉さんの癖に、私の顔が乗ってる……やめて性転換してることより、一目見たときのインパクトがあるこっちの方に意識向いたんだけどちょっと誰か助けてほし⸺
*
「…ぃやだ……きんにく…ゃだ……うぅ」
友達の家に来たら、すごいうなされてる奴がソファに転がされてるんだけど…筋肉?
「なぁ。この寝てるの、このままでいいのか?」
「いいよ。寄り道しない約束破って公園で酔いつぶれてたから、悪夢見せてるだけだし」
「コイツがうなされてるのお前の仕業かよ…」
あー…まぁ、いいや。コイツらに過度なツッコミはこっちが疲れるし、放置だ放置。
「…れか………ぅしゅぇ……て」
…次来た時、向こうにしか無い果実でも持って来てやるか。
ジャングル鬼をしよう
と言ったやつを私は、
一生許してはならない
あんなことがあったから
逃げるために急いで、
ジャングルジム
を駆け巡る、その後
落ちるとは知らずに
落ちた、ジャングルジムから、
落ちたと誰かが言った
遊具に付いた赤い液体
へこんだ頭の骨、
これがあってから、
私はジャングルジムを
みるたび足がすくむ、
あんな遊具では遊びたくない
「ジャングルジム」
ジャングルジムは良い。お日様の光を沢山受けて、子どもたちの沢山の声を聞ける。
ねぇ、そうでしょ?
「そうだけど、ジャングルジムって怖くない?落っこちたらどうするのさ?」
『昔はジャングルジムで鬼ごっことかしたよねー。懐かしいなぁ。いっつも椿が鬼だったもんね笑』
あの時の椿の必死に追いかける姿が好きだった。決して早くはないのに、一生懸命なのがどこか可愛らしかった。
「もう、うるさいな。今、馬鹿にしたでしょ!」
あぁ、可愛かったなー。
『私、あの頃の椿が本当に好きだったんだ。』
なんでだろう涙が溢れてくる。
「……。」
『困るよね、こんなこと言っても。でも、たまに帰ってきちゃうんだ。君との思い出に浸りたくてね』
「、、。もう良い加減目を覚ましなよ。」
『昔はさ』
「もう、僕はこの世にいないんだよ?いつまで、何十年もここで思い出を語る気?ねぇ!良い加減目を覚ませよ!!」
必死の思いで伝えるが彼女には届かない。
「ねぇ!!!!」
『わかってるよ。それくらい。』
「気づいて、たの?」
『ねぇ、椿私のこと好き?』
「大好きだよ。愛してる。」
そう言った途端にふっと笑う彼女。月に照らされた横顔はとても綺麗だった。
『そっか、、。私もすぐ逢いに行くよ。』
え?そう言った彼女の表情はわからない。ちょ、ちょっと待ってよ?
『君だけが私の灯りだったんだ』
愛してる。独り言のように呟いた彼女は、暗闇の中に消えていった。
ジャングルジムの中に潜り込む。
大人の手は届かない。
中へ、中へ。
秘密基地から見上げた空は、青く、よく晴れていた。
今はすっかり見かけなくなってしまった
ぐるぐる、回るジャングルジム
調子に乗って外側にしがみついては
遠慮なく回す友達に情けない悲鳴をあげながら
振り落とされまいと必死にしがみついていた
わけもわからぬまま世界が回る、まわる、
あ、と思って手が離れたあの瞬間の恐怖と絶望
なぜか英雄のように砂埃を立てて着地した時の、
安心感ととてつもない興奮
あぁあの頃は楽しかった
あぁあの頃は自由だった
なんて。
あんなに大人になりたかったのに
あんなに大人は自由に見えたのに
思い出すのはあの頃の
大人も、世間も、友達も
みんなみんな自由に見えた
小さなちいさな子どもの世界
大人は入れないちいさな世界
回るジャングルジムに振り落とされた
子どもの世界はもう回ることはない。
【ジャングルジム】