『キャンドル』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
キャンドル
暗い部屋に独り、
蝋燭の火を灯す。
買ったばかりの、
既製のアロマキャンドル。
仄かな光が、私を照らす。
けれど、その光では、
部屋の闇までは埋まらない。
それでも、私はただ独り、
揺れる炎を前に佇む。
小さな炎の揺らぎは、
心を癒してくれる、と、
貴方が教えてくれた。
あの日、貴方がくれた、
手作りのアロマキャンドルの香りは、
貴方に似て、どこか素朴で、
とても優しかった。
孤独な夜、
私を置いて去った貴方を想い、
市販の蝋燭に火を灯す。
けれど、その炎の向こうに、
貴方の姿を探してしまうんだ。
押し付けがましい香りが、
薄暗い部屋を満たす。
貴方のくれたアロマキャンドルは、
もっと静かに、深く、
私に寄り添ってくれたのに。
二人で寄り添い、
炎の温もりを分け合った夜。
言葉少なに語り合った、
あの愛おしい時間。
戻れないと知りながら、
もう一度、あの幸せに触れたくて。
揺れる炎の前で、
私は独り、願いをかけるんだ。
消えるのか
どんなに燃え上がる恋も
やがて黒い煤になっていく
残されたのは 愛なのか 絶望なのか
私の中にいつも笑っている あなただけが悲しい
「キャンドル」
炎が揺れる。
君の心すら溶かして消える。
揺れて揺られて。
どこへ行くのか。
火を灯せ。
赤く深く燃えていけ。
ネッ友からプレゼントをもらった時があった。
元々僕が誕生日にあげたものを、お返しとしてもらったもの。
今でも机の傍に置いて。その子とは仲良し…だと思うから、ずっと喋りたい。
キャンドルとイヤリング。「あなたの心に寄り添う」、「そばにいたい」なんて意味が込められてると言うけれど。
この意味が本当にそうだと思ってくれているなら、どうしようって。
僕なんかに寄り添わなくていい。時間の無駄になってしまう。
他のことに時間を使って欲しい。
寄り添われたくない。もちろん嬉しいんだよ、この意味が本当にそうだったなら。
でも怖いんだ、ずっと。
そばにいてほしいって気持ちはずっとある。独りなんて絶対に嫌、誰か隣にいて欲しいって。
でも嫌なんだ。
嘘だったら。離れられたら。怖くて怖くて仕方がない。
本人に聞き出したくても、本当のことを知るのが怖くなって。嫌になって。
ずっと今まで、嘘ばかりで、離れられることしかなかった。
もしこの子も嘘だらけで、離れられたらどうしようって。
依存してるわけじゃない。でもこの意味が本当なら、僕はただ怖くなる一方で。
この子のことも、信用したいなんて思うのに、さらにできなくなってしまって。
だからずっと逃げて、逃げて、逃げ続けて。
なにも知りたくない。なにかを知るぐらいなら、ずっと分からないままでいたいから。
分からないままでいるのも不安ばかりで嫌になるけれど。
真実を知って、傷ついて。分からないままよりも、なにかを知ることの方が傷は大きいものなんだよ。
明かりを落とした浴室に、灯したキャンドルをそうっと持ち込む。
キャンドルホルダーに埋め込まれた色とりどりの硝子が反射して、きらきらと空間を彩る。
ちゃぷんと全身をお湯に沈めれば、温かさにこわばりがほどけていく。揺らめく柔らかな炎を見つめれば、頭の中が静かになっていく。夢のように煌めくカラフルな光は、私の心にもひとつ、まっさらな光を与えてくれた。
日常に追われる中でも、ほんの数分を惜しんで、ほんの少しの非日常すら愉しむ余裕を無くしたくはないと思う。
温かさは、柔らかさは、心地よいのだと知っている、綺麗なものを綺麗だと思える、そんな心を保っていられるように。
灯した瞬間に香る
そこに君がいて
僕は息を止めた
吸い込めない空気に
涙が溢れる
まだ 飲み込めない
君のいない現実
【キャンドル】
匂いの記憶は
なかなか消えない
「キャンドル」
ふと思いとした
あなたの部屋にあったキャンドルを
絶対自分で買った訳じゃないよね、
誰から貰ったの
部屋中の明かりを消す。空の浴槽に身を沈め、キャンドルに火を灯す。ぼんやりとしたオレンジが静かに揺らめきながら、無機質の白を染めてゆく。
噛み煙草を喫む。
心拍さえもきこえない無音の丑三つ時、心地好い夜に深く深く呑み込まれてゆくのを感じながら、すっと息を吐く。まるで魂が天に昇ってゆくかの如く、白煙が景色を鈍く濁した。
「1/fのゆらぎ」ってご存知ですか?
1/fのゆらぎとは自然の中の癒しのリズムのことを指します。
(そよ風や蛍の光など)
自然の揺らぎは人間の鼓動と同じリズムを刻むことから
生体に快感を与えるリズムとして知られてます。
ですからキャンドルの炎の揺らぎを見ていると脳内にa波が
発生し、リラックスできる。というわけです。
たまにはキャンドルの炎をじっと見ている日があっても
いいかもしれませんね。
→短編・初心の灯り
通勤で通る道に、気になる家がある。通りに面した出窓にキャンドルが置かれていて、夜になると火が灯される。
今日も灯っていた。
よそ様の家なので、あまり覗き込んで見ることはできないが、優しいながらも芯の通った美しい灯りは目を引いた。
「今日もろうそく灯ってた?」
ロッカーで着替え中に同僚に訊かれて、私は頷いた。キャンドルのことは前に話していた。
「毎日、戴帽式気分だね」
「最近は少なくなったんだってね」
「あぁ、ナース帽ね。でも、ナイチンゲール誓詞はあるでしょう?」
「何となく、あってほしいよね」
ウン十年前の看護学校の卒業式を思い出して私は言った。ナイチンゲールの灯火、そして誓い。あの日、私は立派な看護師になろうと胸を高鳴らせていた。
私たちはロッカーを後にした。今日から深夜勤だ。
「さて、じゃあ参りますか!」
立派な看護師になれたかは判らないが、私はずっとこの仕事を続けていて、この仕事に誇りを持っている。
通勤途中の家は、初心を、当時の若いこころざしを私に思い出させてくれる。
テーマ; キャンドル
キャンドル
幼い頃手作り体験があった
飾りを入れて粉を振って匂いをつけて
火は灯さなかったから
キャンドルはキャンドルのままで
それが心地よかった
今日もささやかな光に包まれてひとり反省会。
当たり前のような楽しさも
永遠のような悲しみも
いつか私も貴方も
この光のように消えてしまうんだろう。
その時が来るまで私は私を大事にしたい。
人生は暇つぶし。なるようになるよね。
キャンドルが照らした
自分の指先を見ていた
あたたかなひかりが射して
わたしの指先も
いきいきとあたたかく見えた
擦り切れそうなわたしの心に
やわらかなオレンジ色のこの
ひかりだけがやさしい
今日もオレは町を歩く。
いっつもかわらねぇ町、コネコは今日もいやがるぜ。カワイイからいいけどな。だが、オレはいつもと違うんだ。まさしくヒニチジョーってやつ。何故かって?今日はカノジョと付き合い始めて1周年だからさ。ガサツなオレに寄り添ってくれるアイツのためにもプレゼントを贈ろうとしてるってわけ。いつか買わなきゃって思ってたら当日を迎えちまったよ。ま、夜までに買えればいいのさ。アイツは仕事が忙しくて、やっと今日帰ってくる。それまでに色々準備しねーと。全くなんでも先延ばしにしちまうオレはよくねーな。にしたってアイツに何あげれば喜ぶかな?持ってるスマホで調べながら歩くオレ。
あーだこーだしてたらもう昼だ。なんてこったい。
悩みながら歩いてると、ふと一つの店目に止まったんだ。
なんだこりゃ?見た事ねー文字でなんか書かれてるが、店というのが不思議とわかるし、すげえ気になる。
オレはその店に入ってった。
中には1人のオトコがいる。「いらっしゃい」
ここでは「何売ってんだ?」と聞くと、「特別な品さ」と答える。特別な品?
「あんたにはこれを売ってやろう。」
差し出されたのはキャンドルだった。
不思議な色合いですげぇきれえだった
値段を聞くとオトコは言った。
「あんたの◾︎◾︎」
は?どういうことだ?オレにはオトコの言ってることがよくわかんねえかった。だがそのキャンドルがすげえ欲しかったオレは「よくわかんねえけどそれくれんならそれでいいよ」と答えた。
「まいどあり」
俺は店を出た。何時の間にか夜になっていた。
俺はキャンドルを入れた箱を持ち急いで家に戻る。
事前に準備したのは大変だったが間違いなく彼女は喜んでくれるはずだ。計画的に準備した記念パーティーは幸せな時間を俺達に齎してくれた。
そして非日常だった今日が終わる。そして何一つ変わることのない町、日常へと戻る。
明日の俺は変わらない町を歩む。
俺と 町 '
真っ先に思い出すのは、誕生日でもクリスマスでも停電の夜でもなく、祖父の通夜である。キャンドルというより蝋燭か。
集まっていた大人たちは忙しく、子どもは放ったらかし。幼かった僕は、火というものが珍しかったのだろう、仏壇のロウソクで火遊びをして、一時だが騒ぎになり大人たちに叱られた。
騒ぎや叱られたことよりも、手に持っていた紙にロウソクの火が燃え移り、驚き狼狽したことの方が強く記憶に刻まれている。
#キャンドル
爪に火をともすろくでなし
玲子さんが結婚して以来、お兄ちゃんは徐々に外出する機会が増えていった。見るからに不良の男の子たちとつるみ始め、帰宅時間も遅くなった。
近所に住む年上の玲子さんのことを好きだったお兄ちゃんは、初めて経験する失恋に傷ついて、要するにグレた。
私はそんなお兄ちゃんを見ていられずに、知らんぷりをした。
あのときお兄ちゃんを優しく励ましていれば、今ごろ私達の兄妹の関係は冷え切らないで済んだのに、と今でも後悔している。
「出てくる」
家から出ていこうとするお兄ちゃんを、キッチンから聞こえてくる「またあ?」というお母さんの声が引き止めた。
「昨日もだったじゃない。中学生がこんな時間に出歩くもんじゃないよ」
何か話しかけても聞く耳を持たないお兄ちゃんに、お母さんが深いため息をつく。
私は出ていこうとするお兄ちゃんにわざと水を差すことにした。
「どうせ悪いおともだちのところでしょ」
薄笑いながら言うと、お兄ちゃんがきつい目を返してきた。その反応すら嬉しい私はいろいろと終わっている。
「うっせー、ブス」
「おめーに言われたくない、ブス」
私とおにいちゃんの間に立たされたママの仲裁によって、ぴりぴりとした空気がどこかに散った。
お母さんが私を見て言った。
「花、下品な言葉を使わない。分かった?」
「……はあい」
「優は帰り何時になるの?」
靴紐を結んでいたのを立ちあがり、仕上げにダウンジャケットのファスナーを上げる。そんな仕草がやけに様になってると思う。
「……十時か十一時くらい」
お兄ちゃんは素直に答えると、着ぶくれした身体を、扉の隙間に潜りこませるようにして出ていった。
お兄ちゃんが消えていった玄関の扉を眺めながら、ママが感慨深げにしみじみと言う。
「不良になったように見えても、変なとこ律儀なのよね」
お母さんと並んで玄関扉を眺めていた私は、「ただバカなだけだよ」と色んな意味で遠のいていく背中に対して、声に出してつぶやく。
そんなの嘘。弱虫なんて言ってごめん。行かないで。ここにいて。
たったひとりの妹の心の叫びに気づかないお兄ちゃんは、本当に馬鹿だ。
私は寂しさを紛らわすため、爪に綺麗にネイルが施す。お兄ちゃんの帰りが遅くなるので、すっかり根付いてしまった習慣だった。
色とりどりに光沢を帯びた爪が、暗い部屋の中で発光する。まるで爪に火が灯ったようだった。
私は心を極限まで切り詰めながら、今日も健気に兄の帰りを待つ。
キャンドル
キャンドルってあたたかくてやさしい光で光ってる
あのやさしさで癒されるのはなぜだろう
そして、火を消した後のにおいがすき。
「なあ、たまには非日常感を味わおうぜ」
男がそう言って出してきたのはアロマキャンドルであった。
俺は思わず目を疑う。
「…誰かを襲撃でもするつもりか?」
「馬鹿野郎、誰が投擲武器にするっつったよ。敵に良い香り届けてどうすんだよ。ローソクだけに燃え盛るような落花流水のムードを物理的にもお裾分けってか?やかましいわ」
一人でそう捲し立てながら男はキャンドルをサイドテーブルに置いた。
キャンドルはとても精巧で美しいものであった。
透明な蝋の中に星座や月を模した金細工の装飾が施されており、まるで銀河を覗き込んでいるかのような錯覚に陥る。
こんな繊細で美しいものを所有していたとはーーー
俺はまじまじと、目の前に立つ男を仰ぎ見た。
一言で言えば、デカい。自分もそこそこ背は高い方ではあると思うのだが、この男と並んでいると自分が小さく感じてしまう。
「……同僚から貰ったんだよ。どっかにイルミネーション見てきた土産だとか言ってな……」
男は肩ほどまで伸ばした黒髪を掻き上げながら歯切れ悪く言った。
普段は自信が擬人化したようなタイプのこの男がこうして戸惑っているのを見るのは少し気分が良い。
「………そういう事にしておいてやろう」
俺がそう言うと、男はうるせーよ、と悪態をつきながらも気まずそうに目線を横に逸らした。
「ーーー俺たち大人っつうのは」
男は隣に腰掛けながら口を開く。
「どうしても日々忙しくて自分を労うって事がねぇだろ?特にお前も俺も、最近までかなり忙しく生きてた身だ。…けど」
男は俺の顔を覗きこむ。煤竹色の深い瞳が俺を捉えた。
「まあ、今だったら少しばかり日常にちょっとばかしの贅沢を取り入れても良いんじゃねえかなって思ってな」
男はそう言うとニカっと笑った。
「……らしくない事を」
俺が目を逸らしながらそう言うと男は大声で笑い、キャンドルを手に取る。
「ところで……火ィ付けるのガスコンロで良いよな?」
肝心なところで風情の欠片も無い男である。
「キャンドル」
宿泊学習最終日の夜。
僕たちは真っ暗な体育館に集められた。
そして1人一つずつ、キャンドルが渡された。
「キャンドルナイト」とやらが始まるらしい。
クラスの女子達は、騒ぎながら、
こぞってスマホで写真を撮りはじめる。
でも、隣の席の酒井さんは
ひとり真剣な表情でキャンドルを眺めてた。
普段はうるさくて騒がしいくせに。
蝋燭の火で照らされた
その横顔を見たあの日から、
僕は君のことが気になり出したんだ。
『キャンドル』
淡く小さな炎が
揺れいるのを見ていると
疲弊した気持ちが
少し和らいでいくようだ。
浮き沈みを繰り返しながら
揺れ続けている
わたしの心のような小さな灯火。
悲しい時や嬉しい時。
怖い時や楽しい時。
それらの思い出の中には
いつも小さな灯火が揺れていた。
心が疲弊して、暗闇が
わたしを取り込もうとしても
その灯火があるのなら、きっと大丈夫。
どれだけ小さくても
どれだけ揺れて消えそうになっても
その先にあるものを
きっと照らしてくれるものだって
わたしは信じている。